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BroadcomによるQualcomm買収禁止命令、米中技術&経済摩擦に至る様相

米通商代表部(USTR)、通商法301条の発動、とかつての日米半導体摩擦の頃のキーワードがあらわれてきているが、こんどは米国と中国の間の技術および経済摩擦の前触れの動きとして出始めている。大きく動かしたのが、Broadcomが仕掛けているQualcommの敵対的買収を阻止する米国Trump大統領による命令であり、中国・華為技術有限公司(Huawei Technologies)が次世代高速無線5G技術の特許の10%を保有、米国の安全保障に非常に脅威とする対米外国投資委員会(CFIUS)の見解が効いている模様。前後の関連する動きを、主として半導体業界の視点で追っていく。

≪衝撃と波紋≫

今週、米国のビジネスの世界を駆け巡った衝撃が、端的に表わされている。

◇Under Trump, the US government gives many foreign deals a closer look (3月16日付け CNN)
→Donald Trump大統領が国家安全の懸念からある主要技術取引を閉鎖、今週ビジネスの世界に衝撃を与えた旨。

BroadcomによるQualcommの敵対的買収入札を巡っては、先週末からBroadcomをさらに最大手のIntelが買収を検討かと、以下の動きが見られていたところである。

◇Intel May Intervene in Broadcom's Effort to Buy Qualcomm-Intel, facing a threat, considers deals that could include a giant bid for Broadcom-Intel weighs options in response to Qualcomm takeover (3月9日付け The Wall Street Journal)
→Intelが、BroadcomのQualcommに対する敵対的買収入札に反応、Broadcom自体を買収する可能性など、一連の選択肢に注目している旨。また、足跡を拡げるためにより小さな買収を行うことも検討している旨。

◇インテル、ブロードコム買収を検討か、米紙報道 (3月10日付け 日経 電子版)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は9日、米半導体最大手、インテルがシンガポールに本社を置く半導体大手、ブロードコムの買収を検討していると報じた旨。ブロードコムが狙う米クアルコムの買収が実現すれば、大きな脅威となるため、対抗措置の一つとして買収案が浮上した旨。実際に買収に乗り出すかは不透明だが、半導体業界の再編機運が一段と高まっている旨。

◇Intel Reportedly Mulls Broadcom Bid (3月12日付け EE Times)

また、中国の国家が支える投資筋による買収の仕掛けがTrump大統領により昨年破棄された米国のLattice SemiconductorのCEOが退任する動きも以下の通り並行しているタイミングである。

◇Lattice Semiconductor CEO retiring after failed China deal, activist pressure-Lattice CEO retires; COO named interim CEO (3月12日付け The Oregonian (Portland))
→2010年以来のLattice SemiconductorのCEO、Darin Billerbeck氏が退任、Chief Operating Officer(COO)のGlen Hawk氏が暫定CEOに就いた旨。
Billerbeck氏の引退は、Latticeでの7% equity stakeをもつ物言う株主、Lion Point Capitalが薦めた3人の新任directors就任、および国家安全の観点からDonald Trump大統領が昨年破棄した取引である中国支援の投資家への同社$1.3 billion売却の試みの失敗の直後である旨。

◇Lattice Semiconductor CEO to retire this week (3月12日付け The Business Journals/Portland, Ore.)

ここで急転直下、対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the US)の見解報告を受けて、Qualcommの5G技術研究開発に支障が出てくることを主な理由に、Trump大統領は、Broadcomが仕掛けているQualcommの敵対的買収を阻止する大統領命令を出している。「華為技術(ファーウェイ:Huawei Technologies Co. Ltd.)は既に次世代の高速無線技術(5G)分野の特許の10%を保有している。中国が5G分野で独占すれば米国の安全保障にとって非常にネガティブ」とする書簡を、今月5日、外国企業によるM&A(合併・買収)の安全保障上のリスクを審査する対米外国投資委員会がBroadcomとQualcommの顧問弁護士に送っているという経過である。

◇Trump Trumps Broadcom's Bid for Qualcomm-U.S. president prohibits $117 billion deal (3月12日付け EE Times)

◇President Trump halts a major chip deal-U.S. President Donald Trump on Monday blocked semiconductor maker Broadcom's proposed takeover of Qualcomm on grounds of national security.-Citing national security, Trump blocks Broadcom bid for Qualcomm (3月12日付け Reuters)
→Donald Trump大統領が月曜12日、国家安全懸念としてBroadcomが仕掛けているQualcommの敵対的買収を阻止する大統領命令を出した旨。Committee on Foreign Investment in the US(CFIUS)が、シンガポールのBroadcomはQualcommのR&D活動を減らして5G技術開発で競合に後れをとらせる可能性、と結論づけた旨。

◇Trump Blocks Broadcom's Bid for Qualcomm (3月12日付け The New York Times)

◇Trump Blocks Broadcom Bid for Qualcomm-Updated: National security cited for the denial. (3月12日付け Semiconductor Engineering)

◇Trump Blocks Broadcom Takeover of Qualcomm on Security Risks (3月13日付け Bloomberg)

◇Trump Orders Broadcom to Cease Attempt to Buy Qualcomm-President points to national-security concerns raised by the deal (3月13日付け The Wall Street Journal)

◇Trump blocks Broadcom's takeover of Qualcomm (3月13日付け ELECTROIQ)

◇米大統領、クアルコム買収禁止命令、安保で中国意識 (3月13日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領は12日、シンガポールに本社を置く通信用半導体大手、ブロードコムによる米クアルコムの買収を禁じる命令を出した旨。外国企業による米国企業への投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告に従った旨。トランプ政権は鉄鋼やアルミニウムの輸入制限も決めており、安全保障を理由に経済活動に介入する姿勢が鮮明になってきた旨。トランプ大統領は命令文で「ブロードコムによるクアルコムの買収は、米国の安保を損なう可能性があると信じられる確かな証拠がある」とした旨。
半導体大手のクアルコムは国防総省と取引があり、米国が中国などと競う次世代通信規格の「5G」でも規格の策定や半導体供給で中心的な役割を果たしている旨。

この大統領命令を受けて、BroadcomはQualcomm買収に向けた$117 billion提示を以下の通り正式撤回するに至っている。

◇ブロードコム、米クアルコム買収断念か (3月14日付け 日経 電子版)
→米ブルームバーグ通信は13日、シンガポールの半導体大手、ブロードコムが米同業クアルコムの買収を断念することを14日に表明する見通しだと報じた旨。両社は株主の委任状争奪戦によって買収の是非を問おうとしていたが、12日にトランプ米大統領が安全保障上の理由で買収禁止を命令。株主の意向にかかわらず、買収の成立は困難になっていた旨。ブロードコムが正式に買収断念を表明すれば、4カ月超に及んだIT産業で過去最大の買収劇は終わりを迎える旨。

◇Broadcom ends Qualcomm bid after President Trump tanked deal-Broadcom backs out of Qualcomm deal (3月14日付け USA Today)
→Donald Trump大統領が取引阻止の大統領命令を出したのを受けて、BroadcomがQualcomm買収に向けた$117 billion提示を正式に引っ込める旨。Broadcom指導層は、同社が法的headquartersをシンガポールから米国に依然移す予定としている旨。

◇Broadcom withdraws offer to acquire Qualcomm (3月16日付け ELECTROIQ)

Broadcomは、重なるタイミングで直近四半期の業績発表を行い、その中で新たな買収ターゲットを求めていくと不屈の闘志をあらわしている。

◇In wake of Qualcomm drama, Broadcom posts solid Q1 2018 results-For the current quarter, Broadcom expects to sustain topline momentum thanks to strong data center demand.-Broadcom's revenue rises 28%; firm won't give up on M&A (3月15日付け ZDNet)
→Broadcomの2月4日締め第一四半期のnet incomeが$2.35 billion、前年同期が$1.63 billion、一方、売上げは前年同期比28%増。BroadcomのCEO、Hock Tan氏は、Qualcomm入札失敗に引き続いて新たな買収目標を追求していくと表明、"役立つ何にでも広く注目していく"旨。

◇Broadcom Eyes New Acquisition Targets (3月16日付け EE Times)

◇Undaunted, Broadcom will still look for deals, but smaller ones (3月16日付け MarketWatch)

この一連の動きの直後のこと、Qualcommについて同社の前会長で創業者の息子のPaul Jacobs氏が買収に乗り出す動きが報じられている。

◇クアルコム、前会長が買収検討、ソフトバンク支援か−FT報道 (3月16日付け 日経 電子版)
→英フィナンシャル・タイムズ(FT)は15日、米クアルコム創業者の息子で3月上旬まで会長を務めていたポール・ジェイコブス氏が同社の買収を検討していると報じた旨。ソフトバンクグループが資金の出し手候補として浮上しているもよう。3人の関係者が、ジェイコブス氏が取締役会に買収の計画を伝えたことを明かした旨。ジェイコブス氏は長期での開発投資を重視する企業文化を守るため買収を検討しているとみられる旨。

まだまだ目が離せないこれらの経過について、いろいろな切り口の見方&評論が並行してあらわれている。

◇A Different View of the U.S. Broadcom Decision (3月13日付け EE Times/Blog)
→グローバルlaw firm、CKR Lawのパートナー、Ning ZhangおよびWei Zhang両氏記事。Trump大統領のBroadcomによるQualcomm買収を禁止する命令は、すべて中国、特にHuaweiからきている旨。

◇Trump Precedent Won't Chill M&A-Broadcom/Qualcomm decision seen as a first-Broadcom, others still on the M&A path-The new old outlook for Qualcomm-Analysis: Blocked Broadcom bid seen as unique (3月14日付け EE Times)
→Trump政権は、株主が票決する前にBroadcomによるQualcommの敵対的買収を禁止、新たな先例を置いた旨。アナリストはこのような執行権力が良いことかどうか両論だが、半導体業界そしてBroadcomが大型取引を引き続き追求すると一致している旨。Trump氏は9月にLatticeの買収を阻止、"しかしこれはずっと小さな取引であり、纏わるprivate-equity会社を中国が支えていた"と、特に言及するTirias ResearchのKevin Krewell氏。

◇No Worries on M&A Front after Trump Veto -Rejected deal alone would've been larger than entire record year in semiconductor mergers & acquisitions (3月14日付け EE Times India)

◇Trump Was Right to Block a Merger (3月14日付け The New York Times)
→スマートフォンなどの機器用半導体を作るQualcommの海外の会社による買収提案を阻止するTrump大統領の決定は、並外れたことであった旨。一連の合併で半導体業界がすでに数少ない大手メーカーにより席巻されているとすれば、正当な動きでもあった旨。

◇クアルコム買収禁止、安保が理由の違和感 (3月14日付け 日経 電子版)
→シンガポールに本社を置く通信用半導体大手、ブロードコムが、米クアルコムの買収断念に追い込まれそうな旨。両社は株主の委任状争奪戦で買収の是非を問おうとしていたが、トランプ米大統領が12日に買収禁止を命令。米ブルームバーグ通信によると、ブロードコムはちかく買収断念を表明する見通しの旨。命令の根拠は「安全保障上の理由」だが、安保の定義が曖昧で米政権のちぐはぐさが否めない。ブロードコムの脅威とは何なのか。

◇半導体買収阻止に映る米中「技術冷戦」 (3月14日付け 日経 電子版)
→このところ米国で技術と安全保障をリンクさせる議論が目立つ旨。仮想敵国は中国。中国のIT分野の技術進化とビジネス拡大は米国にとって「商機」であるが、政治の街、ワシントンでは「脅威」に映る旨。

米国と中国の間の通商摩擦が、時を合わせるかのように以下の通り知財制裁そして貿易赤字削減の形で具体的に表面化している。

◇中国へ知財制裁関税、最大600億ドルか、トランプ政権−電気製品や通信機器、月内にも決断 (3月14日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領が検討する中国の知的財産権侵害への制裁措置を巡り、中国製品に課す追加関税が最大600億ドル(約6兆4千億円)に達する可能性があることが13日分かった旨。米メディアが同日報じた旨。トランプ氏は3月中にも制裁発動を決断する方向で、鉄鋼・アルミニウムに続く強硬的な輸入制限に踏み切る可能性がある旨。トランプ政権が検討するのは、不公正貿易に大統領権限で制裁措置を課せる通商法301条の発動。米通商代表部(USTR)は中国に対し、不法コピー商品の横行などの知財侵害に加え、米企業が中国進出時に技術移転を求められる同国内の投資慣行も問題視している旨。

◇米、対中貿易赤字1000億ドル削減を要請、米報道 (3月15日付け 日経 電子版)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は14日、トランプ米政権が中国に対して米国の対中貿易赤字を1千億ドル(約10兆6千億円)減らすよう求めたと報じた旨。米国の2017年の対中貿易赤字は3752億ドルと全体の半分近くを占めており、トランプ大統領が問題視しているが、ただ、貿易赤字は米国の旺盛な需要がもたらしている側面もあり実現性は不透明の旨。

米国と中国の間の半導体技術関連の摩擦のタネは以下はじめ尽きない現時点であり、絶えず更新を要するところである。

*人工知能(AI)も半導体が性能のカギを握っており、半導体は米国がリードしている分野で中国は是が非でも欲しい技術となる。

*米ユーラシア・グループによると、2017年の世界で最も強力なスーパーコンピュータ500台のうち202台が中国で米国の143台より多い。インターネット利用者は中国が7億7300万人、米国が2億4600万人で遠く及ばない。


≪市場実態PickUp≫

【本年の半導体市場予測】

約20%増、$400 billionの大台突破となった昨年、2017年の半導体販売高を受けて、今年、2018年をどう見るか。同じペースではいくまいと半分の伸び率で見たものの、この1月は昨年の勢いを保つ高水準という状況などなど、非常に悩ましいところがある。IC Insightsは、当初の8%増からこのほど15%増に引き上げており、メモリ半導体の牽引を引き続き見込んでいる。

◇Outlook for global chip market turns rosier: sources-Sources see chip market growing faster than forecasts (3月12日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)が2018年の半導体市場について9.5%増の$451 billionと予想、しかし業界筋ではDRAM需要および他の半導体ニーズがその伸びをもっと高めると見ている旨。Semiconductor Industry Association(SIA)は、1月のグローバル半導体販売高が$37.6 billionに達し、前年同月比22.7%増と発表の旨。

◇IC Insights Raises 2018 IC Market Forecast from 8% to 15%-Increased expectations for the DRAM and NAND flash markets spur upward revision. (3月14日付け IC Insights)

◇Analyst Lifts Chip Market Forecast to 15% Growth (3月15日付け EE Times)
→2017年を特徴づける半導体市場予測の連続した上方修正を思い出させる動き、市場watcher、IC Insights(Scottsdale, Ariz.)が、今年の半導体業界伸長予測を前回の8%から15%に高めた旨。昨年のメモリ半導体が牽引する流れが当てはめられ、次の通り劇的に上方修正の旨。
 DRAM販売高 13%増→37%増
 NAND販売高 10%増→17%増

◇IC Insights raises 2018 IC market forecast from 8% to 15% (3月15日付け ELECTROIQ)

◇IC Insights raises 2018 chip market growth forecast (3月16日付け DIGITIMES)

【半導体製造装置業界の見方】

半導体活況の熱気が続いて、SEMIの半導体fab装置設備投資の展望も、来年含めて4年連続の伸びを見込んでいる。1990年代以降3年連続の伸びは見られていないということで、現下の力強い市場気運を映し出している。

◇SEMI predicts fab spending to grow for a 4th consecutive year-Fab equipment spending to rise 5% in 2019, SEMI says (3月13日付け New Electronics)
→SEMI発。2019年のfab装置spendingが5%増の見込み、該業界は1990年代以降3年連続の成長は見られておらず、SEMIのfiguresは4年に達する可能性を示している旨。

◇半導体装置投資5%増、来年、前工程、中国が需要牽引 (3月14日付け 日経)
→世界の半導体産業では2019年も強気の装置投資が続きそう。業界団体の国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の日本法人は13日、半導体前工程の装置投資額が2019年も前年比5%増と4年連続で成長を続けると発表、投資額は約630億ドル(約6兆7千億円)になる見込み。中国で増加する半導体メモリ拠点などが需要を牽引するとみられる旨。SEMIによれば、半導体前工程の装置投資はデータセンターやスマートフォンで利用が増える3次元NAND型フラッシュメモリが需要を牽引し、2019年には170億ドル(約1兆8千億円)に達すると予測する旨。

【Samsungの西安拠点増強】

牽引するメモリ半導体の1つ、3D NANDフラッシュ量産化で先行、競合をリードしているSamsungの中国・西安(Xian)拠点であるが、さらなる需要増大に対応、向こう3年、$7 billion投資の増強計画を発表、今月後半に建設開始としている。

◇Samsung to expand Xian-based NAND flash line-Sources: Samsung will expand its NAND flash fab line in China (3月13日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→業界筋、火曜13日発。Samsung Electronics Co.が、製品に向けたグローバル需要増大に対応、西安(Xian, China)の同社NANDフラッシュメモリ半導体ラインを拡げる計画、今月後半に建設開始、向こう3年にわたって$7 billionを投資する計画の旨。

◇Samsung Electronics says to start building new China memory chip line this month-Samsung to invest $7B in Chinese memory chip production (3月14日付け Reuters)

【仮想通貨mining半導体】

仮想通貨mining半導体について2点。まずは、該市場においてGPUへの熱が冷めてASICへの注目が高まっているとする見方である。

◇Nvidia wary of possible cryptocurrency demand drop-Sources: Cryptocurrency demand slowdown worries Nvidia (3月13日付け DIGITIMES)
→市場筋発。cryptocurrency miningで用いられるgraphics processing units(GPUs)に対する熱狂が落ちてきている様相、Nvidiaにこのような需要の鈍化を和らげさせている旨。minersはGPUs代替としてBitmainなどのベンダーからのapplication-specific integrated circuits(ASICs)に目を向けている模様、と市場watchersが特に言及の旨。

該市場の力強い需要がTSMCの売上げを支える見込みがあるとともに、先端プロセスcapacityが逼迫、Samsungへの振り替え発注も見られる状況となっている。

◇TSMC seeing tight capacity for cryptocurrency mining chips (3月15日付け DIGITIMES)
→業界筋発。仮想通貨mining用GPUsおよびASICsの力強い需要が引っ張って、2018年第一四半期のTSMCの16-nmおよび12-nmプロセス生産capacityが逼迫している旨。該仮想通貨mining半導体受注の急増が、同社の2018年前半の売上げ業績を高める見込みの旨。同社での供給逼迫から、Baikal MinerなどいくつかのASIC開発メーカーが発注をSamsung Electronicsに切り換えている旨。

【GlobalfoundriesのCEO交代】

Globalfoundriesを4年間率いたSanjay Jha氏が退任、後任のCEOにIBMのfabライン出身のThomas Caulfield氏が就任ということで、いろいろな切り口で転機にある同社について、今後の方向性に注目が集まるところがある。

◇Globalfoundries Names Caulfield CEO-Sanjay Jha out after four-year term (3月9日付け EE Times)
→Sanjay Jha氏が、Globalfoundriesのchief executiveとして4年在任で退任、New York州の同社Fab 8を担当するIBM出身のmanager、Thomas Caulfield氏が新たなCEOに就任の旨。同社にとって重要な曲がり角での変化であり、今年はfully depleted silicon-on-insulator(FD-SOI)プロセスの主要顧客をとらえる必要、そして儲かる可能性のある技術、社内開発の7-nm node立ち上げであるが、ライバルのTSMCには約6ヶ月後れている旨。

◇5 Thoughts on GF and Sanjay Jha (3月12日付け EE Times/Blog)
→週末金曜日に発表されたGlobalFoundriesのCEO交代について。概略の発表、会見なし、それも週末ということで、ぬぐい切れない憶測に取りつかれるところがある旨。

◇GlobalFoundries CEO Sanjay Jha stepping down, Thomas Caulfield to take over-GlobalFoundries promotes fab manager to CEO (3月12日付け Poughkeepsie Journal (N.Y.))
→GlobalFoundriesのsenior vice presidentでNew York州のFab 8拠点のmanagerであるThomas Caulfield氏がCEOに就き、4年間同社を率いたSanjay Jha氏を引き継ぐ旨。GlobalFoundriesは、Jha氏の任期中にIBMのmicroelectronics事業を買収、Caulfield氏は該買収前はIBMで働いていた旨。


≪グローバル雑学王−506≫

工場での諸々の作業の自動化、そしてロボット導入と、半導体の拠点でもかつて馴染んだ流れであったが、今や人工知能(AI)が導入されて諸々の仕事の処理が日々高度化されていくなか、

『AIロボットに操られるな!人工知能を怖れず使いこなすための教養』
 (大塚 寛 著:ポプラ新書 139) …2017年12月7日 第1刷発行

より、今回はAIとロボットの定義というものを2000年あたりから振り返って整理、考えていく。上記の半導体での自動化、ロボットを目や耳にしたのはそれよりずっと前の時間軸であり、原点から理解を積んでいかざるを得ないところである。データさえあればAIがやってくれるということは決してなく、我々が目的、筋道などすべてしっかり与えることがDeep Learningの要諦というイメージをまず知らされている。


第1章 誤解されるAIとロボットの定義

□ロボットは定義が曖昧
・実はロボットの定義はとても曖昧
 →日本ではFactory Automation(FA)で使われる産業ロボットのことを指す風潮が長らく
  …日本のFAロボット技術は世界トップクラス
   −安川電機、ファナック、川崎重工、不二越、エプソン
 →産業ロボット以外のロボット(サービスロボット)の成長を阻害している側面も
・2005年、経済産業省のロボット政策研究会がまとめた資料
 →ロボットをロボット足らしめる条件
  …「センサ」   目や耳や鼻や肌
   「知能・制御」 頭脳
   「駆動系」   手や足
 →この定義には以下は含まれないという問題
  →Crawler…Web上の文書や画像などを周期的に取得、自動的にデータベース化するプログラム
  →Hybrid Assistive Limb…人間の身体機能の拡張、増幅を目的として開発されたロボットスーツ
・(著者は、)次のような定義を提案
 →「人間(社会)の"目的"をテクノロジーを駆使して最短でかつ効率的に実現してくれるもの」
 →従来の「ハードにとらわれたロボット像」のままではイノベーティブなアイデアは出てきづらい

□ロボットを身近な存在にしたAIBO
・今後、私たちの生活に入り込んでくることが確実なサービスロボット(非産業ロボット)の発展の過程
 →1999年発売、コミュニケーションロボットの先駆け、ソニーのAIBO
  →当初の想定よりも、女性や高齢層、子供などに幅広く受け入れられたという印象
  →人間との距離感が初めて近くなったロボット
 →翌2000年、二足歩行ロボットのASIMO(ホンダ)
 ⇒両者に共通、「ITバブル時代」の産物

□黒船「ルンバ」のもたらしたインパクト
・2004年、アメリカから「黒船」、ロボット掃除機のルンバ(iRobot)
 →サービスロボットとしては日本でもっとも売れたロボット
  …2016年10月末の段階、国内累計販売台数が200万台突破
・目的が明確なロボットを作ろうとするアメリカ
 →他にも、窓拭きロボットやプール掃除ロボットなど

□小型ヒューマノイドがブームに
・翌2005年、「ロボカップ」の第9回世界大会が大阪で開催
 →大阪市が、ロボット特区を用意、補助金を充実させた
 →小型ヒューマノイドロボットの開発が進むことに
 →安価なサーボモーターのロボットへの転用がトレンドに
・「インターネットにつながる高性能なトイロボット」という新しい市場の誕生

□ITとロボットの融合が加速
・2014年、世界初、感情認識ロボット、Pepper
 →ソフトバンクが、フランスのアルデバランロボティクス社(Aldebaran Robotics SAS)を買収
 →ロボットにAI(っぽいもの)が載った
 →二足歩行や四足歩行をやめて、コミュニケーションに重きを置いた(Pepperは車輪で動く)
・ロボットのITへのシフトの背景に、インターネットの存在
 →つながることでユーザが享受できることが増えた
・現在の家庭用ロボット
 →スマホでは、初代iPhone、その手前のBlackberryか高性能ガラケーくらいの位置
 →今後、さまざまなロボット用のアプリが開発され、ロボット市場が拡大していくだろうという(著者の)印象

□第3次AIブームの終焉 〜「ワトソン」ブームはなんだったのか〜
・2017年秋、2016年から始まった第3次AIブームが終わろうとしている
 →そのきっかけとなってしまったIBMのDeep Learningのプラットフォーム「IBM Watson」
  →過去のデータの意味づけなどにかなりの時間を要さないと思ったような結果が伴わない

□「AI」に対する期待値が高すぎたことが原因
・AIという言葉の定義が曖昧なまま乱用されたために使い手が過度の期待を持ってしまった
・今、世間が「AI」と呼んでいるもの
 →膨大なデータからパターンを学習し、確率統計処理を行うDeep Learningが中心
・Deep Learningの欠点は、人間なしでは何もできないこと
 →データ読み込ませ
 →データの意味づけ
 →期待する結果になるように細かいチューニング作業
 →その結果から最終判断を下す
・Google子会社、Google・DeepMindが開発、囲碁を指すAI「AlphaGo」
 →囲碁のルール内に限定される話
・自己判断を下せるAI、「汎用AI」
 →AIの研究者にとっては究極のゴール
 →今の技術ではまだまだその段階は遠い

□セグウェイでもあった期待とのギャップ
・2001年12月、セグウェイ、開発コード名「ジンジャー」がアメリカで発売開始
 →世間では「ジンジャー=空を飛ぶpersonal mobility説」まで広まったほど
 →いざリリースされると、大き過ぎる期待値とのギャップ
・今や世界に行けば警備の現場や観光の現場でセグウェイを見かけることは普通の光景に
 →日本ではいまだに公道で走れない

□「AI」という言葉を一度忘れる
・某外資系製薬会社で学んだ教訓
 →目的が不明瞭なままAIという言葉を使うとブラックボックスに包むことになってコントロールしきれない
・今回の第3次AIブームの教訓を今後に活かす
 →「AI」という言葉を一度忘れるくらいの意識を持つことが有効な手段かも
・今後「AI搭載」という言葉を見た時
 →「具体的に何のソフト?」「どういう分析や処理を実行?」と考える癖を

□ディープラーニングは「領域決め」が肝心
・Deep Learningの手順
 →1 アウトプット(用途)を明確にする
  2 そのアウトプットを導き出すために必要なデータを定義し、調整する
  3 ひたすらデータを与えて学習させる
・「どの領域で、どんなデータを分析して、どんな用途で使うのか」
 →できるだけ絞り、しっかり擦り合わせること

□ディープラーニングのハードルは「データマイニング」
・既存のデータを有効な学習データに変換する作業
 …「data mining」もしくは「突合せ」
 →領域が広がるとこの突合せ作業の難易度が上がる

□ラベリングされていないデータはビッグデータではない
・データが適切にラベリングされているか、データがほかのデータに紐づいた状態かどうかが重要
 →「データさえあればAIが勝手に分析してくれる」という勘違い
・今、業界で必要だと思うのはラベリングを自動で行うソフト
 →AIを導入するためのAI

□「AI搭載ロボット」もAIブームと同じ
・最近のスマホやパソコンのOSに標準装備されたAI
 →今の技術レベルだとSiriとの本当の意味での自然な会話は成り立たない
 →「AI」がイレギュラーな回答をする時は、一字一句その回答を考えて打ち込んでいる「中の人」が存在

□中身のないロボットに意味はない
・ヒューマノイド型コミュニケーションロボットの現状
 →器だけあって、中身がない状態
 →メーカーからすれば「これはインフラであり、命を吹き込むのは皆さん」という話に
・現時点の機械学習技術やセンサ技術、駆動技術を組み合わせることで、今まで人間が行ってきたさまざまな仕事をロボットに置き換えることは十分可能
 →次章では自動化が進んでいく仕事について

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