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米中摩擦の渦中、米国DARPAのelectronicsリメイク・プログラム

米国と中国の間の貿易摩擦の中、タイミングを合わせるかのように、国防総省の研究部門、Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)のElectronics Resurgence Initiative(ERI:電子技術再興構想)に関連するイベント、第1回annual DARPA ERI SummitがSan Franciscoで開催されている。米国electronics業界の一層の進展に向けて向こう5年にわたり$1.5 billionが充てられる予定のERIのプロジェクト活動に対して、IBM, Intelなど主要contractors、そしてArmおよびGlobalfoundriesなど多くのsubcontractorsが発表されている。知的財産侵害に対する制裁関税の経緯の中、米国のリーダーシップを堅持する動きに注目である。

≪摩擦が加速する危機意識≫

DARPAのERIの意味合い、概要が次の通りあらわされている。

◇DARPAがチップテクノロジーの再発明(の開始)に向けて7500万ドルを拠出 (7月26日付け jp.techcrunch.com)
→国防総省の研究部門であるDARPAは、その”Electronics Resurgence Initiative”(ERI:電子技術再興構想)に関連するイベントを開催している旨。ERIとは産業界に芽吹いている、強力だが実証されていない新しいアイデアに資金を与えることで、既存のチップテクノロジーを大きく飛躍させようという計画。このさき何年かをかけて、15億ドルが提供される予定だが、このうち約7500万ドルが今日、いくつかの新しいパートナーたちに対して割り当てられた旨。ERIは昨年比較的広範囲にむけて発表され、それ以降全国の大学や研究所からの提案が募集されて、その結果いくつかの提案が資金提供の対象として選ばれた旨。

今回のイベントの目的、そして結果概要が、次の通り示されている。
Moore's Lawそして中国に対する米国の結束の意義を受け止めている。

◇Moore's Law, China vs. Team USA-U.S. military lacks leading-edge chips (7月27日付け EE Times)
→米国国防総省が、広範囲のelectronics活動に出資する$2.2 billionプログラムを推進しており、該ニュースは、講演者たちがMoore's Lawは鈍化してきているが、半導体の進展はCMOS scaling代替のお蔭で続いていくと一致したSAN FRANCISCOでのイベントにて出ている旨。該イベントは、5年にわたって$1.5 billion規模のリサーチプログラム一式、Electronics Resurgence Initiative(ERI)に向けたお披露目パーティーの旨。目指すところは、2つの共通の敵、Moore's Lawの低下および中国の台頭への対抗である旨。

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)の以下のニュース記事から、第1回annual DARPA ERI Summit開催を知ったところである。

◇SIA Applauds New DoD Research Partnerships to Advance Transformative Semiconductor Technologies -DARPA selects research teams from industry, academia to receive funding through its Electronics Resurgence Initiative to bolster next-generation semiconductor design, materials, architectures (7月24日付け SIA/NEW)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、長期半導体リサーチ強化を狙うDefense DepartmentのDefense Advanced Research Projects Agency(DARPA)と業界およびacademiaからのリサーチチームの間の新たに発表された連携を歓迎、該リサーチ連携は、DARPAのElectronics Resurgence Initiative(ERI)内の新プログラムの一環であり、半導体回路設計、材料およびシステムアーキテクチャーにおける進展を目指す旨。この選ばれたリサーチチームは、microelectronics communityメンバー数100人を集めた3日間のイベント、第1回annual DARPA ERI SummitにてSan Franciscoで昨日披露の旨。
ERIは、3つの主要リサーチthrust領域、設計、材料&統合、およびアーキテクチャーに分けられ、各領域に2つの新しいリサーチプログラムが次の通り:
 設計       …Intelligent Design of Electronic Assets(IDEA)プログラム
          …Posh Open Source Hardware(POSH)プログラム
 材料&統合     …Three-Dimensional Monolithic System-on-a-Chip(3DSoC)プログラム
          …Foundations Required for Novel Compute(FRANC)プログラム
 アーキテクチャー …Software Defined Hardware(SDH)プログラム
          …Domain-specific System on Chip(DSSoC)プログラム

◇SIA applauds new DoD research partnerships to advance transformative semiconductor technologies (7月25日付け ELECTROIQ)

このイベントにおいて、リサーチプロジェクトを推進する主要contractorsそしてsubcontractorsが以下の通り発表されている。

◇DARPA Unveils Research Partners-Four projects in post-Moore's-law effort detailed-DARPA picks participants in research initiative (7月24日付け EE Times)
→1.半導体大手のIBM, Intel, Nvidia, およびQualcommそしてあまり知られていないファウンドリー、Skywaterなどが、米国・Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)主催の4つのリサーチプロジェクトにおける主要contractorsとして発表された旨。ArmおよびGlobalfoundriesなど他の多くが、SAN FRANCISCOイベントで正式に打ち上げられたプログラムにおけるsubcontractorsとして活動する旨。この4つのプロジェクトは、米国electronics業界前進に向けて向こう5年にわたり$1.5 billionを受ける予定のDARPAのElectronics Resurgence Initiative(ERI)の一環の旨。それらは米国・Department of Defenseのニーズに役立ち、および半導体の高速化、安価化、小型化に向けてMoore's lawを駆使するreturnsが減っているとき半導体業界を高めていく、その両方を狙っている旨。
 2.米国国防総省の機関、Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)のElectronics Resurgence Initiative(ERI)のもの4つのプロジェクトでのprime contractorsとして活動するよう、DARPAが半導体関連8社を選択、IBM, Intel, QualcommおよびNvidiaなどが、post-Moore's Law時代に向けた半導体技術開発についてDARPAと協働していく旨。

◇DARPA Picks Its First Set of Winners in Electronics Resurgence Initiative-Teams announced in design, architecture, and materials and integration programs under the $1.5 billion effort to remake U.S. electronics (7月24日付け IEEE Spectrum)

プロジェクトの1つに向けたApplied Materialsのチームである。

◇Applied Materials team selected by DARPA to develop advanced technology for artificial intelligence (7月24日付け ELECTROIQ)
→Applied Materialsのチームは、ERI Foundations Required for Novel Compute(FRANC)プログラムの傘下にあって、von Neumann computeアーキテクチャーの先をいく革新を探求する旨。

今回のイベントにて、Intelはchipletsからレゴのように組み立て構成してSoCs設計を行う標準化を先導している。

◇Intel Drives New Bus for Future Chiplets-Aims to simplify future systems with an "ethernet for chiplets" (7月25日付け IEEE Spectrum)
→DarpaのElectronics Resurgence Initiative Summitにて、chipletsがやってくると講演者が次々口を揃えている旨。今日行われているように1個のシリコンpieceとして複雑なsystems-on-chip(SoC)を構築するのではなく、将来のシステムはhigh-bandwidth interconnectsによりシリコンのより大きなslice上にいっしょに結びつけられた小さく安く独立に設計されたコンポーネント半導体から成る旨。Intelは、同社Advanced Interface Bus(AIB)をchipletsをいっしょにつなぐようroyalty freeで供給する旨。

◇Intel Aims to Drive Chiplet Standard-EMIB PHY spec to be released within weeks (7月26日付け EE Times)
→Intelが数週で小さいが戦略的な同社固有実装技術のpieceをリリース、chipletsからLego-様のSoCs設計を可能にする今後の標準の一部になる可能性の旨。同社は、自らのAdvanced Interface Bus(AIB)向け仕様について最後の仕上げを行っており、AIBは、同社の高密度、低コストのEmbedded Multi-Die Interconnect Bridge(EMIB)におけるdie-to-die connectionに向けたphysical-layer blockである旨。同社は該仕様を政府リサーチプログラムでいくつかのパートナーにすでにライセンス供与しており、コンソーシアムを通して興味ある誰でもAIBをroyalty-freeで使えるようにする狙いの旨。

このイベントに先立って、DARPAによる人工知能(AI)への出資が次のようにあらわされている。

◇AI Gets Boost from Uncle Sam-DARPA to increase spending ~$100M/year (7月25日付け EE Times)
→この頃のハイテクにおける大方の人々のように、米国人はAIへの投資を増やしており、Defense Advanced Projects Research Agency(DARPA)は金曜20日、machine learningへの現状の割り当てに年に$100 million加える新プログラムを発表の旨。該AI Explorationプログラムは、追求する価値のあるアイデアを生じさせるためにfeasibility研究一式に約$10-20 millionを当初充てる旨。それらが、次第にDARPAのいろいろな形でのAIへの出資全体を年間$400 millionほどに高めていくプロジェクト大型化を生み出す期待の旨。

該分野に関連する記事内容が目についており、まず、AIそして中国が席巻する第二四半期における半導体業界への出資状況のデータである。

◇AI, China Dominate Semiconductor Funding-Funding flows to AI chip developers, particularly in China (7月24日付け EE Times)
→新たにリリースされたGSA Market Watchレポート発。第二四半期における半導体業界への出資20件の総額約$1.7 billionについて、人工知能(AI)および中国が席巻、この金額は、前四半期比6倍、前年同期比13倍以上。例として、SenseTime(北京)は第二四半期に$1.2 billion以上調達の旨。

米中摩擦において半導体が中核に躍り出る意味が、SIAより説明されている。

◇SIGHTS ON SILICON: Why the semiconductor is suddenly at the heart of US-China tech tensions (7月24日付け Quartz)
→米国と中国の間の貿易戦争は、アルミニウムから火炎放射器まで広範囲の製品を作る各社を混乱させている旨。しかし、この乱闘のなかで1つの製品がまたまた表面化、それはいつも使用を決して見ないもの、半導体の旨。「半導体は、間違いなく今日まで最も偉大な業績。現代あるいはelectronic、車を運転あるいはインターネットを見る、あるいはスーパーコンピュータを用いる、すべてのものに半導体は依然中心的であり、すべてのものが究極的に半導体およびその多くに基づいている。」と、Semiconductor Industry Association(SIA)(Washington, DC.)のグローバル政策、vice president、Jimmy Goodrich氏。

大学関連の研究コンソーシアム、米国SRCからも、追加の出資が発表され、米国のリーダーシップの一環を担う印象である。

◇Semiconductor Research Corporation releases $26M in new research funds (7月26日付け ELECTROIQ)
→米国技術リサーチコンソーシアム、Semiconductor Research Corporation(SRC)(North Carolina)が、New Science Team(NST) Joint University Microelectronics Program(JUMP)に向けた$26 millionの追加出資を発表、JUMPは14の独特な米国大学に及ぶ24の追加リサーチプロジェクトに資金供給する旨。

このような米国の動きに対して、我が国の取り組みの後れを指摘する記事内容が目立っている。

◇AIやビックデータ、「米中に後れをとっている」経済界 (7月23日付け 朝日新聞DIGITAL)
→AI(人工知能)の開発やビッグデータの活用で後れをとっているのでは――。長野県軽井沢町で19、20の両日開かれた経団連の夏季フォーラムでは、デジタル社会への対応で米国や中国に先行されているとの焦燥感が強くにじんだ旨。

◇「日本の技術力低下」43%、本社調査、10年後、中印と逆転も (7月26日付け 日経)
→日本経済新聞社が実施した2018年度の「研究開発活動に関する調査」では、回答企業の43.9%が日本の科学技術力が低下していると指摘、上がったとの見方は289社中10社にとどまった旨。中国やインドなど新興国の台頭が理由で、10年後の研究開発力ではインドや中国が日本を抜くと予想する旨。文部科学省科学技術・学術政策研究所によると、研究の質の高い研究論文数は2013〜2015年平均で日本は世界9位、10年前の4位から急落した旨。10年前には6位の中国が米に次ぐ2位に上昇した旨。

産官学の一層の連携、推進が問われている。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦の波紋】

アルゼンチンで開催のG20財務相・中央銀行総裁会議にて、世界景気への下振れ懸念があらわされている。

◇G20、貿易摩擦に懸念、声明で「成長下振れリスク」 (7月23日付け 日経 電子版)
→ブエノスアイレスで開催の日米欧と新興国の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は「貿易の緊張が高まって、世界景気に下振れリスクが増している」と、米国発の貿易戦争を懸念した共同声明をまとめて22日午後(日本時間23日未明)に閉幕した旨。「保護主義と戦う」とした2017年のG20首脳会議(ハンブルク・サミット)の合意を踏襲するとも盛り込んだ旨。

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)からは、関税賦課が半導体での米国のリーダーシップを弱めるとして、対象製品の一部除外を求めている。

◇Chip Industry Fights Next Round of China Tariffs (7月24日付け EE Times)
→Semiconductor Industry Association(SIA)は、Trump政権に対し、25%関税に宛てた$16 billion相当の中国輸入品リストから39の製品カテゴリーを除くよう求めている旨。該関税提案について一般の意見を求める該政権の懇請の一環として月曜23日に提出された記入コメントでSIAは、現在関税に向けて予定されている半導体および半導体関連製品への関税賦課が、半導体における米国のリーダーシップを徐々に弱め、国際的競合に関して米国の半導体メーカーの立場を不利にし、そして中国における米国メーカーの市場シェアを脅かすものと論じている旨。

お膝元の米国大手企業の業績にも摩擦による利益の圧迫など打撃の懸念が広がってきている。

◇貿易戦争、米企業に打撃、GMやGEの利益圧迫 (7月27日付け 日経 電子版)
→米国が仕掛けた貿易戦争が、目に見える形で米企業の業績に悪影響を及ぼし始めた旨。自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)や家電大手のワールプールが相次ぎ業績予想を下方修正。金融界からも企業の投資意欲や個人消費の萎縮を懸念する声があがる旨。米経済は足元で好調を持続しているが、企業業績への打撃が広がれば、投資や消費の減退を通じ実体経済に影を落とすことになる旨。

米国経済の直近の足元は「一人勝ち」の好調さとなっているが、貿易摩擦の今後のインパクトでいつまで続くか、危うさが指摘されている。

◇米成長率4.1%に加速、4〜6月期、減税で内需好調 (7月27日付け 日経 電子版)
→米商務省が27日発表した4〜6月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、前期比年率換算で4.1%増。1〜3月期の2.2%から大幅に加速し、約4年ぶりの高い成長率となった旨。大型減税が内需を後押しし、米経済は主要国で「一人勝ち」に近い状態。ただ、背後には家計の過剰消費や貿易戦争前の駆け込み需要があり、持続力には危うさが残る旨。

【QualcommのNXP買収断念】

ここでも米中摩擦の波紋、Qualcomm社によるNXP Semiconductors NVの$44 billionと最大規模の買収案件が、最後の関門、中国当局の承認をクリアするかどうか、気をもたせるところとなっていた。

◇U.S.-China fight could cost Qualcomm its NXP deal (7月23日付け Market Watch)
→Qualcomm社が今週、同社によるNXP Semiconductors NVの$44 billion買収取引が、米中貿易戦争がエスカレートする中、最大の被害者になるかどうかの境目の運びの旨。

◇Qualcomm-NXP Deal Faces Moment of Truth With China 'Yes' or 'No'-Qualcomm-NXP deal nears verdict from Chinese government (7月23日付け BloombergQuint (India))
→Qualcommが、NXP Semiconductorsの$44 billion買収案について中国政府からの最終的なお達しを待っており、該買収取引の最後の段階の旨。
Qualcommは水曜25日までに承認を得なければならないが、そういかなければ該買収の延長は求めない旨。

しかしながら、結局7月25日の期限までに中国の承認は得られず、Qualcommは買収断念を余儀なくされて、以下業界各紙の取り上げである。

◇Qualcomm Plans to Abandon NXP Deal Amid U.S.-China Tensions-Company failed to get approval of Chinese regulators to buy Dutch chip maker, barring a last-minute reversal (7月25日付け THE WALL STREET JOURNAL)
→Qualcomm社が、オランダの半導体メーカー、NXP Semiconductorsの$44 billion買収について中国での承認が得られず、止めにする計画、激しさを増す米中貿易摩擦の最も目立つ犠牲の1つにし、該米国半導体大手の戦略の中核部を頓挫させている旨。

◇Qualcomm ends $44 billion NXP bid after failing to win China approval (7月25日付け Reuters)

◇China Kills Qualcomm-NXP Deal (7月26日付け EE Times)

◇China kills Qualcomm's $44 billion deal for NXP -Qualcomm gives up on $44B takeover of NXP (7月26日付け CNNMoney)

◇Qualcomm Scraps NXP Deal Amid U.S.-China Trade Tensions (7月26日付け BloombergQuint (India))

◇Qualcomm-NXP Deal Falls Through (7月26日付け EE Times Asia)

◇米クアルコム、蘭NXP買収「難しい」、米中摩擦で (7月26日付け 日経 電子版)
→米クアルコムは25日、オランダの車載半導体大手、NXPセミコンダクターズの買収について、中国の独占禁止法当局による承認が「地政学的に難しい環境にある」との認識を示した旨。両社は米東部時間の同日中に各国で承認が得られることを買収成立の条件としていたが、米中貿易摩擦のあおりで手続きが滞り、断念に追い込まれる可能性が高まった旨。

◇米クアルコム、蘭企業買収「時間切れ」、米中対立が戦略に影響 (7月26日付け 日経 電子版 16:36)
→米東部時間の26日午前0時(日本時間26日午後1時)、半導体業界の勢力図を一変させるはずだったM&A(合併・買収)が、時間切れを迎えた旨。米半導体のクアルコムによるオランダのNXPセミコンダクターズの買収は、両社が期限としていた25日中に中国当局からの承認の発表は無く、車載向け分野への進出は見直しを迫られる旨。

◇米クアルコム、蘭社の買収断念 (7月27日付け 日経)
→米半導体大手、クアルコムは26日、オランダの車載半導体大手、NXPセミコンダクターズに対する5兆円規模の買収を断念したと発表、期限の米東部時間25日午後11時59分(日本時間26日午後0時59分)までに中国の独占禁止法当局から承認を得られなかったため。米中対立の余波で経営戦略の再考を迫られる旨。

◇中国競争法当局、国際M&Aに影、クアルコムは断念 (7月27日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、クアルコムがオランダの車載半導体大手の買収を断念し、中国の競争法(日本の独占禁止法)当局の対応がグローバル企業の経営戦略を揺さぶる事態が改めて鮮明になった旨。進出先が多岐にわたる企業のM&A(合併・買収)は複数の国で競争法の承認が必要だが、中国での審査が最後の関門として立ちはだかることが通例化。専門家からは「中国は産業政策的な影響が強い」という指摘が多い旨。

中国の競争法当局としては、Qualcommからの対応は十分ではなかったとのこと。今後引き続きコンタクトを期待としている。

◇China says it is still open to talks on scrapped Qualcomm-NXP takeover (7月27日付け Reuters)
→中国・State Administration for Market Regulation(SAMR)が金曜27日のステートメントにて、中国の公正取引上の懸念に向けて出された提案は不十分であったが、Qualcommと引き続きの連絡を期待の旨。

【中国vs.韓国の最前線】

韓国・サムスン電子と中国・Xiaomiが、インドのスマートフォン市場で抜きつ抜かれつのシェア争いの現状。Xiaomiは、ぐっと低価格でサムスンのお膝元を攻略しようとしている。

◇Xiaomi expansion into South Korea heaping pressure on Samsung (7月24日付け DIGITIMES)
→中国・Xiaomiが、韓国現地のテレコムcarriers、SK TelecomおよびKorea Telecomと協力、flagshipのHongmi Note 5など最新スマートフォンをKRW200,000-300,000($190-285)の価格でソウルにて打ち上げの旨。$300を下回る競争力のあるpricingで、韓国ベンダーの2017年スマートフォンASP、$500超をはるかに下回って、韓国市場での注目を素早く得ている旨。Xiaomiはすでにインドのスマートフォン市場でSamsung Electronicsを抜いており、こんどは韓国大手への地元での挑戦を図っている旨。

◇韓経:サムスンの逆転…シャオミとの激戦でインドスマホ市場1位奪還 (7月26日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版)
→サムスン電子とシャオミがインドスマートフォン市場で激戦を繰り広げている旨。シャオミが計画より2年ほど早い昨年10-12月期に市場シェアを25%に伸ばし、サムスン電子(23%)を抜いてインドスマートフォン市場1位になった旨。サムスン電子は今年4-6月期、シェアを29%に拡大、再びシャオミを1%上回った旨。

半導体業界の自立化を図っている中国が、先行する韓国のサムスン電子とSKハイニックスの製造関連会社についてまるごとM&Aの食指を動かしている状況があらわされている。

◇韓経:韓国半導体をまるごと狙う中国…「サムスン・SK協力会社を無条件に買収する」 (7月24日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版)
→中国が韓国の半導体装備会社に対するM&A(企業の合併・買収)に動き出した旨。単に数人の技術者を引き抜くだけでは「半導体崛起」に力不足という判断のもと、企業の設備と人材をまるごと買い取ろうとする動きという分析が出ている旨。韓国半導体産業のノウハウが蓄積された装備会社などが中国に売却される場合、サムスン電子とSKハイニックスの工程技術も同時に渡ってしまう可能性が高いという指摘の旨。半導体業界によると、今年に入って多くの半導体装備会社が中国企業や地方政府から会社および株式売却、中国合弁工場の設立などの話を受けたことが確認された旨。

【東芝メモリ関連】

トップのサムスン電子に対抗、東芝メモリが、96層、4データビット/セルの3D NANDフラッシュメモリの開発を発表、世界最大の容量になるとしている。

◇Toshiba Continues To Push Capacity Boundaries With Newly Developed 96-Layer Memory Technology-Toshiba develops 3D NAND with 96 layers, 4 bits per cell (7月21日付け Forbes)
→Toshiba Memory Americaが、同社BiCS(Bit Cost Scalable)フラッシュメモリ技術を用いる96層、4データビット/セルの3D NANDフラッシュメモリprototypeの開発を発表の旨。該prototypeは、1個の半導体で最大1.33 terabitsを蓄積、東芝は、該メモリデバイスが9月にサンプル配布開始、量産が2019年予定としている旨。

◇Toshiba Memory Corporation develops 96-layer BiCS FLASH with QLC technology (7月23日付け ELECTROIQ)

◇NAND容量2.5倍、東芝メモリ、データセンター向け (7月23日付け 日経産業)
→東芝メモリが20日、パソコンやスマートフォンのデータを保存するNAND型フラッシュメモリの大容量品を開発したと発表、チップあたりの記憶容量は、1.33テラビットと、従来品の2.5倍以上に高めた旨。新設が相次ぐデータセンターなどの需要に応え、韓国サムスン電子に対抗する旨。東芝メモリによるとチップあたりの記憶容量は世界最大になる旨。9月上旬にサンプル品を出荷、2019年の量産開始を予定、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)と開発した旨。

一方、対応する製造拠点の拡充に向けて、岩手県北上市で3Dフラッシュメモリの生産に集中する世界最先端の製造棟の起工式を行っている。

◇Toshiba Memory Corporation starts construction of the first fabrication facility in Kitakami City, Iwate Prefecture (7月24日付け ELECTROIQ)
→東芝メモリが、岩手県北上市で最初の半導体製造拠点、K1の起工式を行い、2019年秋に完成すると、3Dフラッシュメモリの生産に集中する世界最先端製造operationsの1つになる旨。同社固有の3Dフラッシュメモリ、BiCS FLASH(TM)を進めて現在主導している旨。

◇東芝メモリ、WDと仕切り直し、岩手の新工場着工 (7月24日付け 日経 電子版)
→6月1日付で東芝の連結対象から外れた東芝メモリは24日、2020年の稼働をめざす北上工場(岩手県北上市)で製造棟の起工式を開いた旨。1兆円にも達する巨額投資の成否は、再編を巡る混乱で開いた韓国サムスン電子との差を埋められるかを左右する旨。長く対立が続いた共同事業のパートナー、米ウエスタンデジタル(WD)との関係の再構築が欠かせない旨。

【化合物半導体関連の動き】

Appleが採り入れようとしている3D sensing並びにLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)の応用から、化合物半導体のGaAsウェーハ市場が活性化してきている。

◇Apple is changing GaAs' future (7月23日付け ELECTROIQ)
→モバイルhandset業界の飽和からくる静かな期間を経て、GaAsウェーハ市場が目覚めている旨。Appleが行った技術的選択が、GaAsソリューションに向けた現実的、広大な熱意を生み出しており、携帯電話での3D sensing並びにLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)の応用がGaAs基板サプライヤに新たな息吹を与えている旨。Yole Developpementは、新しい技術&市場レポート、“GaAs Wafer & Epiwafer Market: RF, Photonics, LED and PV applications”のもと、2017年から2023年にかけて15%のCAGR(数量)、特にphotonics応用では37%にもと、発表している旨。

中国でも化合物半導体の展開が次の通りみられている。

◇Sanan Optoelectronics extends to III-V compound semiconductors-Sanan adds III-V compound semiconductors to product portfolio (7月23日付け DIGITIMES)
→中国のLED epitaxialウェーハおよび半導体メーカー、Sanan Optoelectronicsには今や、gallium arsenide(GaAs), gallium nitride(GaN), indium phosphide(InP)などIII-V化合物半導体epitaxialウェーハおよび半導体があり、同社子会社、Xiamen Sanan Integrated Circuitが、5G cellular通信, ビッグデータおよびinternet of things(IoT)応用に向けて今年後半および2019年に化合物半導体の出荷を増やす旨。中国・National Integrated Circuit Industry Investment Fundが、R&DおよびIII-V化合物半導体生産のサポートに向けて、Sananにおける11.30% stakeを買収している旨。


≪グローバル雑学王−525≫

米国と中国、そしてトランプ大統領と習近平国家主席、それぞれの摩擦の背景にある事情、実態に、

『「米中関係」が決める5年後の日本経済新聞・ニュースが報じない貿易摩擦の背景とリスクシナリオ』
 (渡邉 哲也 著:PHPビジネス新書 393) …2018年5月11日 第1版第1刷発行

より迫っていく後半である。この11月に絶対に負けられない中間選挙を控えて中国に対して強硬な政権固めを重ねてきて、現在は欧州とも貿易交渉を行い、米国第一主義の徹底を図っているトランプ大統領に対して、他にはない政治(中国共産党)と経済が表裏一体という独特の中国で、いろいろ距離感の操縦が見られる習近平国家主席の舵取りがあらわされている。中国側にできる報復は限られてくるという見方もあらわれているが、今後の推移の中での検証である。


第1章 米中貿易摩擦の真相を読み解く ―――後半

Q24:わずか2%でなぜ輸入制限の対象になるのか?
・2017年のアメリカの鉄鋼製品の国・地域別輸入先
 →1位はカナダ、全体の約16%
 →中国はわずか2%
・中国企業が反ダンピング関税を避けようと、他国を経由して製品を輸出していることも
 →根本にある問題は、中国による鉄鋼の過剰生産
・中国ほど政治(中国共産党)と経済が表裏一体で動く国はない
 →過剰生産された鉄鋼が向かう先は、結局のところ海外しかない
 →供給過剰の鉄鋼を国外に押しつけるために、AIIBや一帯一路といった政策を進めているという事情も

Q25:中国による技術盗用問題は今後どうなる?
・トランプ大統領のやり方、どこかの段階で再びCOCOM規制(Coordinating Committee for Multilateral Export Controls:対共産圏輸出統制委員会)のような技術や産品に対する規制を強化する可能性
 →1987年、東芝の子会社、東芝機械が旧ソ連へ工作機械やソフトウェアなどを規制に反して輸出していた事例
・21世紀のいま、中国が知的財産権侵害という形でアメリカや日本の最新技術を盗用するという事態
 →21世紀型COCOMのシステムの構築は検討に値
・アメリカは技術盗用に関しては、かなり強気な姿勢
 →ロシアや中国に向けた最先端のコンピュータ(CPU)の輸出の禁止が始まっている
 →中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ)の通信機器、CPU、およびアンテナ、交換器の使用を禁じる方向
  →2社が中国政府と密接な関係、アメリカのネットワークで大きな影響力を有することの危険性
・冷戦時代に回帰しつつある世界、世界を舞台にした規制合戦が始まっている

■トランプは何を考えているのか

Q26:輸入制限措置は今秋の中間選挙を意識したものか?
・トランプ大統領としても、絶対に負けられない2018年11月6日に控える中間選挙
 →3月から9月にかけて各州で上下両院候補者を選ぶ予備選実施
 →トランプ大統領による保護主義的な動きは中間選挙まで続く
・中間選挙に勝つということは共和党議員が増えることを意味
 →いま以上に対中圧力は増すと考えるのが妥当

Q27:政権の「顔ぶれ」からトランプの対中姿勢がわかるか?
・トランプ大統領の中国に対する考え方は、まず、ホワイトハウス人事の差配で推し量れる
 →2018年3月15日、ツイッターでNEC(国家経済会議)の次期委員長に保守派の経済評論家、ラリー・クドロー(Larry Kudlow)氏を指名
  …対中強硬派
 →国家通商会議(NTC:現在は通商製造業政策局)元委員長、ピーター・ナヴァロ(Peter Navarro)氏の大統領補佐官(通商政策担当)就任
  …こちらも対中強硬派
 →国家安全保障問題担当の大統領補佐官にジョン・ボルトン(John Robert Bolton)氏を起用
  …きっての保守派、北朝鮮の体制転換やイラン核合意の破棄を主張する強硬派
 →解任されたレックス・ティラーソン(Rex Wayne Tillerson)氏の後任の国務長官、マイク・ポンペオ(Michael Richard "Mike" Pompeo)氏
  …トランプ大統領のお気に入り、中央情報局(CIA)長官から就任
・こうした一連の人事、中国に対していっそう強硬な姿勢で臨む考えなのは間違いない
 →政権発足1年超が経過、ようやく自分の望むタカ派の布陣が完成

Q28:結局、トランプはいい奴か? 悪い奴か?
・あまりきれいごとをいわない、ごまかさないタイプ、トランプ大統領
 →英語が非常にわかりやすく、小学生でもわかる語彙の範囲で演説
・いまや世界を駆け巡るニュースのうち「これは面白い!」と思えるのは、ほとんどがツイッター発
 →直接取材できないメディアからしたら、すごくやりづらいはず
・明快なメッセージと、方向性をしっかり定めている人事

■習近平の逆襲

Q29:輸入制限に対する中国のさらなる報復は?
・アメリカの鉄鋼、アルミニウムに輸入制限に対し、中国国商務省は3月23日、米国からの輸入品対象に最高25%の関税を上乗せする制裁を発動
 →一方、通商法301条による制裁関税に対して、中国はただちに報復措置の発動を示唆
・中国もアメリカに対して黙ってはいないというわけ、しかし、そう簡単にはいかない
 →米国債を購入減額するにしても米国債の利回りが上昇する可能性
  …中国にとって諸刃の剣

Q30:中国は貿易戦争を望んでいるか?
・中国はアメリカからの輸入を制限できるものがあるかと問われれば、じつはそれほど選択肢がない
 →アメリカから輸入している大豆を補える「アテ」がない
・限られている中国側にできる報復
 →全人代閉幕後の3月2日、「理性的であり続け、感情的にならず、貿易戦争を避けるべき」と、李克強首相

Q31:紫禁城におけるトランプ歓待の意図は?
・2017年11月、トランプ大統領の訪中
 →習主席は紫禁城と国立故宮博物院を貸切にするなど、過去に例がないほどの歓待
 →そのうえで、総額約2500億ドル(約28兆円)の商談成立と発表
  →しかし、内訳、詳細な使途はほとんど明らかにされていない
・異例の歓待について2つの見方
 →一つ:過去にない歓待で米国重視の姿勢を示した
 →もう一つ:習近平国家主席のアピールの場であった
・紫禁城で振る舞われた食事は、中国の家庭料理
 →アメリカの大統領を下に置くことによって、自分がそれより上の存在であることを世界に見せつけたという見方も
・2500億ドルの手土産、異例の歓待の3か月後に経済対立が一気に表面化しているという事実

[SUMMARY OF CHAPTER ――5年後を予測するヒント]
・アメリカ以外の国は国際条約のルールを厳守するというスタンスを貫く一方、アメリカはつねに「ルールをつくるもの」という考え方がベースに
・トランプ大統領の思考ベースは、アメリカにとってメリットがあるかないか
・習近平国家主席はトランプ大統領より優位の立場を主張するものの、今後貿易戦争に発展した際、アメリカへの対抗手段は中国にはない

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