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ArmがIPベンダーからファブレス設計ベンダーへ、セミコンポータルの予想通り

IPベンダートップのArmがIPだけではなく、SoC全体も設計するファブレス半導体ビジネスへと広げる(
参考資料1
)。これまでIPビジネスにこだわってきたArmは、SoCの設計にまで手を出すと顧客と競争状態になってしまうため、ファブレス半導体は扱わないと言い続けてきた。今回はその戦略を転換する。顧客と競合関係になってもSoCを設計するという、この裏に何があったのか。

Rene Haas, CEO, Arm

図1 Arm CEOのRene Haas氏 出典:Arm Everywhereから


Armはこれまで、CPUコアやGPU(グラフィックプロセッサ)コア、ISP(画像処理プロセッサ)コアなどIP単体のコアを中心とするビジネスをやってきた。Armが誕生して以来、筆者は何度もArmのCEOにIPビジネスからSoCを設計するファブレス半導体企業には行かないのか、と聞いてきた。しかし、答えはノーだった。ArmのIPを使う顧客にはファブレス半導体やIDM(設計から製造まで担う半導体メーカー)も含まれ、競合関係になるからだと答えていた。

ところが、最近は微妙な変化が現れた。それはMeta向けにSoCチップの設計を手掛けたからだ。しかもこれまでのIPコア単体から、Arm CSS(Compute SubSystem)と呼ぶ巨大なサブシステムまでIPと呼び、扱うようになった。そこで、筆者は日本の代表者にCSSのような巨大なサブシステムもIPを呼ぶのかを聞いてみた。答えはイエスだった。つまり、IPビジネスにこだわり続けていた。

しかし、Arm CEOのRene Haas氏(図1)は、プライベート会議「Arm AI Everywhere」において、ArmはCPUコアを使ったシリコンチップを初めて対外的に売り出すと発表した。AIデータセンター向けに「Arm AGI CPU」というブランド名で売り出すことになった。これはエージェントAI向けのワークロードを処理する仕事に使われることになる。この外販チップは、x86系CPUを使うコンピュータと比べて、性能が2倍になるという。

これによって、ArmはCPUコアなどのIPコアベンダーであると共に、CSSのような巨大なサブシステムIPもライセンス供与し、さらにSoCまでも設計するベンダーとなった。

実は、Armにはその布石ともいうべき出来事があった。Meta(旧Facebook)のためにSoCチップを設計したのである。Armはチップを設計する会社になったといえる。さらに、これまで半導体後工程の工場に力を入れてきたマレーシア政府とパートナーを組み、半導体IC設計拠点パークの一角に入居することを決めた。Armはまず、ほぼSoCに近いほどの巨大なIP「Arm CSS」をライセンス提供する。この拠点で、ArmはArmベースの半導体SoCを設計できる人材1万人を養成する。

Arm CSSはまるでSoCかと思えるほど、マルチコアCPUやGPU、AI向けのNPU、各種インターフェイスなどの回路を集積していたIPである。このCSSは、ロイヤルティ事業売上げの20%以上を占めるようになったとHaas CEOは述べている。これをSoCではなくIPとこだわり続ける理由をArmは、IPユーザーがCPUコアやGPUコア単体ではなく、8コア以上のマルチコアを使うSoCを設計するのはかなり難しいため、Armに設計してほしいという要求があったため、と述べている。実際、例えばGoogleはTPUの設計作業をBroadcomに依頼している。

さらにAI時代では特にAIエージェントが重要な役割を持つようになるとCPUが重要な役割を果たすようになる、とHaas CEOは述べている。その理由はこうだ。「AIで使われるエージェントはクエリー(リクエストなどの命令)として働き、一連の答えを得て戻ってくる。しかも単なるクエリーではなくワークフローのタスクとしても働き、スケジューリング機能も持つ。一言でいえばスケジュールに基づいて働くのがエージェントである。つまりCPUと同じ役割を持つ。AIアクセラレータは大量のトークンを生成する、まるでダンプカーのようなものでトークンを大量に押し出してくる。だからArmはエージェント機能を持つCPUを開発し販売する」。

そして今回のSoCの一般販売という発表につながった。こうしてみると、昨年3月にArmがIPベンダーからファブレス半導体SoC設計企業へ(参考資料2)、と書いた記事があり、手前味噌だがセミコンポータルは1年前に予想していたといえる。

参考資料
1. “Arm Expands Compute Platform to Silicon Products in Historic Company First”, Business Wire,(2026/03/24)
2. 「TSMCの1000億ドルの米国投資と、ArmのIP企業からSoC設計企業へ」、セミコンポータル、(2025/03/10)

(2026/03/27)
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