早期退職、定年後の再就職など転職実績を着実に増やすジョブ産雇
半導体関係の仕事をやってきて、60歳の定年になったからスパッと仕事を辞めて悠々自適の世界に入った人を筆者は知らない。定年後も働く意欲を見せる人たちは本当に多い。たとえボランティアでも業界と関係を持ちたいと考える人も多い。また、他の業界も経験してみたいと思う人も多い。しかし、定年後の働き口はそう簡単には見つからない。そのような中、着実に人材の出向や移籍を成立させている公益財団法人がいる。通称、ジョブ産雇と呼ばれる法人だ。
公益財団法人産業雇用安定センター(通称、ジョブ産雇)は、新しい仕事を成立させる組織であり、その実績は着実に増やしている。2025年度の終わり(3月末)には1.5万人に達する勢いだとジョブ産雇は見ている。この10年間では新型コロナの時は、さまざまな職業でのリストラが起きたため移籍や出向が成立した人は1.3万を超えたが、この時の異常値を除くと着実に増えてきていると言えそうだ。
ジョブ産雇の特長は、リストラしなければならない企業と、人材を採用したい企業とを結ぶインターフェイスの役割である。特に半導体やITの世界は「ドッグイヤー(犬の1年)」と例えられている。犬の寿命は短く人間の1/3程度しかない。犬の1年は人間の3年間に相当するためだ。事実、半導体は電機がドライブしていた時代が終わり、ITがドライブする時代に変化した。

図1 キャリア人材バンクとしての実績は増加傾向 出典:公益財団法人産業雇用安定センター
こういった変化に対応するため企業は古い事業を再構築(リストラクチャ)し、新しい事業を始める。現在で言えばまさにAIがその典型だ。このため企業は古い事業を縮小、閉鎖し早期退職を促すことになる。2025年には、早期・希望退職者募集は1万7875人分もあったという。また新型コロナが流行した時代では、飛行できなかった航空業界では一時的に別のグループ会社や他社へ出向せざるを得なかった。さらに社員のキャリアアップへの在籍型出向や高齢者のための人材バンクとしての役割も必要になる(図1)。
ジョブ産雇は、こういった企業間のあっせんと移動の成立を中心的に事業としている。特にリストラする側もされる人も痛みを伴うものの、リストラする側は社員の新たな仕事を探すことに骨を折ることが多い。ジョブ産雇は人材の橋渡しを無料で行うのが特長である。1987年3月に国と経済団体の協力によって公的機関として設立されたからだ。
ただ、企業側の求める人材と、再就職したい人材との需給は必ずしも一致しない。例えば2024年度にエレクトロニクス業界から再就職の支援依頼を受けた実績は2939名あったが、
受け入れ企業との再就職が成立した事例は1425名だった。ほぼ半数が再就職できたことになる。逆に半数は受け入れ企業との要望が一致しなかった。

図2 出向・移籍人材の実績状況 出典:公益財団法人産業雇用安定センター
とはいえ、図2のように2016年度からの推移を見ていると、2020年度、2021年度のコロナ対応の年は別として、移籍できた人数は着実に増えている。実績が増えた理由は、企業間のインターフェイスの役割を果たす人たちのコンサルティング能力が確実に上がってきているからだ。再就職を希望する人の話を傾聴し、受け入れ企業の募集条件が適切かどうか,合うように条件を緩めることも提案する。また再就職希望者に対してもオプションを多数提示する。こういった丁寧なマッチング作業を行うことで実績を増やしている。
ジョブ産雇は全国47都道府県をカバーするため各地に事務所を構えている。東京には、西新宿に東京事務所を置いてあり、毎月再就職が成立した件数を統計処理し公表している。例えば、2025年度の1月には年度累計883人が再就職し、前年同期比で4.7%増やしている。加えて、Sankoセミナーと称するセミナー(有料)も開催しており、企業研修などに用いられている。キャリアデザインや、ハラスメント防止/メンタルヘルス、新入社員向け研修などのテーマが人気ある。
今後、早期退職者向けの仕組みとして、企業がジョブ再雇をセイフティネットとして活用する手は、企業が早く動く点で有効かもしれない。


