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摩擦下模様:台湾対中規制、米国国内強化、中国自立化、欧州対米心理

中東での衝突の事態が加わって、国際情勢の摩擦激化の様相の中、半導体関連も懸案の関税が圧し掛かる中での各国・地域それぞれの動き&反応が見られている。台湾では、中国のHuaweiおよびSMICを貿易ブラックリストに追加し、台湾企業からの半導体技術の取得を禁止している。半導体の国内製造強化を図る米国では、CHIPS法対応が見直される一方、MicronおよびTIの新たな投資計画が打ち上げられている。対して、米国の輸出規制を受ける中国は、自立化に向けた活発な動きが見られて、HuaweiのAIプロセッサの高性能、自動車メーカーの国産半導体使用など目を引いている。そして、欧州では、米国IT大手への不信感から、米国製品不買の動きも見られている。

≪それぞれ立ち塞がる障壁&課題≫

まずは、米国の輸出管理を強化する動きが影響している可能性が考えられるが、台湾において中国のHuaweiおよびSMICを貿易ブラックリストに追加する動きの関連が、以下の通りである。。

◇Taiwan bans chip exports to Huawei, SMIC - ban comes after Huawei tricked TSMC into making two million AI processors despite US restrictions―Taiwan blocks Huawei, SMIC amid chip tech rivalry―Taiwan’s International Trade Administration rubber-stamped the decision to tighten controls. (6月15日付け Tom's Hardware)
→米中ハイテク競争の激化を受け、台湾は華為技術とSMICを貿易ブロックリストに追加し、台湾企業からの半導体技術の取得を禁止した。この措置は、戦略的ハイテク商品エンティティリストの一部であり、NVIDIAなどの米国メーカー匹敵に向けた半導体製造における中国の野望に打撃を与える。これは、米国による中国ハイテク企業への一連の輸出禁止措置に続くものだ。

◇Taiwan adds Huawei, SMIC to trade blacklist amid escalating US-China tech rivalry―The move will further tighten existing loopholes and curb collaboration between Chinese firms on the entity list and Taiwanese tech leaders (6月15日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→米中間の技術競争が激化する中、台湾は中国の大手半導体メーカーである華為技術とSMICを貿易ブラックリストに追加した。
 台湾経済部が土曜14日にウェブサイトで公表した最新のリストによると、台湾国際貿易局は、華為技術、SMIC、そして両社の子会社多数をStrategic High-Tech Commodities Entity Listに含めた。

◇Taiwan blacklists Huawei and SMIC (6月16日付け Taipei Times)
→*チップ戦争:新たな規制により、AI半導体の製造に不可欠な台湾の技術、材料および装置への中国のアクセスが遮断される見込み
 *台湾は、華為技術とSMICをブラックリストに掲載した。これは、中国の最先端AIチップ技術の開発を主導する両社にとって、新たな大きな打撃となる。
  経済部国際貿易局は、いわゆるstrategic high-tech commodities entity listの最新版に、華為、SMICおよび両社の子会社数社を追加した。土曜14日にウェブサイトに掲載された最新版で明らかになった。

◇AI Chip Controls, Smuggling, and Geopolitics―“China is catching up quickly,” says top U.S. official. (6月17日付け EE Times)
→1)Washington(米国)が輸出管理を強化し、台湾がHuaweiとSMICへの規制を強め、そして密輸が蔓延して法執行が弱まる中、米中のAIチップをめぐる競争は激化しており、中国は半導体の自給自足と世界的な技術優位性獲得を急いで推進している。
 2)ワシントンが法執行を強化し、台湾が米国の規制に同調し、密輸によって大きな政策上の欠陥が露呈するなか、米中のAIチップをめぐる競争は激化し、技術エコシステムの分断と地政学的紛争の激化への懸念が高まっている。

半導体製造強化を図る米国では、トランプ政権への歩調合わせが考えられるが、MicronおよびTIから壮大な投資計画の打ち上げが行われている。

◇Micron boosts US investment plan by $30 billion amid Trump's onshoring push―Micron ups investment in US chip manufacturing to $200B (6月12日付け Reuters)
→マイクロン・テクノロジーは、米国における半導体製造への投資計画を$200 billionに増額する。この投資には、アイダホ州とニューヨーク州の新工場におけるメモリ製造への$150 billionと、研究開発への$50 billionが含まれる。この増額により、約9万人の直接・間接雇用が創出されると見込まれている。

◇Micron Technology to Invest $200 Billion in U.S. Semiconductor Manufacturing―The company will additionally invest in research and development (6月12日付け The Wall Street Journal)
→マイクロン・テクノロジーは、米国における半導体製造に$200 billion以上を投資する計画だ。同社は、この投資により約9万人の直接・間接雇用が創出されると試算している。

◇Micron’s $200 Billion Plan to Reshore U.S. Production Faces Challenges ―Micron's U.S. reshore plan faces economic, geopolitical challenges. (6月16日付け EE Times)
→EE Timesの取材に応じたアナリストによると、マイクロン社が$200 billionを投資してメモリチップ生産を米国に回帰させる計画は、課題に直面しているという。
 世界第3位のメモリメーカーである同社は先週、アイダホ州に第2メモリファブを建設し、バージニア州の工場を拡張し、そしてAIに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)向けの高度なパッケージング能力を米国に移転することで、以前の投資計画に$30 billionを追加すると発表した。マイクロン社はまた、米国に$50 billionの研究開発投資を発表し、ニューヨークに「メガファブ」を建設するという進行中の計画を改めて強調した。

◇Micron to Invest $200b in U.S. Manufacturing (6月16日付け EE Times)
→マイクロンは、米国における半導体製造と研究開発の拡大に$200 billionを投資し、重要なメモリチップの供給確保、AIの成長支援、そして9万人の雇用創出を目指しています。環境審査により、ニューヨークにおける主要なファブ計画は遅延している。

◇Texas Instruments Updates $60 Billion U.S. Fab Investment Plans (6月18日付け EE Times)
→1)テキサス・インスツルメンツ(TI)は本日、テキサス州の2拠点とユタ州の1拠点に合計$60 billionを投じ、米国内の製造拠点を建設することを盛大に発表した。同社はまた、Apple、Ford、Medtronic、NVIDIAおよびSpaceXといった顧客企業に加え、Howard Lutnick米国商務長官からも支持を得ている。
 2)テキサス・インスツルメンツは、テキサス州とユタ州の拠点を拡張し、米国の半導体工場に$60 billionを投資することを約束した。この投資は主に以前の約束を再パッケージ化したものであり、国内の半導体供給を強化するため、アップル、スペースX、そして商務省の支援を得た。

◇Texas Instruments plans to invest $60B in semiconductor fabs―Texas Instruments plans fabs in US with $60B investment (6月18日付け Manufacturing Dive)
→1)この投資により、Apple、Ford、Medtronicをはじめとする顧客が次世代の電子機器を牽引するのに向けた300mmチップの米国における製造能力が強化される。
 2)TIは、半導体製造工場に$60 billion以上を投資する予定、これは業界最大規模の投資となる。この多額の投資により、テキサス州とユタ州の拠点全体で製造能力が拡大し、300mmチップの生産能力が向上する。

◇Texas Instruments Plans to Invest More Than $60B to Manufacture Billions of Semiconductors in the U.S. (6月18日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→TIは本日、米国7カ所の半導体工場に$60 billion超を投資する計画を発表、これは、米国史上最大の半導体製造基盤への投資となる。トランプ政権と協力し、100年近くにわたる同社の伝統を礎に、TIは米国における製造能力を拡大し、自動車からスマートフォン、データセンターに至るまで、重要なイノベーションを推進する半導体の需要増大に応えていく。テキサス州とユタ州に新たに建設されるTIの大規模製造拠点は、合わせて6万人以上の米国での雇用創出に貢献する。

◇TI、米国内8.7兆円投資 (6月20日付け 日経)
→米半導体大手TIは18日、米国内で$60 billion(約8兆7000億円)以上を投資すると発表した。投資期間は示しておらず、投資先には発表済みの案件も含む。米国内での巨額投資の実績を対外的に示し、米製造業の復興を掲げるトランプ米政権と足並みをそろえる。

米中摩擦、国内製造強化そして関税など、米国におけるその他関連する動き&内容である。

◇US pushes Vietnam to decouple from Chinese tech, sources say―US pressures Vietnam to cut Chinese tech in exports (6月15日付け Yahoo/Reuters)
→事情に詳しい関係者3人によると、米国はベトナムに対し、米国に輸出される前にベトナムで組み立てられる機器における中国製技術の使用削減を関税交渉で強く求めている。
 ベトナムには、アップルやサムスンといったテクノロジー企業の大規模な製造拠点があり、これらの企業は中国製の部品に頼ることが多い。メタとグーグルも、仮想現実(VR)ヘッドセットやスマートフォンなどの製品をベトナムで製造する下請け企業を抱えている。

◇Semiconductor Tariffs Will Be Costly. A Better Way to Deal With China. (6月16日付け MSN)
→ホワイトハウスは国家安全保障上の理由から、中国向けの半導体関税を課す可能性があるが、専門家はこれが技術コストの上昇とAIの成長阻害につながる可能性があると警告している。同盟国との分野別貿易協定は、より賢明でコストの低い道筋となる。

トランプ政権におけるCHIPS法に関わる扱いである。

◇IFTLE 631: CHIPS Act Now Under U.S. Investment Accelerator (6月17日付け 3DInCites)
→2025年3月31日に発足した米国投資アクセラレーターは、投資活動の近代化とCHIPS法に基づくより強力な取引の確保を目指している。商務省が主導するこのプログラムは、アリゾナ州におけるTSMCの$100B規模の拡張計画を含む、全米で50件以上のファブプロジェクトを推進している。

◇[News] U.S. Senate Proposes 30% Chip Tax Credit Despite Trump’s CHIPS Act Repeal Push (6月17日付け TrendForce)
→米国上院の税法案草案は、半導体投資税額控除を一時的に25%から30%に引き上げ、2026年までに施設支出を促進することを提案している。トランプ大統領は、助成金が過度に手厚いことを理由に、CHIPS法の補助金の再交渉を求めている。

◇Funding Cuts Jeopardize U.S. Chip Supply Chain Study ―A federal stop-work order froze this researcher’s work finding vulnerabilities (6月18日付け IEEE Spectrum)
→トランプ政権は国防総省の予算を$580 million削減し、米国の半導体サプライチェーンのサイバーリスクに関する$3 millionの研究を含むコーネル大学の75以上のプロジェクトを中止させた。世界的なAI競争が激化する中で、国家安全保障に対する懸念が高まっている。

TSMCアリゾナ工場の近況があらわされている。

◇アリゾナTSMCの引力  米国はAI時代も先頭を走る―Deep Insight 本社コメンテーター 中山淳史 (6月18日付け 日経 電子版 10:00)
→気がつけば、第2工場が動き出し、第3工場以降の投資も表明している。米アリゾナ州で遅れが心配されていた半導体世界最大手、TSMCの工場建設計画だ。
 最近訪ねると、立地する州都フェニックスは活気に満ち、「リトルタイペイ」という名の一帯もできていた。台北とフェニックスを結ぶ直行便も2026年に就航するというから、人の往来は相当なのだろう。・・・・・

対する中国であるが、規制を受ける中の自立化推進が続けられており、まずはHuawei関連の注目である。

◇Huawei’s AI semiconductor output limited to 200,000 in 2025, US commerce official says (6月13日付け South China Morning Post)
→1)アナリストの推計によると、この数字は、NVIDIAが2024年後半の9ヶ月間で生産した中国向けH2Oチップ100万個以上には及ばない。
 2)米国当局者は、Huaweiの2025年のAIチップ出荷数は20万個未満と予測しており、NVIDIAの中国向けGPUs、100万個には遠く及ばない。制裁措置にもかかわらず、当局は中国のAIチップ開発は急速に進んでおり、過小評価すべきではないと警告している。

◇Huawei’s HarmonyOS gains traction in China with 103 million smartphones shipped (6月13日付け South China Morning Post)
→1)中国のIT大手、HuaweiのAndroid代替搭載スマートフォンとタブレットのほぼ半数が2024年に出荷された。
 2)HuaweiはHarmonyOS搭載スマートフォン1億300万台以上とタブレット2100万台以上を出荷しており、その半数近くが2024年に出荷され、これはAndroidからの転換を加速させるもの。また、HarmonyOS搭載ノートパソコンも発売し、米国による技術制裁が続く中、プラットフォームの自律性を推進している。

◇Huawei’s AI chips are nearing a tipping point (6月17日付け Taipei Times)
→ファーウェイ創業者の任正非氏は、自社の半導体対応能力を軽視し、国内市場ではシェアを伸ばしているものの、米国に一世代遅れをとっていることを認めた。この発言は、米国の輸出規制が続く中、中国がAIの自立化を長期にわたって推進していることを浮き彫りにした。

◇米制裁かわす中華AI 「一帯一路」に浸透図る ファーウェイ、ウズベクを支援 ZTEはUAEで通信実験 (6月19日付け 日経)
→中国の通信機器大手が同国の広域経済圏構想「一帯一路」の沿線国で、AIサービスで攻勢をかけ始める。米国が中国企業に包括的な規制をかけるなか、最大手の華為技術がAIの需要が高まっている国に注目。独自AIを売り物にするほか高速通信規格「5G」の整備も手掛けるなど攻めの動きを加速する。

◇How Huawei’s Ascend AI chips outperform Nvidia processors in running DeepSeek’s R1 model (6月19日付け South China Morning Post)
→1)HuaweiのAIデータセンターアーキテクチャ「CloudMatrix 384」のパフォーマンスは、同社が米国の技術統制措置を克服する上での進歩を如実に示している。
 2)HuaweiのCloudMatrix 384アーキテクチャは、DeepSeekのR1 AIモデルにおいて、Ascend 910CチップがNVIDIAのH800 GPUsを上回るパフォーマンスを発揮することを可能にしている。これは、米国の制裁にもかかわらず、中国のAIインフラの強さが成長していることを示し、中国国内の国産プロセッサに対する信頼を高めている。

中国自動車メーカーの国産半導体採用状況である。

◇小鵬、EVに自社半導体 AI運転支援能力向上 (6月17日付け 日経)
→中国のEV新興、小鵬汽車(シャオペン)は、自社で開発したAI半導体を搭載したEVを初めて発売すると発表した。半導体の演算処理能力を高めて運転支援技術を向上させる。広東省広州市でこのほど開いたEVの新型多目的スポーツ車(SUV)「G7」の発表会で明らかにした。米エヌビディア製の半導体を使ったAIによる運転支援機能をEVに搭載しているが、G7には自社開発したAI半導体「図霊(チューリング)」を採用する。

◇[News] Chinese Carmakers Reportedly Aim for 100% Domestic Chips in Vehicles by 2027 (6月18日付け TrendForce)
→中国の自動車メーカーは、2026年までに量産することを目指し、国産の車載用チップの採用を加速させている。政府の政策に後押しされ、各社は海外技術への依存を減らし、チップの自給自足を強化するために、地元のファウンドリーと提携している。

◇中国車、国産半導体100%へ BYDなど、来年にも2社量産開始 (6月18日付け 日経)
→上海汽車集団や比亜迪(BYD)など中国の大手自動車メーカーが、国産半導体を100%搭載したモデルの開発を進めていることがわかった。少なくとも2社が2026年にも量産を始める見込み。米中対立が激化するなか、中国政府は国産化の後押しを一段と強めている。

トランプ政権の技術担当ヘッドの中国への見方があらわされている。

◇China just two years behind USA on chip design, says White House tech Czar―White House official: China narrowing chip design gap with US ―Expects Huawei to start exporting AI chips soon, creating global fight for tech stack dominance (6月20日付け The Register (UK))
→トランプ政権のテクノロジー担当長官、David Sacks氏は、中国のAIと半導体製造能力は米国にわずか2年の遅れであり、米国の中国の進歩を遅らせようとする取り組みは、自国の半導体産業の足を引っ張る可能性があると述べた。
 サックス氏は大統領科学技術諮問委員会の委員長を務めており、木曜19日にブルームバーグテレビのインタビューで、中国は半導体産業への規制を回避することに「長けている」と述べた。

米国との距離感がいろいろ取り沙汰される欧州という見え方であるが、米国IT大手への不信感が発端か、以下の動きである。

◇欧州「米製品不買」スマホも IT大手の親トランプ嫌気 現地の新興OSに支持 供給網は中国依存 (6月19日付け 日経)
→欧州における米国製品の不買運動が、生活に身近な飲食料品からより高額なスマートフォン分野に広がっている。背景にあるのはトランプ米大統領にすり寄り、デジタル市場での支配力を強めようとする米IT大手への不信感だ。代替製品として欧州発の新興企業のスマホやOSが支持を集めている。

米国と中国の狭間にある台湾、そしてNvidiaという見え方もあるが、そのNvidiaについて現下の関連する動きである。

◇Nvidia could become a nearly $5 trillion company. Here’s how.―Barclays analysts raised their price target to $200, highlighting greater optimism about Blackwell and the company’s earnings potential (6月17日付け MarketWatch)
→バークレイズは、ブラックウェルのAIチップ生産が加速する中で、NVIDIAの目標株価を200ドルに引き上げ、株価が38%上昇すると予測している。アナリストは、稼働率の向上、強力なサプライチェーンサポート、そして利益率の上昇が、2025年にかけて大幅な株価上昇を牽引すると予想している。

◇China hails Nvidia expo appearance as ‘vote of confidence’ amid tensions (6月17日付け South China Morning Post)
→1)米中間のテクノロジー問題に関する摩擦が激化する中、アメリカの半導体大手NVIDIAは7月に開催される中国最大のサプライチェーンイベント、China International Supply Chain Expoに初めて参加する。
 2)NVIDIAは、米中間のテクノロジー問題に関する緊張が高まる中、7月に開催される中国国際サプライチェーン博覧会に初めて参加する。100社を超える欧米企業が出展し、半導体輸出規制が強化される中で、世界的な信頼感を示している。
 3)エヌビディアは7月に開催される中国最大のサプライチェーン見本市に初めて参加し、米中間のテクノロジー摩擦の激化にもかかわらず、継続的な関与を示唆する。100社を超える欧米企業が参加する予定で、中国のサプライチェーンに対する国際的な関心の高まりを反映している。

◇Nvidia planning new RTX 5090 'DD' variant for China - 24GB card with tweaked GPU latest attempt to comply with strict export restrictions―Reports: Nvidia plans RTX 5090DD for China―Reported specifications suggest a 25% cutback in GPU bandwidth. (6月18日付け Tom's Hardware)
→Nvidiaは、RTX 5090Dに影響を与えた米国の輸出規制に対応し、中国市場向けにRTX 5090DDを開発していると報じられている。RTX 5090DDは、RTX 5090Dの512ビットバスと32GBメモリと比較して、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)の帯域幅が削減され、384ビットメモリバスと24GBメモリを搭載すると予想されている。

非常に流動的、不安定な情勢のもとでの各国・地域の半導体市場関連に、当面目が離せないところである。


激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。

□6月16日(月)

トランプ大統領がイランを巡る対応から日程を切り上げざるを得なかった今回のG7サミットである。

◇Leaders at G-7 Summit Talk Trade With Trump―G7 leaders meet in Canada amid tariff deadline, Middle East conflict―Canada’s Carney, others hope face time with the president leads to breakthroughs (The Wall Street Journal)
→カナダで開催されるG7サミットにおいて、日本、EU、およびカナダを含む米国の同盟国は、トランプ大統領との直接交渉によって停滞している貿易交渉を打開し、関税をめぐる緊張を緩和できることを期待している。7月9日の期限が迫る中、首脳陣は鉄鋼、自動車、およびアルミニウムへの関税軽減と引き換えに、軍事費から市場アクセスに至るまで、様々な譲歩を提示している。

□6月17日(火)

木曜が休日で4日の取引、イラン情勢関連の主な値動きの今週の米国株式市場である。

◇NYダウ反発317ドル高 イラン核協議の再開模索、相場支え (日経 電子版 07:22)
→16日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、前週末比317ドル30セント(0.75%)高の4万2515ドル09セントで終えた。イスラエルとの軍事衝突を巡り、イランが事態の沈静化に動き始めたと伝わった。原油先物相場が下落し、投資家心理を支えた。ダウ平均の上げ幅は500ドルを超える場面があった。

□6月18日(水)

◇トランプ氏がNSC開催、イラン攻撃検討と報道 「無条件降伏」要求 (日経 電子版 05:18)
→複数の米主要メディアは17日、トランプ米大統領が米軍によるイランの核施設攻撃を検討していると報じた。トランプ氏は同日、自身のSNSで核兵器の保有につながるウラン濃縮活動停止に向けた「無条件降伏」を要求した。

◇NYダウ299ドル安、原油一時5%高 トランプ氏発言で中東の警戒拡大 (日経 電子版 05:37)
→17日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比299ドル(0.7%)安の4万2215ドルで終えた。原油先物価格も一時5%高と反発した。トランプ米大統領が自身のSNSでイランの最高指導者ハメネイ師をけん制する内容を投稿。イスラエルとイランの軍事衝突がさらに深刻化しかねないとして、投資家の警戒感が高まった。

□6月19日(木)

◇NYダウ小幅続落、44ドル安 FRBが追加利下げに慎重姿勢 (日経 電子版 06:47)
→18日の米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に続落し、前日比44ドル14セント(0.10%)安の4万2171ドル66セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)は18日まで開いた米連邦公開市場委員会で政策金利を据え置いた。パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢を改めて示し、主力株の一角には売りが優勢となった。中東情勢の緊迫化も市場心理の重荷となった。

□6月20日(金)

ロシアの現況について、以下の通りである。

◇ロシア戦時経済の減速鮮明 プーチン氏、国際会議で「サウス」連携へ (日経 電子版 05:00)
→ロシアのプーチン大統領は20日、開催中の「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」の本会議で演説する。プーチン氏は中国など友好国を招き、西側諸国の対抗軸をつくるため世界の「多極化」を訴える方針だ。ウクライナ侵略が長引いて戦時経済の減速が鮮明になるなか、アジアやグローバルサウス諸国との連携を強めようとしている。

□6月21日(土)

◇NYダウ小反発、35ドル高 中東情勢巡る交渉進展に期待 (日経 電子版 06:19)
→20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発し、祝日前の前営業日である18日に比べ35ドル16セント(0.08%)高の4万2206ドル82セントで終えた。イスラエルとイランの軍事衝突を巡り、外交努力による仲介が進んでいることが支えとなった。
 半面、トランプ米政権が中国に対する半導体規制を強化するとの観測から、ハイテク株の一角に売りが出て、相場の重荷となった。


≪市場実態PickUp≫

【インテル関連】

再建立て直しを図っているインテルについて、現下の取り組みを新技術&新製品とともに追っており、以下の現況である。

◇The CPU Core Wars return - Intel Nova Lake leak teases monster 52 cores, DDR5-8000, and 32 PCIe lanes rumored, would rival AMD's finest―Leak touts Intel Nova Lake CPUs with 52 cores, DDR5-8000 ―It's going to be a beast. (6月17日付け Tom's Hardware)
→昨日、Intelの次世代デスクトップ向けCore Ultra 9「Nova Lake-S」プロセッサが最大52コアを搭載することが明らかになった。これは、ゲーミングとパフォーマンスが要求されるアプリケーションの両方において、非常に強力な候補となるであろう。Intelの計画に関して高い評価を得ているブロガー、Jaykihn氏によると、Nova Lake-Sプラットフォーム全体も??非常に強力で、DDR5-8000メモリをサポートし、最大32レーンのPCIe 5.0を搭載するとのこと。

◇Intel to lay off up to 20% of Intel Foundry workers (6月17日付け TechCrunch)
→インテルは、Lip-Bu Tan CEOのコアビジネスへの再集中と業務効率化戦略に基づき、7月からインテルファウンドリー部門の従業員の15〜20%を一時解雇する。これは、昨年実施した1万5000人の一時解雇に続くものだ。

◇[News] Intel’s Rumored July Layoffs May Slash 15-20% of Factory Jobs, Oregon Hit Hardest (6月17日付け TrendForce)
→インテルは、財政難を理由に、7月から工場の従業員を最大20%削減する計画だ。世界的なリストラ策の一環として実施されるこの人員削減では、1万人以上の雇用が失われる可能性があり、オレゴン州と中国は大きな影響を受けることになる。

◇[News] Intel Names New Leaders from Cadence, Apple, and Google to Take on NVIDIA (6月19日付け TrendForce)
→インテルは6月18日、AIおよびエンジニアリング部門の強化のため、業界ベテランを起用した主要な経営陣の交代を発表した。これは、熾烈な競争と迫りくる工場の人員削減を背景に、Lip-Bu Tan CEOの再建戦略を後押しするものだ。


【Samsungおよび2-nm】

Samsungの動きに注目しようとしたら、2-nm、そしてTSMCとカバーせざるを得なくなった以下の取り上げである。Samsungの回復の戻し、そして2-nmの進捗、と引き続きの定点観測である。

◇Samsung, TSMC set stage for fierce race in 2nm chip tech (6月15日付け The Korea Herald)
→TSMCとサムスンは2025年後半に2nmチップの量産開始を計画しており、半導体競争は激化している。一方、インテルは1.8nmプロセスに賭け、ファウンドリ事業の復活を図り、ライバル企業の両社に挑もうとしている。

◇Synopsys Accelerates AI and Multi-Die Design Innovation on Advanced Samsung Foundry Processes (6月16日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→シノプシス社は本日、高度なエッジAI、HPC、およびAIアプリケーション向けの次世代設計を強化するため、Samsung Foundryとの緊密な協業を継続していることを発表した。両社の協業により、シノプシスの3DICコンパイラとSamsungの高度なパッケージング技術を活用し、両社のお客様は複雑な設計のテープアウトを迅速に実現できるようになる。

◇TSMC and Samsung ramp up 2nm chip production race for 2H25―Reports: TSMC, Samsung target ramp up for 2nm chip production (6月17日付け DigiTimes)
→韓国メディアのDigital Timesと朝鮮日報の報道によると、TSMCとサムスン電子はともに、2025年後半までに2nm半導体技術の量産開始に向けて取り組みを強化しているという。

◇Samsung diversifies client base for HBM3e to recover memory biz (6月18日付け The Korea Times)
→サムスンは、HBM3eチップの顧客としてブロードコムとAMDを確保することで、メモリ事業の回復を加速させている。ブロードコムの認定取得が完了し、AMDも供給を表明したことで、NVIDIAへの供給は逃したものの、サムスンは回復の兆しを見せている。

◇[News] Fierce Battle Over 2nm Chip Manufacturing: Significant Yield Gap (6月19日付け TrendForce)
→TSMCとサムスンは2025年後半までに2nmチップの量産化を目指して競争を繰り広げているが、TSMCは高い歩留まり、主要顧客、そして優れたパフォーマンスでリードしている。早期の成功は、サプライチェーンの成長と市場支配力を高める可能性がある。

◇TSMC 2nm yield crosses 60% threshold for HVM―TSMC hits 60% yield for 2nm manufacturing, reports say (6月20日付け Electronics Weekly (UK))
→1)TSMCの2nmプロセスにおける歩留まりが、安定した量産に必要な水準である60%を超えたと、台湾経済日報が報じている。
 2)報道によると、TSMCは2nmプロセスで60%の歩留まりを達成し、安定した量産の閾値に達したという。一方、サムスン電子は40%の歩留まりにとどまっていると報じられており、AMD、MediaTek、NVIDIAおよびQualcommといった主要顧客は、TSMCに生産能力を確保している。


【Apple関連】

否応なく目に入ってくるAI関連に対して、従来の市場牽引役、スマホの現況は捉え難さを感じるところがあるが、やはりApple関連の動きに注目ということで、いろいろな切り口、それぞれの状況が以下の通りである。

◇Almost all India iPhones sent to US (6月14日付け Taipei Times)
→1)中国の関税回避:今年最初の5か月間で、Foxconnはインドから米国へ$4.4bn相当のiPhoneを輸出した。これは昨年通年の$3.7bn相当から大幅に増加している。
 2)Appleはインドから米国へのiPhone輸出を拡大しており、Foxconnは3月以降、$3.2B相当の生産量の97%をインドから米国に輸出している。これは昨年の50%から増加しており、Appleは中国の関税引き上げを回避する取り組みを加速させている。

◇Apple looking to make ‘premium’ priced folding iPhones starting next year, analyst says (6月18日付け CNBC)
→1)*アップルは来年から折りたたみ式iPhoneを開発する計画だと、信頼できるアップルアナリストのミンチー・クオ氏が水曜18日に述べた。
  *クオ氏によると、アップルの折りたたみ式iPhoneにはサムスンディスプレイ製のディスプレイが搭載される可能性があるという。同社は来年、このデバイス向けに最大800万枚の折りたたみ式パネルを生産する予定だ。
  *しかし、ヒンジなど、その他の部品はまだ最終決定されていないとクオ氏は記している。同氏は「プレミアム価格」になると予想している。
 2)アナリストのミンチー・クオ氏によると、アップルは来年折りたたみ式iPhoneを発売する予定で、サムスンディスプレイは最大800万枚の折りたたみ式パネルを供給する見込みだ。ヒンジを含む最終的な設計は未定だ。

◇Apple「スマホ新法は詐欺リスク高める」 公取委に修正要望 (6月19日付け 日経 電子版 05:00)
→巨大テックの独占を是正する「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)」の指針案を巡り、米アップルが公正取引委員会に示したパブリックコメントの内容が明らかになった。スマホ新法は「詐欺やプライバシー侵害のリスクを高める」とし、アップル側がアプリストアを審査・管理できるように修正を求めた。

◇「iPhoneを開放せよ」グーグルなどが連帯 日本企業は及び腰 (6月20日付け 日経 電子版 05:00)
→米アップルのスマートフォン「iPhone」の機能を開放せよ――。グーグルやクアルコム、メタなど米テック大手が連帯し各地で訴えている。アップルがiPhoneを基点としてウエアラブル端末の囲い込みを強めているためだ。iPhoneの市場占有率が高い日本市場では、声をあげる日本企業は見当たらない。


【Microsoft関連】

OpenAIとの対立、そして体制再編、とAIの取り組みとともに、今後に注目するところである。

◇Microsoft、OpenAIと提携見直し協議停止も FT報道 (6月19日付け 日経 電子版 16:44)
→英紙フィナンシャル・タイムズは18日、米マイクロソフトが米オープンAIと進めている提携内容見直しの協議を停止する可能性があると報じた。オープンAIへの出資比率など条件面で折り合えない場合、2030年までの現行契約の変更を拒み、同社の組織再編を認めないことを検討している。マイクロソフトの承認を受けて25年内に再編を完了しなければ、オープンAIはソフトバンクグループなどから受ける出資額が$40 billion(約5兆8千億円)から$20 billionに半減する可能性がある。

◇Microsoft、営業部門などで数千人を追加削減へ 米報道 (6月19日付け 日経 電子版 10:23)
→米マイクロソフトが営業部門を中心に数千人の人員削減を計画していることが18日、明らかになった。5月に実施した約6000人のレイオフに追加して、7月初めをめどに実施する。業績は好調だがAIへの投資負担が増しており、人件費を抑える狙いだ。

◇OpenAI、Microsoftとの蜜月終わる 出資比率や独占販売巡り対立 (6月21日付け 日経 電子版 05:16)
→AIの旗手である米オープンAIと、同社に巨額を投じてきた米マイクロソフトの対立が表面化している。蜜月関係が一転、冷え込んだ。対話型AI「ChatGPT」で急成長したオープンAIが、2019年に結んだ提携契約を足かせと感じ始めたのが理由だ。


【長期ロードマップ】

いずれも韓国発であるが、DRAM技術、HBM開発、そしてAIプロセッサの長期展望が、以下あらわされている。

◇SK Hynix unveils 30-Year DRAM roadmap with Vertical Gate, 3D stack in bid to extend Moore's Law (6月13日付け DigiTimes)
→SK Hynixは、次世代DRAM技術の長期ロードマップを発表し、世界の半導体業界が急速な変革を遂げる中、今後30年間にわたり持続可能なイノベーションを推進することを目指すビジョンを示した。
 京都で開催された権威あるIEEE Symposium on VLSI Technology and Circuitsにおいて、SK HynixのCTOであるCha Seon-yong氏は、「Leading DRAM Innovation for a Sustainable Future(持続可能な未来に向けたDRAMイノベーションの先導)」と題した基調講演を行った。先端半導体回路およびプロセス技術分野で最も権威のある会議の一つとして認められているこのシンポジウムは、毎年米国と日本で交互に開催されており、世界中から第一線の専門家が集まる。

◇HBM development roadmap revealed: HBM8 with a 16,384-bit interface and embedded NAND in 2038―Paper outlines HBM technology road map through 2038―It will be fast, but challenging to achieve. (6月16日付け Tom's Hardware)
→韓国の国立研究機関、KAISTは、2038年までにHBM技術に起こると予想される変化の概要を発表した。該ロードマップでは、HBM4からHBM8までの範囲で、容量、帯域幅および発熱が増加することを示している。

◇Future AI processors said to consume up to 15,360 watts of power - massive power draw will demand exotic immersion and embedded cooling tech―AI GPU power consumption projected to soar by 2035―It is going to get hot. (6月17日付け Tom's Hardware)
→KAISTの研究者によると、AIプロセッサの消費電力は劇的に増加し、GPUsは2035年までに最大15,360ワットに達する可能性があると予測されている。このため、液浸冷却や埋め込み冷却といった高度な冷却方式が必要になる。NVIDIAのFeynmanシリーズやRubinシリーズといった次世代GPUsは、すでに限界に迫っており、放熱管理のためにチップへの直接液体冷却や液浸冷却を必要としている。

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