MediaTek、AIエンジン付き最高級の5GハイエンドSoCをリリース
台湾のファブレス半導体MediaTekは、Qualcommを超えるような次世代5Gスマホ向けのアプリケーションプロセッサチップDimensity 9000を開発、米国時間11月18日(日本時間19日)に発表した。2019年のDimensityシリーズのプレミアム版Dimensity 1000を発表から2年、最上位機種となるこの新製品はTSMCの4nmプロセスで製造したハイエンド版である。

図1 MediaTek CEOのRick Tsai氏 出典:MediaTek記者会見からスクリーンショット
この発表は、米国で記者を集めて行われ、台湾本社がオンラインでプレゼンしたもの。日本時間7時から始まり、MediaTekのテクノロジーがいかに優れているかを示す場となった。製品発表だけではなく、同社の2021年見通しに関してもCEOであるRick Tsai氏(図1)が最新状況について語った。MediaTekはIC Insightsによると、2021年には前年比60%という極めて高い成長率を示すという。
実際、Rick Tsai氏は、売上額は2年前2019年の80億ドル(8900億円)から2倍の170億ドル(1兆9000億円)に上昇し、営業利益は5倍に増えるという見通しを示した。
テクノロジーに関しては、TSMCの4nmプロセスで製造した最初のSoCチップとなる(図2)。CPU、GPU(グラフィックスプロセッサ)に加え、APU(AIプロセッサ)、ISP(映像信号プロセッサ)、ビデオコーデック、5G モデムなどきわめて多くの機能を盛り込んだハイエンドSoCである。
図2 MediaTekの最新SoC、Dimensity 9000 出典:MediaTek記者会見からスクリーンショット
CPUには、3.05GHzで動作するArm Cortex-X2プロセッサ1コアと、2.85GHzのCortex-A710プロセッサが3コア、1.8GHzのCortex-A510プロセッサが4コア、そして8MBのL3キャッシュ と6MBのシステムレベルキャッシュを集積しており、性能優先あるは消費電力優先によってそれぞれを使い分ける(図3)。従来の8MBキャッシュと比べ合計14MBのキャッシュゆえに、性能は7%増だが、バンド幅は25%少なくて済むとしている。Specint2K6では最高性能のAndroidチップと比べ35%、性能が高いとしている。
図3 CPU、GPU、ISP、AIエンジンなどを集積したハイエンドの5G向けSoC 出典:MediaTek記者会見からスクリーンショット
GPUもArmのMali-G710コアを使って性能は、同35%向上し、電力効率は60%向上した。ここにレイトレーシング技術を導入している。従来のAndroid用SoCでは60fpsのフレームレートが最高だったが、レーシングゲームやいくつかのゲームで120fpsという最高性能を得ている。
メモリはLPDDR5xというこれまで最高のバンド幅7500 Mbpsのデータレートが得られるとしている。さまざまなゲームで性能を比較しているが、いずれも高くユーザーエクスペリエンスが重要だと述べている。
AIエンジンに関しても電力効率を改善した独自設計のDSPコアを使い、それぞれ高性能コアと低消費電力コアと使い分けている。
そのほかISPでは写真を3枚合成して明るさのダイナミックレンジを広げたりするような処理回路も集積しており、写真の美しさも強調している。
加えて画像認識処理のためにAIを利用しているが、ビデオストリームエンジンをうまく使って画像のISPとAIプロセッサの間で画像メモリを共有することで、写真を撮ってすぐに画像を認識できるようにしている。
5Gモデムでも第2世代5G規格のリリース16を採り入れており、アップリンク能力を高めていることに加え、ダウンリンクではキャリアアグリゲーションとして3キャリア周波数バンドを使い7Gbpsのデータレートも特長だとしている。これにより初期の規格であるリリース15に比べ3倍のデータレートを実現できるという。
また、Wi-Fi 6(6GHz)やBluetooth5.3にも対応している。