センチメートルの位置精度で進化を続けるBluetooth
Bluetooth通信機能を搭載したデバイス(スマートフォンやパソコンなど)は2015年から2019年まで毎年3億台のペースで出荷されてきた。2020年からは毎年4億台ずつ増えていく。このような見通しをBluetooth SIG(Special Interest Group)が発表した。すでに2018年から19年は4億台増えた(図1)。なぜ、Bluetoothがこれほどまでに成長を続けるのか。
図1 Bluetoothデバイスは2018年から年間4億台ずつ増加を予想 出典:Bluetooth SIG
2000年頃、近距離無線はBluetoothかWi-Fiか、という議論が沸き起こった。結局、どちらも生き残り、どちらも発展・成長している。それぞれの特長を生かした応用を進めてきたからだ。Wi-Fiはデータレートの高速化を目指し、Bluetoothは低消費電力データ転送に加え、オーディオやメッシュネットワークへと機能を広げてきた。
Bluetoothはさらに位置サービスの精度向上へと機能を拡張しようとしている。これは、ビル内や地下街といった衛星からの信号が入らない応用での位置検出サービスだ。しかも、この屋内・地下街の位置サービスが進化している。従来なら精度はメートル単位だったが、これがセンチメートルの位置を検出できるようになる。
元々、Bluetoothの位置サービス機能には、通信範囲内にある2台のBluetoothデバイス間の無線電波の受信強度(RSSI: Receive Signal Strength Indicator)を測定し、距離を見積もっていた。常にBluetooth電波を発射するBluetoothビーコン装置を数十メートルおきに通路の両側に設置しておき、そこにBluetoothを持った人(つまりスマホ利用者)が通りかかると、その人の位置関係を三角測量の原理で測ることができる(図2)。
図2 三角測量というより三辺の距離測量で位置を同定する 出典:Bluetooth SIG
スマホ利用者が店の近くにくるとその店の特売やサービス情報を流し、購買活動を促すとことができた。また、重要な荷物や資産にBluetoothタグを張っていれば、今どこにあるのかをおおよその範囲で追跡できた。さらに、美術館内でスマホ利用者が、飾ってある絵の近くに来たら、その絵に関する情報を送る、といったマーケティング手法にも使われてきた。
これが、センチメートルの精度になれば、利用者を追跡する精度が上がり、物流倉庫内や工場内などでの品物を探す時間を短縮できる。センチメートル単位で位置を見分けられる技術として、Bluetooth SIGでは、受信器にアレイアンテナを持つ場合(AoA: Angle of Arrival)と、送信機がアレイアンテナを持つ場合(AoD: Angle of Departure)がある(図3)。
図3 受信機にアレイアンテナを用いる場合(AoA)と発信機に持たせる場合(AoD)の仕組みがある 出典:Bluetooth SIG
AoA(図3左)では、スマホを発信機としてそのBluetooth電波を、アレイ状のアンテナが受信する。発信機が受信アンテナに向かう方向はアンテナごとに微妙に違うため、アンテナを一つずつ切り替えながら、それぞれの受信電波の位相を測定する。それぞれの位相がそれぞれの微妙な角度に相当するため、発信機までの距離精度がセンチメートルになる、という訳だ。
同様に、AoDの場合(図3右)でも、ユーザーのスマホやBluetoothデバイスを受信機として用い、アレイアンテナを発信機側に持たせる。発信機から同じパルスの電波を受信器が受け取るが、発信機の角度が位相として少しずつ異なるため、発信機の位置をセンチメートルの精度で受け取ることができる。
Bluetooth SIGでは、インターオペラビリティのあるBluetooth製品を開発するために定めたソフトウエアプロファイル仕様を公開してきた。今回の新しい方向検知機能を持たせた位置検出技術に関しても、いくつかのプロファイルを作成中で、製品開発のためのプロファイルを間もなく公開するとしている。