TSMC決算説明会での質疑応答実況:「HPC/AI需要続伸で供給が間に合わない」
台湾TSMCは、去る4月16日に2026年第1四半期決算説明会を開催した。そこで、売上高、利益ともに過去最高を4四半期にわたり更新し続け、絶好調であることが明らかになった。決算結果の業績については、津田編集長が週間ニュース分析(参考資料1)で取り上げているので、ここでは、世界中の著名な銀行や証券会社などの機関投資家とTSMC会長兼CEOのC.C. Wei(魏哲家)との生々しい質疑応答の模様を実況しよう。この質疑応答を通して、HPC/AIの需要急伸で同社の供給が間に合わない状況であり、グローバル規模で生産能力増強に取り組んでいる姿が浮き彫りとなった。
図1 TSMC会長兼CEOのC.C. Wei (魏哲家)氏 出典:TSMC
何がビジネスをけん引しているか?
Q:N3技術(3nmプロセス)はAI需要の強さにより供給が大幅に不足しており、2028年までに既存設備の転換と新規設備による増産が計画されていると理解している。どのようなアプリケーションがこれほど強いビジネスを牽引しているのか?このプロセスは2022年第4四半期から量産が始まっており、2027年までに一部の設備は完全に償却される予定で、高い稼働率と価格トレンドを考慮すると、このプロセスの粗利益率はさらに上昇すると見込んでいるか?
A:ビジネスをけん引しているのは、依然としてHPC(高性能コンピューティング)/AIアプリケーションである。N3の粗利益率は今年後半に当社内平均粗利益率の水準に達し、以降はそれを上回ると見込んでいる。具体的な数値は公表できないが、装置の完全原価償却後は従来のプロセス同様、粗利益率は非常に高くなる。
設備投資額をガイダンスの上限に決めた要因は何か?
Q:3ヵ月前と比べて今年の設備投資額のガイダンスを520億〜560億ドルの上限に修正された。今年の設備投資額を上限に決めるに至る確信を得た要因は何か?
A:需要、特にHPC/AIアプリケーションからの需要が非常に堅調であることだ。また、私たちは可能な限り設備の導入を加速させるために全力を尽くしている。それでも供給は間に合っておらず、需要は増加し続けているため、サプライヤと協力して加速を続けており、設備投資が予想の上限に向かっている理由である。
3nmのチップ不足はどのくらい続くのか?
Q:N3デバイスの供給が需要を満たせる時期について何か見通しはあるか?それとも今後数年間は供給が需要に追いつかず、2027年になっても依然として厳しい状況が続くのか?
A:現在のスケジュールでは、2027年には供給が追いつくと考えているが、正確なことは2027年に入った時点で明らかにする。新しいファブを建設し、立ち上げるには時間がかかる。そのため、引き続き供給が逼迫する可能性がある。だからこそ、需要に対応するために新しいN3ファブを台湾、米国(アリゾナ)、日本(熊本)の3カ所に建設する計画を発表した。
アリゾナで土地を買い増しした理由は?米国での製造コストは今後下げられるか?
Q:米国アリゾナ工場隣接地を追加購入された土地について、長期的な生産能力増強をどのように考えているか、米国ファブにおいて台湾並みのウェーハコスト削減は可能か?
A:アリゾナにもっと多くのファブを建設したいと考えており、これは米国の先進的な顧客からの複数年にわたる需要に対応するためである。私たちはスピードアップに全力で取り組んでいる。アリゾナでは既に多くの経験を積んでおり、昨年よりもはるかに自信を持って良い進展を遂げ、積極的に前進できると考えている。もちろん、これによりコスト構造も改善できると期待している。
インテルのEMIBに協力?それともCoWoSで対抗するのか?
Q:AI顧客は大きなレチクルサイズを用いたもっと大きなサイズのチップを開発したがっており、一部の顧客はEMIB(注:インテルが開発した2.5D/3Dパッケージング技術:Embedded Multi-die Interconnect Bridge)を使用することを検討している。TSMCがこのような競争に対処する戦略は何なのか、そしてより戦略的に、例えばTSMCで前工程を行ったチップをインテルがパッケージングすることはありうるか?
A:TSMCは業界最大のレチクルサイズのパッケージングを提供している。そして確かに、我々の競合他社も非常に魅力的な技術を提供していることは理解しており、我々はそれを歓迎している。そうすることで顧客はより多くの選択肢を持ち、我々は顧客とより多くのビジネスができるからである。それが我々の姿勢である。しかし、我々はどんなビジネスも取り残さないように、顧客の全ての需要に応えるために非常に努力している。我々はまた、非常に大きな3Dパッケージング技術を開発中であり、全ての顧客と協力しており、今のところ順調に進んでいる。
設備投資増額に際してEUVなどの装置をきちんと入手できるのか?
Q:長期的な設備投資計画について伺いたい。2021年に経営陣は非常に強い需要を背景に3年間の設備投資ガイダンスを1000億米ドルとした。TSMCは、それを上回る投資をしようとしているようだが、現在、製造設備の供給は非常に逼迫している。昨日、ASMLは好業績を報告した。EUVの供給逼迫が問題となりうるが、経営陣は投資家にある種の長期的な設備投資ガイダンスを提供するつもりはあるのか?
A:過去3年間で我々の総設備投資額は1010億米ドルだった。今年は既に設備投資が高水準である560億米ドルに向かっており、これは過去3年間の総額の50%以上に相当する。だから、我々はAIのメガトレンドに強い確信を持っている。今後数年間、今後3年間の設備投資は過去3年間を大幅に上回ると予想している。具体的な数字は明らかにできない。
我々は常にTSMCの文化として、サプライヤと密接に協力している。なぜなら我々は彼らをパートナーと見なしているからである。だから、我々は特にASML、Applied Materials、Lam Researchなどと引き続き協力している。今のところ、彼らのサポートには非常に満足している。
年間成長率は30%を超えるか?
Q:供給逼迫が続いているようなので、年間売上高成長率を今までの予測の 30%から上振れが可能だろうか?また、この時点で、消費者の最終需要、ひいては5GやPCからの需要に何らかの影響が出ているか?
A:メモリ価格の上昇は確かに価格に敏感な最終市場、特にPCやスマートフォン市場に影響を与えている。しかし、市場が少し軟化しているのも事実であるが、ハイエンドスマートフォンは引き続き好調で、これはTSMCにとって有利である。そして、30%以上の前成長率についてどれほど上振れするかについては、 3ヵ月後の7月に再度発表する。その時にはより正確な数字を伝えることができるだろう。
参考資料
1. 「2026年第1四半期のTSMC売上額、過去最高額をまたも更新」、セミコンポータル、(2026/04/20)


