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GaN-on-Siのベンチャー続出、白色LED・パワーHEMTを狙いVCも活発に投資

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Siウェーハ上にGaNをエピタキシャル成長させ、GaNパワーデバイスや白色LEDを実用化させるベンチャー企業が米国を中心に続出している。このGaN-on-Si技術はもはや研究フェーズではない。実用化開発に焦点が移っている。限定ユーザー向けにサンプル出荷をしている所もある。

図1 レアアース酸化膜を利用したトランスルーセント社のGaN-on-Si技術

図1 レアアース酸化膜を利用したトランスルーセント社のGaN-on-Si技術
出典:http://www.translucentinc.com/documents/presentation_ICNS9.pdf


GaN-on-Si技術の主たる狙いはもちろん、大口径ウェーハによる白色LEDのコストダウン。シリコンなら8インチウェーハはもっともこなれた口径であり、このウェーハ上にGaN層をエピタキシャル成長しようというもの。つい数日前、世界の半導体業界を驚かせた米ブリッジラックス(Bridgelux)社は8インチSiウェーハ上にクラックのないGaN層を成長させた(参考資料1)。シリコンバレーにあるフリーモントから30km北東に位置するリバモア(Livermore)に本社を構える同社は、小規模な試作ラインを持ちエピ結晶成長だけではなくLEDも試作できるチームを持つ。ただし、量産できるほどの規模ではないため、この技術をライセンス供与することを考えている。2年以内に商品化を目指すとしている。

GaN-on-Si技術のベンチャーはブリッジラックスだけではない。シリコンバレーのパロアルトで起業したトランスルーセント(Translucent)社は4インチのGaN-on-Siウェーハを商用化したと発表した。このウェーハは、レアアース(希土類)酸化膜(REO)をバッファ層としSiウェーハの上にGaNを成長させている(図1)。

バーチャルGaN基板と同社が呼ぶこの技術は、(111)Si基板上にREO膜(Gd2O3など)、さらに(111)Si膜、REO膜、(111)Si膜と交互に形成した後、最後にGaN層を形成する。白色LED(正確には青色LEDであり、その上に黄色の蛍光塗料をコートする)やパワーFETは最後のGaNに形成する。結晶REO膜がストレスを緩和しウェーハを平たんにする緩衝材となる。

白色LEDなどの光デバイス(LED)では、SiとREO膜を交互に積んでいく超格子構造にすることでDBR(distributed Bragg reflector)ミラーを作りLEDの光を無駄なく前面に放射することが可能になる。6インチと8インチのウェーハは来年、商品化する予定だとしている。トランスルーセント社はオーストラリアの研究開発企業Silex Systems社(参考資料2)の98%子会社。

高耐圧のパワートランジスタを狙ったGaN-on-Siデバイスのベンチャーも登場している。米トランスフォーム(Transphorm)社はパワー半導体向けのGaN HEMTを開発、耐圧600V、オン抵抗310mΩと小さい製品TPH2002PSおよび180mΩのTPH2006PSを限定ユーザーにサンプル出荷している。2011年末には品質認定を獲得する予定だ。

GaN HEMTはノーマリオン型であるためこのままでは使いにくい。日本国内も含め、ノーマリオフ型のパワーGaN HEMTを開発している研究開発機関はあるが、このやり方では6V以上の電圧を加えることはできない。パワートランジスタなのにドレイン電流をさらに増やすためのゲート電圧をかけられない、という制約がある。これに対して同社はノーマリオン型のまま、MOSFETをカスコード接続することで実質的にノーマリオフ型デバイスにしてパワーエレクトロニクス企業に売り込む計画だ。

南カリフォルニアのゴレタ(Goleta)に設立した同社には、クライナーパーキンスやグーグルベンチャーズなど名高いベンチャーキャピタル(VC)5社が投資しており、その将来性が嘱望されている。

ベルギーの研究開発機関であるIMECに米グローバルファウンドリーズが参加し、GaN-on-Si技術を開発することが決まっている。IMECではSiウェーハメーカーのドイツSiltronic社、米マイクロンテクノロジー社、米ウルトラテック社、米アプライドマテリアルズ社などが参加してGaN-on-Siプロジェクトのプロセスおよび装置開発を進めている。

GaN-on-Siデバイスの商品化ではルネサスエレクトロニクスが1GHz帯のパワーアンプモジュールを6月に発売し先行した。ただし、3インチウェーハ上に作製し、しかもパワーアンプとはいえ数Aも電流を流す用途ではない。従来通りのノーマリオフ型であるため、ゲート電圧を大きく印加できないという弱点があり、大電力パワーデバイスはまだ先になりそうだ。

参考資料
1. 8インチSiウェーハ上に形成した白色LEDが160 lm/Wの輝度を達成 (2011/08/15)
2. Silex社ホームページ
3. ルネサスがSiウェーハ上に形成したGaNのRFパワーアンプをサンプル出荷 (2011/06/29)

(2011/08/17)

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