Bluetooth、応用拡大でじっくり着実に成長を続け、29年には77億台の出荷へ
近距離無線通信の代表的な技術であるBluetoothが無線のマウスやキーボード、ワイヤレスイヤホンなど生活に密着した無線技術を超えて、医療ヘルスケアのウェアラブルや、タグトラッキング、電子棚札(ESL)、同時ブロードキャストAuracast、デジタルキー、高精度の測距技術など様々な応用に使われ成長している。2029年には年間77億台のデバイスの出荷が見込まれている(図1)。
図1 Bluetooth搭載機器の出荷台数の推移 出典:Bluetooth SIG
かつて、近距離のBluetoothは、同じ近距離のWi-Fiと競合関係にあるという意見があった。しかし、Wi-Fiは圧倒的に高いデータレートで、独自の道を切り開く一方、Bluetoothは地道にさまざまな応用を切り開いてきた。最初は自動車と携帯電話をつなぎ、イヤホン通話やハンズフリー通話で欧州を中心に進展してきた。その後オーディオもつなげられるように規格を定めワイヤレスイヤホンへと進み、マウスやキーボードなどのコンピュータ周辺機器ともつないだ。
最近になって、上記に示したようにさまざまな応用に使われるようになり、Bluetooth SIG(Special Interest Group)はBluetoothのビジョンを変えた。「つながりの力でより良い世界へ」という新スローガンを掲げ、よりサステナブルな、よりアクセシブルな、より楽しい、より便利な、より生産的な、より健康的な、より安全な、というそれぞれの世界を目指すようになった。
例えば、よりサステナブルな世界では、スーパーマーケットや小売店で見られる商品の紙の値札をデジタル化したものでESL(Electronic Shelf Label)と呼ばれている電子棚札が使われ始めている。E-Inkのディスプレイを用いた電子値札であり紙の削減という点でサステナブルである。ここにBluetoothが使われ始めており、値段の書き換えを電子的に行う。実は従来からある応用の一つだが、従来は、独自仕様の無線規格が扱われていたため、スーパーマーケット最大のウォルマートが標準仕様に換えてほしいという要求したため、標準規格のBluetoothが採用されたという訳だ。標準規格が使われるということは、この電子棚札システムを安価に提供できるという意味である。Bluetooth SIGは2029年までには電子棚札が1億3800万台出荷されるという予想を立てている。
また、より健康的な世界では、歩数や移動距離、心拍数や飽和酸素濃度などの健康状態を常時モニターするBluetooth利用のウェアラブル機器は、2025年に3億2300万台と見込まれている。より生産性の高い世界では産業機器にBluetoothを導入して資産的な価値のある荷物に追跡タグに搭載したデバイスは25年に2億4500万台、産業用モニター機器では26年までに機器の45%にBluetoothが搭載されると予想されている。振動や温度、湿度センサを備えた設備の状態をスマホやタブレットでデータを拾い設備の状態を予知しダウンタイムを減らすことができる。
最近の新機能では、音声やオーディオを多数の人々に一斉に送信するAuracast(参考資料1)がある。その応用では、スマートフォンの音楽を二人〜三人で聴く場合でも全員ステレオで聴くことができる。また美術館では、一つの絵の説明をさまざまな国からの外国人がそれぞれの言葉で聴くことができる。さらに測距技術やロケーション技術でも自動車のキーレスエントリや盗難防止の電子タグなどもあるが、これから広がっていく。測距技術に関しては、QorvoやSTMicroelectronicsが進めるUWB(Ultra-Wide Band)はmm単位の精度を出せるが、価格が高く、cm単位の精度のBluetoothがコスト的に有利になっている。

図2 Bluetooth SIGのCMO(最高マーケティング責任者)を務めるKen Kolderup氏
ただし、さほど広がらなかった応用もある。メッシュネットワークにつなげるための規格、Bluetooth Meshは最近見かけなくなったが、中国のオフィスやアパートメントなどで根付いた、とBluetooth SIGのCMO(最高マーケティング責任者)を務めるKen Kolderup氏(図2)は筆者の質問に答えた。こういう特定の用途にとどまった例もある。
技術的には、e-スポーツのようなゲームの数msの短いレイテンシ、さらなる低消費電力、空間的な広がりオーディオを実現するサラウンド技術、データレートをこれまでの2Mbpsから8Mbpsに上げる仕様と技術に着手したと、Kolderup氏は述べている。また、高データレートに対応する高周波化として従来の2.45GHzから5GHz、6GHzにも開発している。こういった新技術、新仕様でBluetoothの応用はますます広がっていきそうだ。
参考資料
1. 「Bluetooth、電子タグや自分専用オーディオAuracastなど新応用で進化を継続」、セミコンポータル、(2023/11/10)


