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DeepSeekの正確な姿は見えないが新技術の可能性、チャットGPTに聞いた

1月20日に中国DeepSeekは、開発した生成AI 「R-1」はチャットGPTよりも短期間で、しかも少ないGPUで学習させたと発表、米国のAIと半導体業界が大騒ぎになった。米国のAI研究者の間でも肯定的と否定的な意見に分かれている。また、先週はSamsungとIntel、ASMLの決算報告が発表され、Samsungの成長鈍化とIntelの2024年度赤字、ASMLの受注増などが報告された。メモリではSK hynixがSamsungに迫りつつある。

図1 DeepSeekが新生成AI「R1」を発表したホームページ


図1 DeepSeekが新生成AI「R1」を発表したホームページ


1月20日に中国DeepSeek R-1の実力が発表され、少ないハードウエアリソースでしかも短期間で生成AIを作れることがわかった。チャットGPTの時はNvidiaのGPUを1万〜数千個使い、1750億パラメータの学習データを約300日間かけて学習させた。これに対してDeepSeekはGPU(H800)を2000本使い、6710億パラメータを55日間で学習させたとしている。

DeepSeekは、6710億パラメータのデータを1.5億パラメータから70億パラメータに落とした(ディスティル:蒸発)モデルも開発しており、さらに小さなモデルで十分な用途に向けた生成AI分野も狙っている。

DeepSeekの発表によって、NvidiaのGPUをそれほど使わなくても巨大なパラメータ数の生成AIを開発できるということで、Nvidiaの株価は大きく落ちた。次の日には少し上げ戻したものの、中国の生成AI技術が米国のAI優位を揺るがすこととなった。1月29日の日本経済新聞は、生成AI市場で米国の技術優位が崩れるとの見方から米Nvidiaの時価総額は27日だけで91兆円吹き飛んだ、と報じている。Nvidiaが半導体大手であることから半導体検査装置のアドバンテストが11%安、製造装置のディスコが3%安だった、と巻き込まれた格好となった。

AI技術は最近ではクラウド上にある、すでに開発されたAIの学習モデルを使えば、エッジ側で追加学習するだけでカスタマイズできるようになっている。そのような追加学習を使ったのかどうかをチャットGPTに聞いてみると、独自のアーキテクチャや学習手法を採用している可能性が高い、という答えが返ってきた。
 1. 効率的なデータ収集と前処理
 2. モデルアーキテクチャの最適化
 3. 並列処理・分散学習の強化
 4. 学習アルゴリズムの工夫
を可能性のある技術として答えていたが、少なくとも大量のGPUを使う「3. 並列処理」ではなさそうだ。「2. モデルアーキテクチャの最適化」と「4. 学習アルゴリズムの工夫」を使っている可能性がありそうだ。

ただし、DeepSeek R-1は、主に中国語と英語のデータで学習されている大規模言語モデルであるため、日本に関する記述は正確ではないようだ。

先週は、DeepSeekの米国や半導体への影響の記事が多かった半面、SamsungやIntel、ASMLからの決算発表もあった。2024年第4四半期(4Q)でのSamsungの決算では、半導体部門の売上額は30.1兆ウォン、前年同期比は39%増だが、前期比ではわずか3%増にとどまっており頭打ちの傾向がみられる。その内のメモリ部門は23兆ウォンで前年同期比46%増であるものの前期比ではわずか3%増に留まる。営業利益は半導体全体で2.9兆ウォンとなり営業利益率は9.6%、と大幅に下がった。

メモリではまだSamsungが23兆ウォンとSK hynixの20兆ウォンよりリードしているが、その差は大きく縮まっている。2022年全体と比べるとSamsungが68.5兆ウォン、SKhynixは44.6兆ウォンで、その差は23.8兆ウォンだったが、24年の差は18.3兆ウォンとなった(参考資料1)。

Intelの決算発表では、24年4Qの売上額は前年同期比7%減の143億ドル、営業利益は14億ドルとかろうじて黒字だが、2024年度全体では2.2億ドルの営業赤字になった。

ASMLの2024年全体の売上額は前年比2.6%増の282.63億ユーロ、営業利益率は31.9%と健闘している。また、受注額も中国の低迷を考慮してもさほど落ちておらず、189億ユーロを確保している。2025年度も300〜350億ユーロを見込んでいる。

参考資料
1. 「ラピダス支援は補助金から融資や民間出資へ、SK Hynixの4Q24売上額が75%増」、セミコンポータル、(2025/01/27)

(2025/02/03)

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