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CEATEC、主役が総合電機から中堅やスタートアップに交代

半導体産業が数十年ぶりに盛り上がっているのにもかかわらず、CEATECにおける半導体産業の位置づけがはっきりしない。大手半導体メーカーは、リクルーティングのための会社説明ボードを展示しているだけに留まり、実際に数小間のブースを出していたのはAnalog Devicesだけだった。それ以外の外資系半導体としても専用ブースではなく、何かのプロジェクトの中の一つにすぎなかった。

CEATEC会場

図1 半導体企業が出展しているものの会社説明が中心


ルネサスエレクトロニクスやキオクシア、Micron Technology、東芝デバイス&ストレージ社など世界的な企業でさえ、専用ブースを構えることなく、リクルーティングブースで若い高校生や大学生を相手に会社説明に追われていた(図1)。

初日のCEATECは閑散としており朝の10時ころでさえ受付に並ぶ人はいなかった(図2)。会場内でもかつてのような賑わいがない。電機・情報の世界ではかつて日本を代表していた総合電機企業に代わって、非電機やスタートアップ、中堅の外資系企業などがテクノロジーという点で賑わいを見せていた。


CEATEC会場

図2 CEATEC受付のフロアは初日、閑散としていた


小型だが高性能なスピーカーを6個横に並べて横長の箱に納めた「OPSODIS 1」というスピーカー(図3)を鹿島建設がAnalog Devices(ADI)のブースでデモしていた。このスピーカーの前に座りデモ音源を再生すると、音はまるで後ろからも聞こえてくるように感じる。この立体音響システムは、長年コンサートホールの建設で培った技術を持つ鹿島と、立体音響を再現するアルゴリズムを考え出した英Southampton大学、そのアルゴリズムをDSP(デジタル信号プロセッサ)チップに組み込んだAnalog Devicesが作り出した。スピーカーは前方に6つあるだけで、後方には設置していないが、後ろから音が飛び出してくるように聞こえる。


OPSODIS 1

図3 立体的な音が聞こえるスピーカーバーには6個のスピーカーが納められている 出典:鹿島建設


ADIは、このスピーカーの音を立体音で表現するアルゴリズムをDSPに組み込んだドーターボードを作製し(図4)、スピーカーの横に展示した。この図のマザーボードはさまざまなインターフェイスを盛り込んだ評価用に使うボードで、コネクタにさまざまなドーターボードを差し込んでボード上のチップを評価するのに使う。


EV-SC594-SOM

図4 Analog Devicesが作製した評価用のドーターボード 大きなマザーボード(各種インターフェイスを集めたもの)に挿し込んでいるドーターボードの真ん中の白い金属パッケージがDSP「ADSP-SC594」


ドーターボードの中心にある白い金属製パッケージのチップがADIのデュアルDSP(「SHARC」)コアとArm A5 CPUを集積したSoCチップ「ADSP-SC594」である。

テクノロジーとして、Matterを使ったスマートホームのブースに参加した半導体企業も多い。ノルウェーのNordic Semiconductorは、ThreadやBLE、Wi-Fiなど異なる通信規格をソフトウエアで1本化するMatterを利用したスマートホームのデモを示した。ThreadはZigBeeのようなメッシュネットワークIEEE 802.15.4の規格の一つ。Matterを使えばBluetooth Low Energy(BLE)やWi-Fiなどの違った通信規格でもソフトウエアで操作できるようになる。今回は、Matterを使ったドアロック(図5)をNordicが紹介した。


Matterを使ったドアロック

図5 Nordic SemiconductorのMatterによるドアロックの開閉やランプの点滅をスマホで操作したデモ展示


操作盤に相当するアプリをスマートフォンに入れて、操作することで家のカギを開閉したり、そのアプリで、家のライトを点けたりすることができる。鍵穴は要らない。スマートホームは米国で着実に成長しており、24年は一軒家の42%が導入しており、25年は48%に達する見通しだという。これに対して日本はまだ3%にも満たないが、反面、これから成長する可能性がある、とNordicは見ている。

このように使われた半導体SoCチップnRF54LM20Aは、Bluetooth 6.0に対応するBluetooth LE、メッシュネットワークのThreadとZigbeeに対応しており、これらをMatterというファームウエアで操作できる。この高集積SoCは、128MHzのArm Cortex-M33をCPUコアとして2MBのNVM(不揮発性メモリ)と512KBのRAMを備えている。22nmプロセスで生産され、NVMとしてMRAMやReRAMのバージョンもあるという。

Nordicのチップを使ったBluetooth LEの例として指輪タイプのウェアラブルデバイスも展示されており、指輪とスマートフォンやイヤホンなどとの接続が可能となる。指輪のリングの内側にBLEチップやセンサ、電源チップ、AIチップなどをフレキシブル基板上に実装し、指輪の外側をソーラーパネルで電池とするような応用を日本のスタートアップのWhiteLab社が試作した(図6)。


WhiteLab社のウェアラブル電池

図6 フレキシブル基板上にチップをいくつか実装して外側を電力供給のソーラーパネルを張り付けたウェアラブルリング


チップを含むBLEモジュールはリングの幅5mmに対して4.3mm幅×5.5mm長と決め、別基板にアンテナモジュールとしている。このリングで脈拍や体温などの生体データを取得し、スマホを通して病院に送ることも可能だ。

今年は半導体がブームになっており、CEATEC 2025には大いに期待したが、残念ながら肩透かしを食らった格好になった。しかし、よく見るとADIやNordicなど新しい応用を見据えたチップが登場している。来年こそ、専用のブースを備えた半導体企業が多数現れることに期待したい。

参考資料
1. 「IoTで802.15.4もWi-Fiも互いに近づく新無線規格MatterとHalow(1)」、セミコンポータル、(2022/01/18)

(2025/10/24)
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