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半導体製造装置が足りなくなる!!〜2020年東京五輪に装置の売上倍増

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筆者は仕事柄、地方での講演を頼まれることも数多い。最近では九州シリコンアイランドにとどまらず、東北、上越、北陸、関西、四国など多くのエリアで「まるで落語のような講演」を楽しんでいただいているようだ。先ごろは三重県下の中小企業を対象とする講演をさせていただいたが、地元企業の1社は講演後に、次のような質問とも悲鳴ともいうべき発言をされたのだ。

「半導体製造装置に関していえば、エッチングと旧世代のプロセスに関する装置関連の受注がすさまじいです。このままではとても作り切れない。かなり焦っています」。筆者はこれを聞いてかねて予測していたとおり、30年に1回の半導体の一大爆発的ブームがいよいよ到来するのだとの確信を持つに至った。そのキーワードは何といってもITではなく、IoT革命にあることは間違いない(編集室注)。

なにしろ、SEAJ(日本半導体製造装置協会)が発表した2月の日本製半導体製造装置のBBレシオは1.36であり、5カ月連続で1を上回っている。これは需要が供給よりもはるかに多いことを示しているのだ。この質問した中小企業の話を聞いていて、やはり分かることはNAND型フラッシュメモリーの3次元化が進みつつある状況の中で、エッチング装置が全く足りなくなってきていることが浮き上がってくる。三重県といえば周知のとおり、東芝四日市工場のY6棟(1.5兆円投入)が着工したばかりであり、ますますエッチャー需要は膨れ上がってくるだろう。

一方でレガシーともいうべき8インチまたは6インチの製造装置が全く足りなくなっていることも驚きだ。8インチ、6インチ、5インチラインを持つスペシャリティファンドリはひたすら受注が拡大している。しかしよく考えてみれば、IoT対応のデバイスは、実のところはローエンドが主役になるからだ。

莫大な数が出るといわれるセンサデバイスをはじめ、パワーデバイス、アナログ系など多くのチップが300mmウェーハを必要としない。ロームのパワーデバイスは絶好調で推移しているが一番出ているチップは300mmラインを必要としない130nmプロセスであるから、まさに推して知るべしなのだ。

中古装置は取り合いになっているし、部品も少ないので、今後大変なことになるだろう。一方、東京エレクトロン、SCREEN、東京精密、日立ハイテクノロジーズ、キヤノン、ニコンなどの8インチウェーハ対応の新製品ラッシュが続いている。なんと300mm以前の製造装置の新製品が多数登場しているのだ。半導体露光装置を見ても、先端のArF液浸76台に対し、前の世代のKrFは89台、i線も89台がこの1年間で出荷された。最先端はもちろん、ASMLが圧倒的に強いが、i線ではキヤノンが世界シェア57%、ニコンが同20%と善戦している。

データセンター向けのストレージとして期待の高まるNAND型フラッシュメモリーは、すさまじい額の設備投資を必要とする。それこそ、東芝四日市のY6に匹敵する投資1.5兆円規模の新工場が、サムスンやSKハイニックスを含め、この数年で数棟建設されることになるだろう。また、スマホに続き、車載IoTにおいても存在感の高まってきたCMOSイメージセンサの世界王者ソニーは、現状の生産能力が月産8万5000枚(300mmウェーハ換算)で、もはや満杯になっている。スマホ+車載をターゲットに今後新工場建設、M&Aを含む大型投資が十分に考えられるだろう。

今やデバイス工場におけるアウトソーシングは世界のスタンダードになっている。ハイレベルの業務をこなせる現場従事者を備えた生産委託カンパニーは非常に数多く、装置や材料のメンテナンスサービスも充実させている。最近はこうしたカンパニーにも取材をかけることが多いが、ほとんどのカンパニーは2020年の東京オリンピックまでには売り上げが倍増するだろうと見通している。

このことは結局のところ、ついに到来した半導体大ブームを支える装置メーカーの売り上げが、2020年までに2倍になっていく可能性も十分にあることを示唆している。製造装置が作り切れないパニックはもう目の前に迫ってきているのだ。

産業タイムズ代表取締役社長 泉谷渉


編集室注)セミコンポータルでは、ITの4大トレンドが3年前まで、「ビッグデータ、クラウド、モバイル、ソーシャル」の四つだったが、今は「クラウド」は同じだが、さらに「AI(人工知能)、IoT、5G」の4つととらえている。つまりIoTもITのメガトレンドの一つとしている。IoTをIndustry 4.0と言ったり、スマート化と言ったり、デジタルツインと言ったりしているが、全て同じIoTシステムのことを指している。また、「クルマ/自動運転」をITのトレンドに加えることもある。

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