泉谷渉の視点
「少子高齢化の世の中にあっては、とにかく大量に移民を受け入れるか、中高年者や女子労働力のフル活用を進めるしかない。しかし、もう一つの解がある。それは日本企業が世界の40%シェアを占有するロボット産業を加速することだ。作業、介護、サービスをこなすヒト型ロボットを量産し、あらゆる社会の現場に回せといいたい」。
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ソニーは先ごろ、2015年4-9月期の連結決算を発表したが、1159億円の黒字を計上し、上期としての最終黒字は実に5年ぶりのこととなった。ここで出した純利益は、パナソニック、日立、三菱電機の金額を上回るものであり、電機6社の中で最も多いのだ。見逃せないのはこの利益の多くをたたき出したのが半導体などの電子デバイス部門であり、実にここの営業利益は58%も増えた。
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プリント基板や実装をコアとする電子回路産業は、かつて日本のお家芸であった。2001年のITバブル崩壊前は圧倒的な強さを見せつけていたが、ここに来てじりじりと後退している。2011年には日本と台湾との生産額が逆転し、台湾の生産額は2兆円に近づき、日本の1兆3000億円に対し大差がつきつつある。何といってもセットメーカーの工場の海外進出が大きい。そして人件費をはじめとする固定費の差がどうにも埋められない。
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一般電子部品業界の設備投資が巨大化の様相を見せ始めた。日本企業が世界シェアの約4割を握るこの業界にあって、今や1000億円を超える水準の投資が続出しており、半導体業界並みの設備投資リード役になろうとしている。村田製作所、TDK、日本電産はいずれも売り上げ1兆円企業となっているが、2015年度は過去最高水準の投資となっており、いずれもキーワードは次世代のインテリジェント自動車のデバイスに向けたものなのだ。
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「車載向け半導体市場は、世界景気にかかわらず、この10年間じわじわと確実に伸びてきている。2014年の車載用半導体の世界市場は約3兆円となっており、センサデバイスが最も伸びている。半導体の花形と言われるフラッシュメモリの市場規模にほぼ匹敵するほどに成長している」(半導体アナリストの南川明氏)。
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いよいよというべきか。やっぱりというべきか。中国スマートフォンメーカー大手のシャオミ(小米科技)は、低価格モデルの「Redmi 2A」に初めて中国製のアプリケーションプロセッサを採用した。これまで米国や日本をはじめとする海外メーカーから半導体を調達していた中国が、ついに本格的な国産化への一歩を踏み出したのだ。
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「半導体世界チャンピオンのインテルもとうとう息切れか。2011年から4年連続で年間100億ドルを超える設備投資を実施してきたものの、2015年の設備投資は当初計画の100億ドルから87億ドルに減額すると聞いている」。この談話は、インテルに蹴散らされ敗走を重ねてきた、あるデバイスメーカー幹部のやっかみである。
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「国内の医療機器市場は現状で約2.7兆円となっているが、金額ベースでは治療機器(カテーテル、ペースメーカーなど)が53%、診断機器(内視鏡、CT、MRIなど)が26%を占めている。一般的に治療機器の成長率が高く、市場規模も大きい。医療機器の種類は非常に多く、約30万種が存在すると言われている。この医療機器分野に大きく期待できるとして成長戦略の柱の1つに据えた」(経済産業省幹部)。
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「トリリオンセンサの時代がやって来たことに対し、鈍感な人たちがまだたくさんいる。バイオ、医療、ネットワークなどに必要なセンサの数を指数関数的に計算すれば、何と45兆個のセンサが必要になるのだ。しかし、その多くは、まだ開発されていない」。
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微細加工10ns以下の半導体製造プロセスについて大きな壁が立ちふさがっていることは誰でも知っている。とりわけ露光装置については、これまでの延長線上で行かれないとされており、EUVなど様々な次世代装置の開発が進められているものの、いまだブレークスルーは見られない。微細化限界を超えなければウエアラブル端末、ヘルスケア端末、さらにはM2Mに代表される長距離かつ高周波の無線通信の時代も見えてはこないのだ。
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