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CEATEC 2016、キーワードは「社会」(後編)

CEATEC(図1)で出展したローム以外の半導体メーカーは、パナソニックと富士通が合弁で設立したソシオネクストだけ。CEATEC2016の後半のレポートでは、前編(参考資料1)同様、「社会」というトレンドに向かう技術、企業を紹介する。

図1 CEATEC会場

図1 CEATEC会場


ソシオネクストは、生体情報をクラウドに上げ病院と連携するためのハードウエアとソフトウエアのIoT総合ソリューション「viewphii(ビューフィと発音)」に最近力を入れているが、CEATECでは人工知能(AI)と連携する仕組みを紹介した。東京工業大学の長谷川修准教授が開発したAIソフトウエアの「人口脳SOINN」を使う。長谷川氏はこのためにSOINN社を起業している。このAIソフトは、ソフトウエア行数が少ない独自の学習アルゴリズムにより、長時間の学習も高度のハードウエアも大量のデータも必要としないという。

viewphiiには、超音波画像処理と血圧測定、心電測定の3つのハードウエアを備え、それらのデータを抽出・収集する管理ソフトも付いている。収集したデータをSOINNで解析し健康状態の把握やリスクの予測などを行う。ソシオネクストは、カメラの手ぶれ防止補正にもこのAI技術を利用したデモを見せた。360度、4K、30fpsのカメラ画像を使い、ジャイロなどのセンサを使わずに、動き検出によりフレーム内の画像を補正することで手ぶれを補正する。

村田製作所は、道路の混雑状況や事故、さらには路面の状況などを把握するための交通管理システムを提案している(図2)。センサにはレーザ光の反射で車両の有無を検出するTOF(Time of Flight)法を採用しており、全てのレーンの車両数をカウントする。カウントしたデータをIoTモジュールからゲートウェイを経て本部の交通管理センターへインターネットを通じて送る。通信プロトコルには独自方式を使っている。


図2 交通量や事故、路面などの情報を測定するシステム 出典:村田製作所

図2 交通量や事故、路面などの情報を測定するシステム 出典:村田製作所


センサボックスは太陽光と充電用のバッテリを電源としているため、道路を掘り返す工事は必要ない。設置場所の自由度が多い上に、交通システムとしては低コストで済むという。レーザではなくカメラを使っても同様なことができるとしている。タイで現在、実証実験を行っており、来年にはビジネスに持っていきたいという。実験に採用される決め手になったのは、ソーラー電源と無線だったとしている。

TDKは、フェライトや磁性体技術をコアとする企業だが、これまでの成長のエンジンの一つだったHDD(ハードドライブ)が踊り場を迎え、HDDの磁気ヘッドに使ってきたTMR(tunneling magneto resistive)素子を角度センサとして活用する提案を行っている。TMRセンサの特長は何といっても、磁気検出感度が高く、出力電圧が1.5Vp-pと高いため、アンプが不要なことである。


図3 TMR利用のTDKの角度センサ

図3 TMR利用のTDKの角度センサ


TMR角度センサにはアナログ出力に加え、デジタル出力を持つ角度センサIC(図3)や角度誤差0.1度以下の高精度な角度センサも揃えている。例えば、角度センサICを電動パワーステアリングのモータにTMRを取り付けると、通常は±6度程度の誤差はあるが、補正回路を付けて、±0.2度に抑えられる。モータの回転を制御する角度センサとして使えば、1万5000回転/分(rpm)のブラシレスモータができるという。クルマ用には非接触でモータが回転するブラシレス方式が望まれている。

AIとIoTはセットに
半導体や部品メーカーがハードを納めていたセットメーカーも、従来のセットから社会を意識したサービスやソリューションの提供者に変わった。最近ITに対してモノづくりやリアルの世界をOT(Operation Technology)と呼ぶ企業が増えてきたが、日立製作所は、ITとOTの協創(Collaborative Creation)と呼んでいる。具体的には、鉄道交通では乗客の流れを解析して駅の混雑状況を把握し、アダプティブに出発時刻を変えるようなシステムを提案している。さらにモノづくりの現場では作業員の動きを採り込み、ミスを発見・対処するシステムなどを将来事例として挙げた。

NECはIoTのデータ分析をAIで行い、ソーシャル(社会)IoTで社会を理解し良くしておくことを謳っている。橋や道路の経年変化を予測したり、顔認識技術でセキュリティを守ったり、群衆行動解析にAIを利用したりするなどを目標に置いている。東京マラソンでのランニングポリスが使ったカメラにはNECの顔認証技術使ったという。

富士通は独自のAIシステム「Zinrai」の活用例を示した。クルマやバイク、人などを認識し、それぞれのタグを付けるというデモや、手のひらの静脈を検出・識別するデモなどを見せた。また、駐車場では1台の360度カメラで空きスペースを監視するというシステムにAIを応用した例も紹介した。従来の駐車場は、駐車スペースごとにセンサを付けているが、これではコストが高くなるため、カメラ1台で数十台分のスペースを管理しAIで識別しているため、低コストで済むとしている。

セコムもIoTセンサによって集めたビッグデータの意味を理解するため、AIを導入していく方針を述べている。例えば防災では、避難誘導の指示に、高齢者や体の不自由な人、幼児、成人などを識別し、それぞれに異なる指示を出せるようなきめ細かいサービスにAIを使う。地域社会の課題解決にAI/IoTを利用しサービスを創造すると述べている。

韓国のベンチャーStradVisionは、ADAS向けに歩行者とクルマや物体の検出・認識するためのAIソフトウエアを開発している。少ないコード(4.3kBのパラメータ、64kBのルックアップテーブル)で複数のハードウエア上で動作するという特長がある。ARM A9コアでのチップやTexas InstrumentsのTDA2xチップを使う例は入手可能で、nVidiaのTX1利用のAIは2016年10月末に入手可能となる。

新材料を世に問う
材料は応用するデバイスや機器によって要求が異なるため、展示会に出展して反応を見ることがよく行われているが、今回でもいくつか面白い特性の材料が展示されていた。

日本電気硝子は、屈折率が2.32とダイヤモンド(屈折率2.42)に近い屈折率のガラスを展示した。図4はこの高屈折率ガラスを宝石のようにブリリアンカットしたもので、キラキラと光を反射している。一般のガラスの屈折率は1.3〜1.4、クリスタルガラスでも1.55程度であり、展示したガラスの屈折率は極めて高い。毒性の強い鉛は配合していないという。


図4 高屈折率ガラスをブリリアンカットで宝石のように展示

図4 高屈折率ガラスをブリリアンカットで宝石のように展示


さらに同社は厚さが200µm以下と薄いガラスG-Leafの製品ポートフォリオを広げている。ここまで薄いと、フレキシブルに曲げることができる。200µmの薄いガラスは幅1m程度でロール-ツー-ロール方式で提供する。デジタルサイネージのディスプレイや窓、ハーフミラーなどの応用を想定している。ガラスに透明樹脂を張り付けているため、傷がつきにくく、扱いやすい。また、薄さだけなら幅は5cm程度だが、わずか4µm厚というリボン上のガラスも開発している。

日本ガイシは、液相成長で作製したGaNウェーハや、SiウェーハにLiTaO3やLiNO3のような圧電素子の材料を張り合わせたウェーハを展示した。さらに、IoT端末向けにセラミックのLTCCパッケージも展示した。これはパッケージに外部端子を設け、アンテナも内部に形成したもの。同社は、半導体、エレクトロニクスへの製品展開を進めている。

参考資料
1. CEATEC 2016、キーワードは「社会」(前編) (2016/10/07)

(2016/10/18)
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