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激動&活況の中の中国市場の動き:ZTE、DRAM価格、連携、半導体業界

米朝、米中はじめ激しく動く世界の政治・経済情勢の中で続く世界半導体業界の活況となっているが、とりわけ中国市場が絡む動きに目が離せないところがある。中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁緩和は、米中通商摩擦交渉の重要懸案の1つであり米中双方の半導体業界にインパクト要因となる。DRAM価格の上昇については、中国政府が抑制に乗り出している。中国のエレクトロニクス&半導体市場での協業、提携がいくつか目についている。そして、自立化を図っている中国の半導体業界の活発な展開の動きが引き続き見られており、そのアップデートである。

≪目が離せない刻々の動き≫

米中間の貿易協議の案件の1つとして、ZTEの制裁緩和に向けた調整が次の通り進められている。

◇ZTE制裁緩和、トランプ政権、議会との調整急ぐ (5月26日付け 日経 電子版)
→トランプ米政権が中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁緩和に向けて議会との調整を急いでいる旨。巨額の罰金を条件に4月に科した米国企業との取引禁止を解く方針だが、安全保障を理由に科した制裁を対中貿易摩擦の交渉材料に使う姿勢への批判が議会で高まっている旨。トランプ大統領は自らの判断の正当性を強く主張している旨。中国の国営新華社によると、ロス米商務長官は6月2〜4日に中国を訪れ、3度目の貿易協議を開く旨。中国はZTEの制裁緩和と引き換えに米国の農産品への報復関税を取り下げる案などが取り沙汰されている旨。

中国の業界からは、ソーシャルネットワーク運営最大手、テンセント・ホールディングス(騰訊)より半導体の重みが改めて取り上げられている。

◇Tencent chairman pledges to advance China chip industry after ZTE 'wake-up' call: reports-ZTE ban inspires Tencent chairman to lift China's chip industry (5月27日付け Reuters)
→Tencent Holdingsのchairman and CEO、Pony Ma氏が、現在は解かれる見込みの米国によるZTEへのアメリカ製半導体販売禁止に照らして、、自分の会社は中国国内の半導体業界を高めるために役割を担うことを約束の旨。「最近のZTEの出来事は、どんなにモバイル決済で進んでいるとしてもモバイル、半導体およびoperating system(OS)なしでは競えないとみんなに明らかに理解させた。」と同氏。

ZTEへの制裁が緩和されれば、QualcommによるNXP Semiconductors買収への中国当局の承認が出されるとの見方である。

◇China Is Said to Clear Qualcomm-NXP Once Confident of ZTE Deal-Report: China to approve Qualcomm-NXP merger with a ZTE deal (5月29日付け BloombergQuint (India))
→Bloomberg発。北京政府がZTEへの米国製microchipsの販売禁止を米国が解除することを確信すれば、中国の公正取引regulatorがQualcommおよびNXP Semiconductorsの$43 billion合併に承認を与える見込みの旨。

頭打ち感があらわれてきているが、高水準が続いているDRAM価格について、メモリ最大手の1つ、米国・Micronに対して中国当局の抑制を促す働きかけがみられている。

◇China antitrust officials reportedly meet with Micron about PC DRAM prices (5月28日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。中国・Anti-Monopoly Bureau of Ministry of Commerce関係者がMicron Technologyと最近会合をもち、PC DRAM製品価格の引き続く上昇に"懸念を表明"の旨。中国はメモリ製品の最大輸入国であり、中国政府は自国のDRAMおよびNANDフラッシュ業界を"積極的に"展開している旨。「中国が技術において独立したR&Dを実現し、量産の規模を安定化するのに少なくとも数四半期かかり、直ちにコスト圧力に対抗できない。」
とDRAMeXchangeは示している旨。

◇China talks to Micron about DRAM price-China talks about DRAM pricing with Micron-China's Anti-Monopoly Bureau of Ministry of Commerce has talked to Micron about limiting supplies of DRAM to keep prices up, reports DRAMeXchange. (5月29日付け Electronics Weekly (UK))
→DRAMeXchange発。DRAMsのpricing上昇を保つよう供給を抑えていることについて、Micron Technologyが中国・Anti-Monopoly Bureau of Ministry of Commerceと話し合いに入っている旨。Micronは、Samsung ElectronicsおよびSK Hynixに次いで世界DRAMサプライヤ最大手の1つの旨。

いま改めてではないが、中国のエレクトロニクス&半導体市場での協業、提携の動きが目についた範囲、以下の通りである。

◇Huawei teams up with BOE to develop foldable smartphones, says report (5月28日付け DIGITIMES)
→韓国・ET News発。Huaweiが、新しいスマートフォン分野でのSamsung Electronics対抗を狙って、foldableスマートフォン開発でBOE Technologyと連携の旨。中国のflat panelメーカーとして初めて2017年に6G fabからのflexible OLEDパネル生産を始めたBOEが、Huawei foldableスマートフォンに向けて8-インチin-folding OLED flexibleパネルを生産する旨。

◇TowerJazz & Gpixel announce world's smallest global shutter pixel (5月29日付け ELECTROIQ)
→グローバルspecialtyファウンドリーleader、TowerJazzとprofessional応用に重点化する急成長のCMOS image sensor(CIS)プロバイダー、Gpixel社(Changchun, China:吉林省長春市)が、Gpixelの新しい25MpグローバルシャッターセンサをTowerJazzの2.5μグローバルシャッターpixelベースで開発、C-mount opticsで最高解像度、1.1″ optical formatの旨。

◇Huaxintong to roll out 1st-generation server chip-Report: Qualcomm's Chinese JV will debut a server chip (5月30日付け DIGITIMES)
→qq.com website発。Qualcommと貴州(Guizhou)省政府の合弁のIC設計会社、Huaxintong Semiconductor Technologyが、今年後半にサーバ用の同社社内開発のプロセッサ第1世代を投入予定の旨。該ソリューションは、すでに2017年末にtrial生産を行なっており、該半導体は最近、中国での国際ビッグデータexpoで披露の旨。

中国半導体業界の活発な展開の動きとして、まずは先端実装分野の定例イベントである。

◇The advanced packaging industry is on the move (5月30日付け ELECTROIQ)
→JITRI(Jiangsu[江蘇] Industrial Technology Research Institute)傘下のNCAP ChinaとYole Developpement(Yole)主催、第4回Advanced Packaging & System Integration Technology Symposium(2018年6月20-21日:Wuxi[江蘇省無錫市], China)について。先端実装業界のleadersが集まり、戦略的な事項の質疑を行い、opportunityを得る旨。

中国各地の急速に伸びるIC業界クラスターの1つ、安徽省合肥市(Hefei)における発展ぶりがあらわされている。

◇IC sector prospering in Hefei, China-Hefei is now home to 129 chip-related companies (5月30日付け DIGITIMES)
→中国で急成長のIC業界clustersの1つ、Hefei(合肥)のIC業界。3年足らずでファブレス会社、ファウンドリーおよびbackend housesなど総計129のICメーカーがHefeiにoperationsを設立、現地で完全なsupply chainを構築の旨。Hefeiの該完全IC業界supply chainは、lithography toolベンダー、ASMLおよびフォトマスクのPhotronicsなど国際的装置および材料プロバイダーからの投資を引きつけている旨。

中国の半導体業界を牽引する紫光集団(Tsinghua Unigroup)の現下の取り組みである。特にメモリ半導体に向けた工場の進捗に注目が集まるところと思う。

◇紅い半導体、自立の夢、中国・紫光集団、11兆円投資、政府主導 (6月1日付け 日経)
→中国の国策半導体メーカー、紫光集団が半導体業界の台風の目となっている旨。総額3兆円を投じる湖北省武漢市のメモリ工場が年内に稼働、現地では生産建屋が完成に近づき、試作ライン向けの製造装置の搬入も始まった旨。紫光集団は今後10年で千億ドル(約11兆円)を投資する方針。米中通商摩擦を背景に、中国は半導体国産化のピッチを上げており、紅い半導体メーカーに世界の注目が集まっている旨。
中国の内陸部、武漢市中心部から東に約30キロ離れた開発特区「未来科技城」。雨でぬかるんだ赤土の未舗装路が残る同地区で、紫光集団傘下の長江存儲科技(YMTC:Yangtze Memory Technology Corp)の工場の建設が進む旨。同工場は年内に東芝と同じNAND型フラッシュメモリの量産を始める旨。


≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ売却完了】

最後の関門となった中国当局の承認が得られて、「東芝メモリ」の米投資ファンド、ベインキャピタルが率いる「日米韓連合」への売却が6月1日に完了、「日の丸半導体」の最後のとりでがかろうじて維持されている。

◇東芝、「1兆円後」に増す物言う株主との不協和音 (6月1日付け 日経 電子版)
→東芝は1日、半導体メモリ子会社の東芝メモリを米投資ファンドなどの「日米韓連合」に正式に売却する旨。売却額は約2兆円でメモリへの再出資分などを差し引いても1兆5000億円近いキャッシュを得る旨。会計上でも約1兆円の売却益を計上、これで2016年末に発覚した米原発事業の損失問題を機に土俵際まで追い込まれた東芝の経営問題は節目を迎え、再生へ新たな一歩を踏み出す旨。

◇東芝、2兆円で半導体子会社の売却を完了 (6月1日付け YOMIURI ONLINE)
→東芝は1日、半導体子会社「東芝メモリ」の売却を完了したと発表、売却額は約2兆円で、米投資ファンドのベインキャピタルなどで構成する「日米韓連合」が新たな株主となった旨。東芝は売却後も、東芝メモリ株の約40.2%(議決権ベース)を保有する旨。

◇東芝、半導体子会社の売却発表、2兆円で日米韓連合へ (6月1日付け 朝日新聞DIGITAL)
→東芝メモリの議決権比率は、ベイン49.9%、東芝40.2%、HOYA9.9%で、日本勢でぎりぎり過半を握る形にして「日の丸半導体」の最後のとりでを維持した旨。東芝の議決権のうち33.4%は、政府系ファンドの産業革新機構と日本政策投資銀行が「指図できる権利」を持つ旨。東芝メモリの年間売上高は約1兆2千億円、1年後には社名から「東芝」を外す予定の旨。

◇ニッポン半導体、復権の道険しく、東芝メモリ売却完了 (6月2日付け 日経 電子版)
→東芝は1日、半導体メモリ子会社「東芝メモリ」を米投資ファンドのベインキャピタルが率いる「日米韓連合」に約2兆円で売却したと発表、筆頭株主はベインだが、東芝も4割の株式をもち「ニッポン半導体」として再出発する旨。ただ1990年代に世界を主導した日本勢の競争力は韓国に比べ弱まっており復権への道は険しい旨。

【メモリ市場関連】

NANDフラッシュメモリの第一四半期グローバル売上げが、季節的要因も絡むなか前四半期比減少、今後当面の推移に注目である。

◇Global NAND flash market down 3 pct on-quarter in Q1: DRAMeXchange-Data: Q1 NAND flash market falls 3% from Q4 to $15.7B (5月28日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→TrendForce傘下の業界tracker、DRAMeXchangeがまとめたデータ。2018年1-3月期のNANDフラッシュグローバル売上げが$15.7 billion、2017年第四四半期の$16.2 billionから3%減、季節的要因によるが需要復活で今年後半戻す予想の旨。

◇Global 1Q18 NAND flash market posts 3% decrease, says DRAMeXchange (5月29日付け DIGITIMES)

メモリが牽引する熱い活況はまだまだ続くと、国内製造装置大手の強気の投資が次の通りみられている。

◇半導体装置、強気の投資、用途広がり2018年度4割増 (5月29日付け 日経 電子版)
→国内の半導体・パネル製造装置大手7社の2018年度の設備投資額が前年度比4割増える見通しとなった旨。スマートフォン市場は成熟しているもののIoT機器が浸透し、データを出し入れするサーバも急速に市場が伸びる旨。半導体市場は持続的に成長すると各社は判断しているが、需給バランス次第では市況が急変し、装置を使う顧客の購買意欲が減退するリスクはある旨。

DRAM価格については3月、4月と横ばい、上昇の頭打ち感が鮮明になっているとの見方である。

◇DRAM価格横ばい、4月、パソコン用 (5月29日付け 日経)
→パソコン用DRAMの4月の大口価格が2カ月連続で横ばいとなった旨。指標となるDDR3型の4ギガビット品は3月と同値の1個3.7ドル前後。処理速度が速いDDR4型の4ギガビット品も前月と同じ4.1ドル前後となり、価格上昇の頭打ち感が鮮明になっている旨。

【見積もり値上げ】

IoTはじめ新分野の台頭から8-インチの逼迫の流れが、次もその1つで見積もり価格の上昇として色濃くなっている。

◇Second-tier IC foundries mulling 20-30% price hike (5月29日付け DIGITIMES)
→台湾のIC設計業界筋発。中国および台湾のsecond-tier ICファウンドリーが、2018年第三四半期における8-インチcapacityに向けた見積もりを20-30%高める計画の旨。8-インチcapacityの力強い需要およびSiウェーハ価格上昇がそうさせている旨。受注引きつけに向けて値下げを提示していたsecond-tierファウンドリーであるが、供給逼迫の渦中すでに値下げを止めている旨。

ファブレスメーカーからも、ファウンドリー、マスクなどコスト増が見込まれている。

◇Fabless firms to encounter rising foundry and mask costs in 2H18-Sources: Wafer and mask costs to increase this year (5月30日付け DIGITIMES)
→業界筋発。ファブレス半導体メーカーが、2018年後半にファウンドリーサービス、ウェーハおよびフォトマスクのpricing増加を見込んでいる旨。
該コスト上昇は、台湾および中国のIC設計会社の間の競合の高まりを誘発する可能性の旨。

6-インチについてもファウンドリー見積もりの上昇がみられている。

◇Quotes for 6-inch capacity to rise 10% (5月30日付け DIGITIMES)
→業界筋発。パワー半導体デバイス需要が力強く、第三四半期における6-インチファウンドリーcapacity見積もりが10%上昇、Episil TechnologiesおよびMosel Vitelicなどのファウンドリーが第三四半期についての6-インチcapacity価格を上方調整する計画の旨。EpisilおよびMosel VitelicともにMOSFETs, diodesなどパワーICsの受注が立ち上がっている旨。

【QualcommのAR/VR半導体】

Qualcommが、mass-market augmented and virtual reality(AR/VR) headsetsに向けた初めての専用半導体、Snapdragon XR1チップセットを披露している。今後の普及に向けた展開に注目である。

◇Qualcomm introduces a dedicated chip for mass market AR/VR headsets-Qualcomm designs chipset for AR/VR headsets (5月29日付け TechCrunch)
→Qualcommが、Snapdragon XR1チップセットを披露、特にmass-market augmented and virtual reality(AR/VR) headsets向けに設計の旨。同社は該設計をheadsetメーカー向け低コスト化optionと謳っている旨。

◇Qualcomm aims to spark virtual reality market with its first standalone AR/VR chip (5月29日付け The San Diego Union Tribune)

◇クアルコム、VR向け半導体 (5月31日付け 日経)
→米クアルコムは29日、仮想現実(VR)やAR(拡張現実)を楽しむ端末向けのプロセッサを開発したと発表、これまではスマートフォン用の半導体を転用していたが、専用の設計にして価格を抑える旨。端末メーカーが2万円前後の機種を作りやすくなるとみられ、ゲーム愛好家などにとどまっていたVR端末の普及に弾みがつきそうな旨。

【TIの車載レーダセンサ】

Texas Instruments(TI)からは、自動車に向けたミリ波レーダセンサへの取り組みが以下の通りあらわされている。標準社内RF CMOS技術を駆使した精度、検出そして速度、それぞれの対応能力に注目するところである。

◇DSP Inside TI Radar Puts AI on Edge-TI's CMOS mmWave radar in mass production (5月30日付け DIGITIMES)
→高度に自動化された車に重要sensing技術が入っていって、visionセンサと連携し得るレーダ。欠点および利点両方を知って、レーダがどこへ進むかより大きな問題に。Texas Instruments(TI)は、標準社内RF CMOS技術で作られたミリ波レーダ半導体でこの問題に答える期待の旨。1年前に投入されたTIのレーダ半導体からは、"5cm以下の解像精度、数100mまでのrange検出および最大300km/hの速度"が得られる旨。

◇TI mass-producing UWB 76-81GHz mmWave radar sensors-TI is in mass production of UWB mmWave sensors supporting frequencies from 76 to 81 GHz.-TI provides millimeter-wave radar sensors for autos (5月31日付け Electronics Weekly (UK))

◇TI Puts CMOS mmWave Radar in Production (5月31日付け EE Times India)
→車載レーダセンサが2018年終わりあるいは2019年始めまでに発売される、とTexas Instruments(TI)。

【AIスピーカー】

AIスピーカー、スマートスピーカーのこの第一四半期の市場状況、そして早くも次世代対応があらわされている。小生個人的には使い勝手に馴染めず、まだまだ活用への途半ばの様相が続いている。

◇「Google Home」が「Amazon Echo」を抜き初の首位--スマートスピーカ市場調査 (5月28日付け CNET Japan)
→Canalysの最新レポート。「Google Home」や「Google Home Mini」などGoogleのスマートスピーカ製品は、2018年第一四半期の世界出荷台数で首位となり、初めてAmazonのEcho製品を抜いた旨。出荷台数はGoogleが320万台、Amazonは250万台。

◇AIスピーカー、早くも次世代、LINEはカメラ搭載 (5月30日付け 日経 電子版)
→音声で情報を取り出したり家電を操作したりできる人工知能(AI)スピーカーが、早くも第2世代の開発を競う段階に入った旨。LINEは画像認識の機能を備えた機種を数年内に製品化、発言者を正確に把握して個別対応ができるようにする旨。先行する米大手は画面付き機種の投入や、ビジネス用途の拡充を急ぐ旨。日本では登場したばかりだが、身近な存在になる可能性もある旨。


≪グローバル雑学王−517≫

世界一のEC書店から、エブリシング・カンパニーへ、「ビッグデータxAI」を駆使して、最先端の事業変容を図るアマゾンについて、

『アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』
 (田中 道昭 著:PHPビジネス新書 387) …2018年1月17日 第1版第4刷発行

よりその本質に迫っていく。EC通販を通して集積してきているビッグデータをフルに活用、そして今こそ「天の時」を迎えているAIサービスをAWS(Amazon Web Services)上で展開して、顧客第一主義に一貫して磨きをかけていくアプローチに映ってくる。データを分析することが顧客を知ること、その徹底が戦略の要諦であることを知らされる。


第3章 アマゾンの収益源はもはや「小売り」ではない――ビッグデータ時代の覇者・ベゾスの野望

◆そもそも「ビッグデータ」とは何か
・アマゾンが集積しているビッグデータ
 →EC通販事業を通して…動画視聴データ、音声データ、画像データ
 →リアル店舗への本格進出…オフラインでの購買データ、消費者の位置情報データ
・ビッグデータとは何か
 →特徴:3つのV…Variety(多様性)
         Volume(ボリューム)
         Velocity(リアルタイム性)
 →データの正確性、データの鮮度、データのカバレッジ
・膨大なデータを「収集」「分析」することで一定のパターンを発見する
 →顧客一人ひとりのセグメンテーションに「活用」
 →統計的・確率的に未来を予測、意思決定に活用
・ビッグデータの分析と従来のデータ分析の違い
 →データの量とその分析手段、AIによってもたらされるもの

◆アマゾンの本質は「ビッグデータ企業」
・「Data is King at Amazon」…アマゾンにかつて在籍したRonny Kohavi氏
・ビッグデータの集積装置
 →ECサイト、キンドル、アマゾン・エコー、アマゾン・アレクサ、アマゾン・ゴー、ホールフーズなど
 →購買履歴データ、行動履歴データ、視聴データ、音声データ、画像データなどを刻一刻と

◆AWS――「利益が低ければ競合も減る」という強烈な発想
・「ビッグデータxAI」の領域で強固なシナジーを生み出しているAWS(Amazon Web Services)
 →支えるコンピュータ部門、IT部門から、単独でビジネスを行うように
 →基本的なコンピュータインフラの販売、IoTやAIなどを含む90以上のサービスを提供
・AWSの使用料は一貫して低料金
 →ベゾスには「利益が低ければ競合が減る」との勝算も
 →コスト構造に優れたアマゾンであれば生き残れる
・ベゾスは1990年代末頃から、「アマゾンはテクノロジー企業であって小売企業ではない」と主張、技術に投資継続
 →すでにリリースされている多くの機能は機械学習(ML)によって生み出されたもの
 →AWS上では、AIのサービスが顧客向けに提供
・AWSは、商品の魅力、コンテンツの魅力といった差別化戦略においても強力なプレイヤー
 →これから日本においても、アマゾンは「アマゾン本体xAWS」の相乗効果でビジネスをさらに拡大させていくことは確実

◆ベゾスが米国インターネット協会で語ったこと
・アマゾンは、まさに今「天の時」を迎えているAI、ビッグデータというものをフル活用
 →AWSをプラットフォームにAIのサービスを法人顧客向けに提供

◆アマゾンの値付け、そして「アマゾン・キャッシュ」
・AIの登場によって、アマゾンはこれまで蓄積してきたビッグデータの出口を見つけた
・アマゾンの価格はdynamic pricingが特徴
  →検索上位の商品や人気商品を中心に低価格に
 →Long Tail(市場における商品の中でもあまり 売れることのない、少数派の市場の商品)やあまり数が出ない商品は、きちんとマージン確保
・最近アマゾン・キャッシュというサービスを開始
 →銀行口座やクレジットカードを持っていなくてもネットで買い物ができる
・アマゾンが蓄積しているビッグデータは、行動パターン、心理パターン、属性まですべてを含む
 →はるかに細密な「1人のセグメンテーション」「0.1人のセグメンテーション」を可能に

◆なぜ、アマゾンは顧客の好みを知っているのか
 ――協調フィルタリングの秘密
・アマゾンのリコメンデーションのアルゴリズム、「協調フィルタリング」
 →ユーザごとの購入予測モデル
 →「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という表示
 →似たもの同士を集めてグルーピング、それを分類したり、セグメント分け
・アマゾンで使われている協調フィルタリング
 →2つ:顧客に着目、ユーザベースの協調フィルタリング
     商品に着目、商品ベースの協調フィルタリング
 →ユーザ同士の類似性や商品同士の共起性を解析、ユーザ同士の購買履歴を関連づけ
 →高度化されて「0.1人のセグメンテーション」へ
 →多くのユーザのなかから自分に似ているユーザを探し出し、彼らが持っていながら自分は持っていないアイテムをお勧めする、という基本

◆ビッグデータxAIは「マスカスタマイゼーション」に向かう
・アマゾンのビッグデータ分析
 →やがては大量生産とパーソナライゼーションを組み合わせることで、マスカスタマイゼーションに着手へ
・ECの王者、アマゾンが、メーカーとしてのアマゾンという新たな顔をもつ
 →そんな未来がすぐそこまで
・「アマゾンが顧客に代わって常にパイオニアとして新たな商品・サービスを提供することが重要」とベゾス

◆世界一の書店から、エブリシング・カンパニーへ
・AIは、今や完全にフル活用すべきタイミングが到来
 →AIがビジネスのインフラ部分から活用が進んでいるという事実が重要
・音声認識AIシステム、アレクサはすでにライセンスアウト
 →ベゾスはこれらをさらに一般に身近に使用できるようにしたいと考えているよう
・一人ひとりの消費者にあわせて製品をカスタマイズ、開発・生産・販売・配送までを行うマスカスタマイゼーションの実現
 →「世界でただひとつ、あなたのためだけの商品」が通常のサービスとして提供される日もそんなに遠くないと予想
 →自分だけのオーダーメイドの服、メガネ、家具、寝具など

◆「位置情報」が暴く個人の秘密
――その対価として、アマゾンは何を提供するか
・「ユーザの位置x行動範囲x時間のデータ」
 →より正確なその人のプロファイリングが可能に
・ビッグデータを分析していく上で、重要なポイント
 →データの正確性、データのカバレッジ、データの鮮度
・アマゾンがリアル店舗展開するに際して、位置情報がわかるようなアプリを導入することはほぼ確実
・あくまでも顧客第一主義を貫徹するためのカスタマー・エクスペリエンス向上のため
 →手段として、「ビッグデータxAI」があるという構図
・データを分析することが顧客を知ること
 →アマゾンのビッグデータ戦略の要諦

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