量子コンピュータのQビット状態を検出する測定器を誇示したKeysight
測定器メーカーのKeysight Technologiesが毎年恒例のKeysight Worldを開催、今年は任意波形発生器やハイエンドオシロスコープなどを駆使する量子コンピュータの測定システムQCSも示した(図1)。1000Qbitsまで対応できるシステムだと誇示した。キモはどうやらノイズの影響をいかに下げるか、のようだ。量子状態の実現は熱振動を避ける所から始まる。
図1 Keysightが揃えている量子コンピュータの量子ビット検出測定器 出典:Keysight Technology
Keysightは常に新しい技術に注目しており、5G/6GやAIコンピューティング、パワーエレクトロニクス、光ファイバシステムを使うAIデータセンターのネットワーク、自動車、RF/マイクロ波/材料などに加え、今年は量子コンピュータに注目した。量子コンピュータといっても量子アニーリング技術はもはや成熟し、ゲート方式の量子コンピューティングに関心が移っている。
毎年日本を手始めに開催されるKeysight Worldは、元々日本法人が始めたイベントであり、日本は最先端の技術を開発しているという事実から米国本社でも始めたイベントである。例えば、超電導やシリコンフォトニクス、スピントロニクス、ダイヤモンド結晶のカラーセンターを利用したセンサなど日本が誇る技術は多い。
ただし、量子力学技術は、量子コンピュータだけではなく、量子センシングと量子通信の分野も大きな応用分野だという。Keysightはこれらを測定するためのシステムQCS(Quantum Control System)を開発した。量子コンピューティング技術は、もともとNEC中央研究所にいた中村泰信氏と蔡兆伸氏が量子ビットを最初に生み出した。つまり、量子ビットの基底状態と励起状態の重ね合わせを制御し、それらの状態間の振動を観測する。量子アニーリングの研究でも東京科学大学の西森秀稔特任教授が最初に提唱した。量子コンピューティングは日本の得意な技術といえる。
ではどうやって量子状態を作るか。通常、電子がたくさん湧き出ている金属や半導体では常温だと格子振動によって電子がうろうろしているが、電子をはっきり観測するためには極低温で格子振動を抑えなければならない。極低温の世界では日本が強い超電導技術が使える。超電導のジョセフソン接合を使って超電導電流を閉じ込める回路にマイクロ波を注入し、磁束量子の向きによって1と0を同時に起こすことができる。マイクロ波を振動させることでその状態を回路の振動として外部に取り出すという。
これまで富士通と理化学研究所が試作した256Qビットの量子コンピュータから量子ビットを読みだすシステムQCSをKeysightが作り出したという。さらにKeysightは、産業技術総合研究所の量子-AI技術(G-QuAT)にもQCSを最近納入している。
Keysightの量子コンピュータにおける貢献は、量子状態にマイクロ波で振動させるときに微弱な信号を取り出すことができるようにノイズを低く抑える技術である。例えば、3Kの低温でNF(ノイズ指数)がわずか0.01dBの状態を創り出しているという。
一般に量子コンピュータの環境から微弱な信号を取り出す技術は、古くからある技術ではあるが、時代と共に検出感度を上げてきていることから、新しいイノベーションを生み出す技術の源になるかもしれない。


