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ルネサスがSiウェーハ上に形成したGaNのRFパワーアンプをサンプル出荷

ルネサスエレクトロニクスは、Siウェーハ上にGaN薄膜を成長させたRF(高周波)パワートランジスタを開発、市場へ送りこんだ。GaNのFETは従来RFで使われてきたGaAsFETと比べ、送信出力を倍増できる(参考資料1)。

図 1GHz帯GaNパワーアンプモジュール 出典:ルネサスエレクトロニクス

図 1GHz帯GaNパワーアンプモジュール 出典:ルネサスエレクトロニクス


ルネサスが今回サンプル出荷したGaNトランジスタの基板には3インチのSiウェーハを用いた。一般に、Si基板上にGaNをエピタキシャル成長させる場合にはSiとGaNとの格子定数が違うため、その差を緩和する薄膜材料をバッファ層として導入する。ただし、このFETはMOSのように表面近くのチャンネルを利用し、HEMTのようにヘテロ接合を利用したノーマリオフデバイスである。バルクの結晶性の影響は青色ダイオードほど強く受けないため、GaN on Siの商用化が早かった。

ルネサスが今回発表する以前にも米インターナショナル・レクティファイアー(International Rectifier: IR)社も低周波パワートランジスタの応用として2010年2月に商用化を果たしている(参考資料2)。150mmのシリコンウェーハ上にGaNを形成するIRの製品は、DC-DCコンバータやPOL(point of load)電源としての応用である。このため動作周波数は5MHz程度だが、出力電流は30Aと大きい。

今回ルネサスが狙ったのは、GaNがSiよりも3倍も移動度が高いことを利用する高速・高周波用途。CATVシステムのパワーアンプ用で、VHF〜1GHz帯の動作ではこれまでのGaAsよりも送信出力は倍増したとしている。仕様による745.25MHzでの出力は56dBmV(=約8mW)。1GHzでの線形利得は19dB。使用周波数範囲は40〜1000MHz。推奨バイアス電圧はVDD=24V、回路電流は365mAという。送信出力を上げることで送信距離を伸ばすことができるうえ、高周波で線形性が良いということは歪みが少ないことにつながる。

生産拠点はルネサス関西セミコンダクタの滋賀工場であり、旧NEC関西の工場だ。1年以内に6インチ(150mm)ウェーハへと持っていく計画だ。


参考資料
1. 業界最高レベルの高出力と低歪性能を実現する、1GHz帯CATV向けGaNパワーアンプモジュールの発売について
2. IR claims first commercial GaN-based integrated power stage devices

(2011/06/29)

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