Bluetooth、電子タグや自分専用オーディオAuracastなど新応用で進化を継続
Bluetoothの進化が止まらない。近距離通信というBluetoothは、普及当初のハンズフリー通話から、ワイヤレスイヤホン、無線マウスやキーボード、カメラなどに拡大、さらにGPSのような位置検出(参考資料1)、ESL(電子タグ)、ミュートでも自分だけに聞こえるオーディオブロードキャストAuracastなど、新しい応用を次々と開発してきた。
図1 Bluetooth SIG CMOのKen Kolderup氏
電子タグでは、6〜8億個のBluetoothが使われてきたと、Bluetooth SIG (Special Interest Group)CMO(最高マーケティング責任者)のKen Kolderup氏(図1)は言う。従来のRFIDなどによる電子タグは独自仕様が多いが、スーパーマーケットのような大きな店舗では標準化された規格の製品を求めるためBluetoothが好まれるという。
Auracastではどのような応用が可能か。10月のCEATECではAuracastのデモを見せた。一つは音声ミュートしているビデオやテレビの音を自分のイヤホンで聞くことができるというもの。最近の電車内のビデオや空港のバーなどでは音を消しており、映像だけを見ているが、Auracastをサービスだとそれをイヤホンで聞くことができる。これは自分のスマートフォンで音声データを受け取り、それをBluetoothイヤホンで送っている。スマホには音声を流しているテレビの番組名などの情報を示すアプリをインストールしておく必要がある。
これも空港での利用シーンだが、自分のパソコンやスマホからオーディオを聴いている最中でも空港のアナウンスを聞くことができる。イヤホンで集中して音楽を聴いているとアナウンスが聞こえないことがあるが、Auracastでそのアナウンスの音声を届けてくれる。この応用から、自分のパソコンやスマホで聞いている音楽を友達のワイヤレスイヤホンでも聴くことができるようになる。
3番目の応用は、講演会場や大きな演奏会場で、どの席にいても最適な音質と音量で聴くことができるというもの。全ての応用にはBluetoothを搭載しているスマホも必要だが、今やほとんどのスマホが搭載している。
さらに加えて、耳の不自由な人が利用している補聴器にもBluetooth搭載チップが出回っているという。補聴器をしたまま音楽を聴きたい、電話を掛けたいという要求にも応えられるようにAuracastが出てきたとKolderup氏は言う。
Bluetoothはもともと自動車内で電話を掛けられるようにヘッドセットに搭載され、さらにハンズフリーにも対応できるような音声のつながりから応用が始まった。その後、ワイヤレスマウスやキーボード、カメラ、ウェアラブルデバイス、さらにパソコンやスマホなどにも定着した。民生市場からさらにGPSでは電波の届かない室内や地下街などの歩行者の位置情報の検出や、Bluetooth MeshのようなIoTや電子タグなどの産業市場にも入り込むようになった。
今回のAuracastは、原点であったオーディオの新しい応用である。この先Bluetoothはどこに向かうのか。Kolderup氏は、さらなる高精度(±10%以内)の位置検出や、現在最大2Mbpsのデータレートから最大8Mbpsへの移行、さらには現在の2.45GHz帯から5GHzあるいは6GHz帯でのBluetooth LE(Low Energy)技術も登場してくる、と述べる(図2)。高精度の位置検出には、パルスの電波を飛ばし対象物からの反射時間と位相のズレから検出するようだ。従来の位置検出は単なる電波の強さのみで判断していたため、精度が低かった。これからは一種のToF(Time of Flight)機能を使う。
図2 Bluetoothはこれからも新しい応用が登場する 出典:Bluetooth SIG
Bluetoothを搭載したデバイスは2023年に50億個を超えると見ており、2027年には70億個に達するとBluetooth SIGは予想している。
参考資料
1. 「センチメートルの位置精度で進化を続けるBluetooth」、セミコンポータル (2020/05/13)