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IoT時代の半導体はIDMに戻ってくる!!〜サイバー攻撃時代に集中制御は危険

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このたび起きた世界的なサイバー攻撃は大きな混乱を引き起こしている。なんでもその前のサイバー攻撃では、バングラディシュの金融機関から数十億円を引き出したとの報道もあるほどだ。

現在はスマートフォン、パソコンなどの端末およびクラウドしかないという集中制御コンピューティングの時代に入っている(編集室注1)。それ故にどんな国からも、どんな家からもインターネットに入り込みやすい環境となっているため、これからもサイバーテロは深刻な脅威となってくるだろう。

中国が百度(バイドゥ)やアリババ、テンセントなど独自のITサービスを使い、米国のGoogleやAmazonなどのITサービスを使わないというのもサイバー攻撃防御という点では深くうなずける。アプリケーションプロセッサや半導体メモリを内製化しようという中国の意図は、自国を守るためには軍備を整えるだけではなく、半導体からして自前で行くという姿勢が必要になるのかもしれない(編集室注2)。

さてところで、電子デバイス産業新聞調べの世界半導体市場のグラフを見ていたら、かなり重大なことに気がついた。2016年の世界市場は、4083億ドル(約44兆円)となっているが、地域別売り上げではやはり北米が圧倒的に強く45%となっている。次いで台湾17%、韓国15%と続いており、わがニッポンは残念ながら4位の10%にとどまっている。

しかし重要なことは業態別の売り上げ構成比である。驚くべきことにIDM(垂直統合)が全体の63%を占めており、ここ1〜2年の傾向としてじわじわと増え始めているのだ(編集室注3)。ファブレスは19%、ファウンドリが12%、そしてOSATは6%となっている。今から15年ほど前は多くのメディア、著名な評論家やアナリストの方々がみな声高にこう叫んでいたのだ。「世界の半導体はひたすらファブレス時代に突入していく。一気通貫で作るIDMは時代遅れのモデルだ。たぶん10年以上先にはファブレス、ファンドリーがIDMを上回ってしまうだろう」。

そうした論調が高まっていた15年前のことを思い出しながら、筆者は深く嘆息をついている次第である。筆者はそのころにあってもファブレスがIDMを上回るとは決して言っていない。ちなみに2000年、日本のファブレスベンチャーを中心にして飯塚哲也氏(ザインエレクトロニクス会長)と共に日本半導体ベンチャー協会(JASVA)を立ち上げたが、その折にも決してファブレス全盛という発言はしなかった。JASVAは現在の日本電子デバイス産業協会(NEDIA)の前身である。

なにゆえにIDMがじわじわと増え始めているのか。それは来るべきIoT時代はコンピューティング的には自律分散制御となり、カスタマイズされたチップ、自己判断できるエッジデバイス、地域や機器の多様化に応じてのフルカスタムチップが増えてくることが確実となるからだ。多品種少量生産が増えてくるわけであり、IoTという産業革命を引き起こす重要デバイスはやはり半導体であるが、ロボットひとつとってもカスタマイズチップが多くなるのは当然のことだろう。そうなればやはりIDMの出番なのだ(編集室注4)。

そしてまた、サイバー攻撃が激化すればするほど、フルカスタムチップで固めてしまえ、という考え方が増えてくる。独自仕様のデバイスと独自仕様のシステムであれば、決してまねされないし、サイバー上で入り込んでくるには大きな障壁がある(編集室注5)。つまりネットの危険を回避できるのだ。半導体のIDMが増えてくることは必然の方向であり、イギリスのEU離脱、保護主義のトランプ政権の誕生などグローバリゼーションの崩壊もまたこうした傾向と無関係ではあるまい。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉


編集室注1)JEITAのクラウドサービスの利用状況調査によると、2016年にパブリッククラウド利用は39%、プライベートクラウド利用は22%となっており、クラウドを利用するシステムは年々増えているが、クラウドしかないという状況ではまだない。
編集室注2) 中国が半導体産業を数年で4〜5兆円もの金額を使って育成するのは、半導体の輸入超過が巨大だからだ。2014年だけで1500億ドル(16兆円強)というとてつもない金額の輸入超過である。毎年これ以上のお金を払って半導体を購入することを考慮すると、1年で1兆円の投資は微々たるもの。
編集室注3)半導体メモリは、昔ながらの大量生産製品のため、設計と製造を一緒にしたIDMが有利であり、大手メモリメーカーは全てIDM構造を採る。しかし、少量多品種のシステムLSIやSoCはファブレスが多い。生産数量が少なく自社で工場を持つにはコストがかかりすぎるためだ。この1年近くはメモリの供給不足で単価の上昇によりメモリメーカーが潤っている。
編集室注4)カスタム化の技術としてFPGAやpSoCなどがあり、カスタム化=IDMという訳ではない。むしろ少量多品種を1社の工場で担うIDMではコスト的に勝負できない。IoT時代は少量多品種製品をいかに低コストで作れるかが決め手となる。
編集室注5)フルカスタムチップ、フルカスタムシステムだからといってセキュアであるとは限らない。むしろ、攻撃しても誰も注目してくれないような数量の少ない独自仕様にはハッカーは興味を示さない傾向がある。

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