JEITAの電子情報産業市場は8%成長の3.99兆ドル
JEITA(電子情報技術産業協会)が12月19日に発表した世界の電子機器とソフトウエアやソリューションを合わせた電子情報産業の市場は、2025年に前年比8%増の3兆9909億ドルになる。TSMCの熊本工場が稼働し始めているが、九州に続々半導体プロセスに使う装置や材料の企業が続々集まっている。ラピダスにEUV装置が入り始め、関連企業もEUVに備えている。キオクシアは18日、東京証券取引所の東証プライム市場に上場した。
JEITAが電子情報産業の市場予測を発表したが、半導体市場は、WSTSが12月に発表した2025年の予測数字(参考資料1)と全く同じであり、電子情報産業の市場の8%成長よりも高い11%成長の数字を使っている。JEITAの発表は、電子工業(電子機器+電子部品・デバイス)とソリューションサービス(SI開発+アウトソースなどのサービス+ソフトウエア)に分け、25年にはそれぞれ6%増の2兆4130億ドル、10%増の1兆5778億ドルと予測する。半導体の11%成長は、アウトソースなどのサービスの14%成長に次ぐ高い数字であり、電子機器は4%成長しかない。
TSMCが半導体製造装置や材料などのサプライヤーの中から、優れた貢献を果たした企業を毎年表彰しているが、2024年は表彰された27社中、14社が日本企業を占めた、と19日の日本経済新聞が報じた。今年は特に先端パッケージング関連の受賞で日本企業が健闘した。この分野で受賞した6社のうち、日本企業は旭化成、キヤノン、ディスコ、ナミックス、芝浦メカトロニクスの5社が占めたという。
TSMCの熊本工場に近くに新工場を建設しているソニーセミコンダクタマニュファクチュアリングの山口宜洋社長のインタビュー記事を18日に日経地方版が掲載している。「TSMCやJASMで作ったロジック半導体を積層して、当社でCMOSイメージセンサとして製品化するという評価は順調に進んでいる」と山口社長は述べており、JASMの稼働がすでに始まっていることを示唆している。JASMの量産開始発表は年内と言われてきたので、間もなくというところだろう。
CMP(化学的機械的研磨)装置を製造している荏原製作所は19日、熊本県南関町の工場敷地内で建設を進めてきた新たな生産工場棟「K3棟」の竣工式を開いた。TSMCの熊本進出などにより九州で需要が高まると見込み、生産能力を約1.5倍に高める狙いだ。K3棟は4階建てで延べ床面積は約1万9400平方メートル、今後必要な機器を順次搬入し、2025年4月以降に本格稼働させる。
三菱ケミカルグループが、北九州市の拠点で半導体関連素材の投資を加速する、と20日の日経地方版が報じた。半導体基板となるシリコンウェーハの製造に使う合成石英粉の生産能力を、2028年9月から35%高める。製造工程に欠かせない純水づくりに必要な樹脂や、フォトレジスト原料も25〜26年に増産し、先端素材製造の一大拠点とする予定だという。
ASMLのEUV装置の一部が14日、オランダから北海道新千歳空港に到着した。いくつかのモジュールに分かれており、それぞれのモジュールをラピダスの工場内に搬入、組み立てる。前にIntelのオレゴン工場に高NAのEUV装置が搬入されたときの報道(参考資料2)と同様のようだ。18日には建設中の千歳市で記念式典を開いたと19日の日経が報じた。
EUVが今回初めて日本に導入されたことをレーザーテックがEUV露光用マスクブランクス(原版)の欠陥検査・評価装置「ABICS E320」を製品化し、受注を始めた、と18日の日刊工業新聞が報じた。EUVのユーザーは圧倒的に海外に多いが、マスクブランクスの検査にはEUVの光(もちろん目には見えない)を当てる必要があり、産業技術総合研究所でもEUVを導入する予定になっているため、国内でもEUV装置を使えるメリットがある。
図1 2nmプロセスノード以降のEUVリソグラフィ向けフォトマスク 出典:大日本印刷
大日本印刷が2nm世代以降の次世代半導体向けの高NA(Numerical Aperture)に対応したフォトマスク(図1)の基礎評価が完了し、半導体開発コンソーシアムや製造装置メーカー、材料メーカー等へ評価用フォトマスクの提供を開始した、と12日発表した。これは、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」にラピダスの再委託先として参画し、最先端ロジック半導体向けフォトマスク製造プロセスおよび保証にかかわる技術を開発してきたもの。
キオクシアが18日上場した時の初値は1440円と公開価格を15円下回ったものの、一時1689円まで上昇、終値は1601円だった、と日19日の経が報じた。上場によって大株主のベインキャピタルと東芝の株の一部を売却したが、いまだにベインが51%、東芝が32%持っている。東証プライム市場の上場維持基準では5年以内に市場で売買される流通株式比率を35%以上にする必要があるが、現状は28%にとどまる。早坂社長は「2社に3年以内の追加売却を促す」としている。
以上、今年最後の週間ニュース分析になります。来年の半導体は回復基調から成長基調に変わりますので、期待できると思います。週間ニュース分析をお読みいただきありがとうございました。来年もご愛読をよろしくお願いいたします。(編集長)
参考資料
1. 「世界の半導体市場は2025年に初の100兆円の大台に、WSTS予測」、セミコンポータル、(2024/12/04)
2. 「高NA EUVリソグラフィ装置第1号をIntelオレゴン工場に導入、組み立てた」、セミコンポータル、(2024/04/19)