onsemi、1〜90V動作可能なアナログ・ミクストシグナルIC「Treo」の戦略
インテリジェントパワーと、インテリジェントセンサを標榜するonsemiは、それらの中間に位置するアナログプラットフォームを一新、センサからパワーまでのシグナルチェーンを完成させた。自動運転車やロボット、ドローンなど自律的に動作するシステムではセンサからアクチュエータまで動かせる。来日した同社CEOのHassane El-Khoury氏がその戦略を語った。

図1 onsemi CEOのHassane El-Khoury氏
センサとパワーと言っても所詮は人間でいえば手足にすぎない。センサ情報を瞬時に手足に伝える頭脳に匹敵するCPUのようなコンピュート部分がなければ、動作につながらない。そこで、今回は65nmというアナログやミクストシグナルでも最も微細な部類に相当するICチップを設計した。前世代の180nmプロセスから大きく進化した。このTreoチップは、アナログ&ミクストシグナルプラットフォームと呼ばれているが、実は制御用のマイコンも集積されており、I/O(入出力)システムと、電源回路(PM)、センサ回路に加えて、コンピュートサブシステム(マイコン)が集積されている(図2)。
図2 onsemiが力を入れるアナログ&ミクストシグナルプラットフォームTreo 出典:onsemi
ただ、65nmと言っても成熟プロセスという印象かもしれないが、実はバイCMOSとパワートランジスタ部分も集積するDMOSプロセス、すなわちBCD(Bipolar CMOS DMOS)プロセスにおいての65nmである。パワートランジスタとしては最先端の微細プロセスとなる。しかも、Treoは、1〜90Vという幅広い電圧をカバーしているため、このまま48系自動車やロボットなど次世代48V系システムに使えるというメリットがある。
Treoを使えば、CMOSイメージセンサを通して交通の赤信号を検出すれば、ブレーキをかけるという動作が速くなる。モータドライブ用パワートランジスタを高速に動作させブレーキパッドを握るまでの時間を短縮できる。
TreoはまるでSoCのようなモジュラー方式の半導体ICであり、例えばADAS向け超音波センサの処理回路や、高集積なセンサフージョンのようなIC(図3)を構成できる。将来にわたる、センサからパワーまでをつなぐアナログコントローラとなりうる。これをアクセラレータとして使うことも可能で、ホストのドメインコントローラや中央CPUと接続したり、クルマの制御系システムの中核として利用したりすることもできそうだ。
図3 Treoのセンササブシステムをプリント回路基板上にFPGAと共に形成する 出典:onsemi
onsemiはSiCパワートランジスタにも力を入れているが、このプラットフォームを使うことで例えば48V系のクルマやドローン、ロボットなどを素早い反応で動くシステムに威力を発揮しそうだ。
このほどonsemiは、Subaruと提携、衝突防止緊急ブレーキシステム「アイサイト」の次世代版にonsemiの高解像度(3840H×2160Vの高画質)で高いダイナミックレンジHDRが150dBと高いCMOSイメージセンサHyperlux AR0823ATを採用することで合意した。イメージセンサを2個使うことでより鮮明なステレオ画像を創り出し、画像を正確に認識させることになるが、Treoと共にセンサに威力を発揮しそうだ。