Semiconductor Portal
祉潟潟若帥ゃ

» ブログ » インサイダーズ » 長見晃の海外トピックス

モバイルが引っ張った月次・四半期・年間最高販売高、2013年締め

新年、2014年を迎えるタイミングであるが、過ぎゆく2013年、どう総括されるか。半導体業界では、米SIAからのデータで、月次・四半期販売高が史上最高を記録、年間販売高も数年来の$300 billionの壁を突破する見込みとなっている。分野別の中身的には、従来引っ張ってきたパソコンの停滞を、スマートフォン、タブレットなどモバイル機器の世界的な活況が補って余りある勢いを示したと言える状況である。過ぎゆく1年の本欄のタイトルより、2013年を次の通り振り返っている。

≪2013年の動きを振り返る≫

内容的に6つに括って示している。まずは、米SIAからの発表に基づく月ごとの世界半導体販売高である。後半になって、本年最高、6ヶ月連続増加、史上最高という表現が連なるが、モバイル機器の活況、激動がその牽引力になっているという受け止めである。地域別には、米国の力強さが謳われる一方、我が日本市場の落ち込みが際立っており、これを底に回復に向かうべき内容である。

≪半導体販売高$300 billionの道筋≫

「引き続く米国の力強い半導体販売高、出だしの2013年に弾み」 (1月)

「前年を若干ながら下回る世界半導体販売高、米国のjobs創出重点化」 (2月)

「明るい出だしの1月の世界半導体販売高、当面の経済安定性に注目」(3月)

「昨年を上回るペースの一方、日本市場の縮小が際立つ世界半導体販売高」 (4月)

「昨年を上回る第一四半期半導体販売高、一方、刷新・再構築の動き」 (5月)

「世界半導体販売高、地域別我が国の落ち込み、WSTS予測下方修正」 (6月)

「3年余りぶりの半導体販売高前月比伸び率、モバイルにかかる当面」(7月)

「6月の世界半導体販売高、Americas地域の伸び、昨年を1.5%上回る累計」 (8月)

「本年最高の月次世界半導体販売高の一方、新製品、大型買収の打ち上げ」 (9月)

「モバイル激動の渦中、6ヶ月連続のグローバル半導体販売高増加」 (10月)

「史上最高の月次・四半期販売高、big changesのランキング予想」 (11月)

「史上最高の月次そして年間販売高、$300 billion突破見込み」  (12月)

パソコンからモバイル機器への急速な移行の流れが、やはり最も特徴的となっている。関連する内容のものが次の通りである。

≪PCからモバイルへ急激な移行≫

「グローバルな激流のなか、絶え間ざる微細化、アプリ進展への融合」(2月)

「厳しい局面のパソコンおよび産業用市場、強みを前面に打開を図る動き」 (5月)

「パソコン打開の早速の手:$200 PC、低電力プロセッサ、touch技術」 (5月)

「PC時代からMobility時代へ、変わる立ち位置、迫られる変革」 (7月)

「Mobility時代への岐路、Apple、インテル、それぞれの選択」 (7月)

「変わる、初めて上回る、半分の価格、などダイナミックな市場の動き」 (8月)

モバイル機器の活況で最もプラスの煽りを受けたのが、ファウンドリー業界である。Apple対応のパイの争奪、インテルも本格参入、など以下の項目数以上に話題の尽きない動きを呈している。

≪活況のファウンドリー業界≫

「早々の激動、ファウンドリーを軸に半導体業界の大きな転換」 (1月)

「Intelの最先端プロセス技術ファウンドリー事業展開の波紋」 (3月)

「絞られた最先端プレーヤー間の"Appleパイ"を巡るせめぎ合い」 (3月)

「ファウンドリー業界での続く脈動…最先端連携、中国勢」 (3月)

「モバイル、高性能の競合の波間、TSMCとインテルの競演」 (4月)

「PCからモバイルへの急な流れ−迫られる革新:生産対応」 (4月)

「市場が変える構図、IntelがARM半導体メーカーに製造対応」 (11月)

伝統的に先を見越した技術開発が大きな魅力となっている半導体業界、2013年も様々な切り口で先行凌ぎ合いが以下の通り絶え間なく進んでいる。モバイル機器の先にある新たなキラーアプリ、市場分野の開拓が求められるところである。

≪新技術の動向≫

「ISSCC 60周年、改めて見渡す業界激動模様・今後の方向性」 (2月)

「最先端への取り組み:欧州試作ライン、アブダビR&D、FinFET FPGAs」 (6月)

「スーパーコン、目まぐるしいトップ争い、興味深い応用展開」 (6月)

「新製品および今後の方向を巡る憶測、見方…一刻を争う今;10年先」 (9月)

「アップルとインテルの新製品&技術発表、グローバル市場の期待と失望」 (9月)

「半導体製造deepノードを巡る取り組み・競合・懸念」 (10月)

「64ビット化、医療、クルマに見るプロセッサ半導体の展開」 (10月)

「3D IC市場の活況、見えてきた具体化、一層波及の動き」 (10月)

「スーパーコン用半導体&アーキテクチャー、改めて各社の取り組み」 (11月)

「MEMSそして動きなど認識技術のモバイル機器に向けた動き」 (12月)

モバイル機器が引っ張った2013年、ベンダーランキングにも大きな変化が表われ、メモリ、プレーヤー再編など目立つ内容である。我が日本市場では整理統合の激動が相次いでおり、いまだ道半ば、国全体としての業界構造が問われている状況を感じるところである。

≪グローバル業界構図≫

「一層鮮明化するグローバルなコラボおよびつばぜり合いの構図」 (4月)

「"経済成長を引っ張る半導体"を訴える米国はじめ各国・地域の論調」 (4月)

「第一四半期半導体ベンダーランキングが映し出す今後の戦略/戦術」 (5月)

「我が国半導体メーカー・拠点を巡る相次ぐ激動、改めての思い」 (8月)

「世界半導体市場の先行き、台湾発の動きの波紋」 (12月)

半導体・エレクトロニクスの視点からグローバル市場の2013年を見ると、以下の通り刻々の動きのなか、モバイル機器の活況はじめ世界的に大きな変わり目、うねりを随所に感じている。2014年も引き続き、変化への対応、特にその求められる早さが問われていく趨勢を受け止めるところである。

≪グローバル市場の現況およびうねり≫

「本格始動、市場気分の高揚を本物に、新分野・市場地域への期待」 (1月)

「早々の波紋…アップル業績、Samsung設備投資、在庫高水準」 (1月)

「世界的株高・円安、半導体在庫、対する警戒、慎重な姿勢」 (2月)

「スマホ・インパクトの陰で、高まる追い上げ、一方、危機感」 (6月)

「とうの昔そうなのに、改めての中国インパクト、DRAM市場の変遷」 (7月)

「顧客開拓に向けた新たな先端製品、サービス、支援の強化」 (7月)

「いよいよ秋の陣 新製品打ち上げ競い合い 一方で徹底した切り換え」 (8月)

「変化のうねり…時代の変わり目、世代意識、潮目の判断・対応」 (9月)

「世界のメガトレンドを受けて、変わらざるを得ない動き」 (9月)

「先端技術の自前・自立化の一方、新興経済圏へのアプローチ」 (11月)

「年の瀬の新たな局面展開、グローバル市場の活発な動き」 (12月)


≪市場実態PickUp≫

半導体・エレクトロニクス業界の台湾、韓国における人事に注目、相通じる流れも受け止めている。

【台湾、韓国での業界人事】

台湾のパソコンメーカー、AcerのCEOに、Intel、TSMCなど経た半導体出身者が就任している。

◇Acer hires semiconductor vet for CEO post-Chen had previously held sales and marketing executive posts at Taiwan Semiconductor and Intel-TSMC exec is named president, CEO of Acer (12月23日付け Computerworld/IDG News Service)
→Acer発。TSMCのvice president of worldwide sales and marketing、Jason Chen氏が、来る1月1日付けで同社president and CEOに就任、同社CEOおよび指名した後継がともに辞任後復帰していた同社founder、Stan Shih氏を引き継ぐ旨。Chen氏は以前Intelに在籍、Shih氏はAcerのchairmanで残る旨。

◇CEOにTSMC幹部、不振エイサー、再建託す (12月25日付け 日経産業)
→台湾のパソコン大手、宏碁(エイサー)が、新たな最高経営責任者(CEO)兼グローバル総裁に、半導体受託生産で最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の幹部である陳俊聖氏(52才)を迎えると発表、2014年1月1日付で就任する旨。エイサーはパソコン販売不振で業績が悪化、IT業界に精通する陳氏に再建を託す旨。

これは、1ヶ月前の次の動きを受けている。

◇Stan Shih returns as Acer chairman; JT Wang and Jim Wong step down (11月22日付け DIGITIMES)
→Acer発。同社役員会が、同社創設者、Stan Shih氏を即日付けでChairmanおよび暫定corporate presidentに選んだ旨。Shih氏は、board任期いっぱいAcerのChairmanを務める旨。Chairman and CEO、JT Wang氏およびcorporate president、Jim Wong氏は、同社の最近の業績に照らしてともに退任する旨。同社は、corporate presidencyをできるだけ早く適当な候補者に委ねるとしている旨。

次に、半導体メーカーのトップ経験者が、テレコムメーカーのchairman職に移る例が、台湾および韓国でほぼ同じタイミングで見られている。まずは、台湾である。

◇Rick Tsai reportedly resigns from TSMC (12月24日付け DIGITIMES)
→2005年から2009年までTSMCのpresident and CEOを務め、TSMC SolarおよびTSMC Solid State Lightingのchairman and CEOを務めているRick Tsai氏が、その2つのTSMC子会社から退任、Chunghwa Telecom(CHT)のchairman職に就く旨。

韓国では、以下の通り政権交代によるトップ人事とも映るが、サムスン電子社長を務めた黄昌圭(ファン・チャンギュ)氏が、韓国の通信最大手、KTに移る動きが発表されている。

◇韓国通信最大手KT会長、突然辞任政権交代ごとに繰り返す交代劇に産業界から批判も (11月8日付け JAPAN BUSINESS PRESS)
→11月3日の日曜日、韓国の通信最大手、KTの李錫采(イ・ソクチェ)会長が辞任を表明、会長任期を1年半残しての降板となる旨。KTは政府機関が母体とはいえ今は純然たる民間企業だが、大統領が交代するたびに会長の首が飛ぶという前例をまた踏襲してしまった旨。

◇新任KT会長最終候補、ファン・チャンギュ氏とは? (12月16日付け 亜洲経済)
→新任KT会長最終候補に、ファン・チャンギュ成均館(ソンギュングァン)大客員教授(前サムスン電子社長)が選ばれた旨。ファン前社長は「ファンの法則」で有名な半導体専門家、「ファンの法則」は半導体メモリの容量が毎年2倍ずつ増加することで同氏を有名にした旨。ファン前社長はサムスン電子半導体総括社長、知識経済部研究開発(R&D)戦略企画団長を務めた旨。

台湾半導体封止・検査最大手、日月光半導体製造(ASE)の廃水河川汚染問題が、高雄・K7工場の組立ラインのいくつかが閉鎖命令を受ける事態に立ち至っている。

【ASEの廃水問題】

◇ASE closes part of K7 factory due to water pollution (12月23日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、水質汚染の結果として同社K7工場(台湾南部の高雄[Kaohisung])の一部閉鎖を政府から命令された旨。

◇ASE head vows to fix pollution: mayor-ASE shuts down part of polluting plant in Taiwan (12月23日付け The Taipei Times (Taiwan))
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が金曜20日、重金属を含む未処理廃水を川に廃棄したことから、Kaohsiung Environmental Protection Bureauからの命令のもと、台湾南部の同社K7工場での組立ラインのいくつかを閉鎖の旨。同社senior executivesが、Greater Kaohsiung Mayor、Chen Chu氏と会って、この汚染問題およびASEとして如何に修復する計画であるかを話し合った旨。

年が明け、春節・旧正月を迎えるなか、そのインパクトについて今時点1つの見方である。

◇IC supplies may be jeopardized if ASE K7 plant suspends operations for over 3 months (12月24日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Manufacturing(ASE)のK7工場の操業停止は短期的にはbackend IC supply chainに影響を与えない様相ではあるが、K7工場が3ヶ月以内に操業を再開できない場合、あるいは従来のpeak seasonが早くやってくる場合には、IC供給が止まる可能性が出てくる旨。

三次元実装に向けたシリコンインターポーザ(2.5D)、貫通電極(TSV)技術の市場化に向けた具体的な動きが以下の通り見られている。TSVについては、初めて装備したメモリ半導体製品が発表されている。

【2.5D、TSVの前進】

◇2.5-D Stacks Pile Up at Event (12月24日付け EE Times)
→最近の3D Architectures for Semiconductor Integration and Packaging(3-D ASIP)(2013年12月11-13日:Hyatt Regency San Francisco Airport)にて。interposer-ベース2.5-D設計について、材料、装置および製造フローの準備が整っているという楽観論が大方の講演で述べられた旨。多くの試作品評価が進んでおり、非常に前向きなテスト結果がいくつかのプレゼンで示された旨。加えて、HynixおよびTezzaronが、through silicon vias(TSVs)を用いたメモリstacksをプレゼン、これらのデバイスをinterposer上CPUsと並べて搭載の旨。

◇SK hynix develops world's first TSV-based chip-SK Hynix crafts high-bandwidth memory chip with TSV tech (12月26日付け The Korea Herald (Seoul))
→SK hynix社が木曜26日、世界初、Through Silicon Via(TSV)技術を装備したメモリ半導体を開発、速度および効率を大きく改善している旨。該high-bandwidth半導体は、128-gigabytes/secの処理速度でGDDR5半導体より4倍高速、1.2 voltsと比較的小さいpowerで動作可能の旨。この最新製品はまた、40%消費電力が小さい旨。


≪グローバル雑学王−286≫

領土問題からこんどは歴史認識の問題へ、まずは、中国との戦争責任を巡る靖国神社と村山談話について、

『歴史認識を問い直す −−−靖国、慰安婦、領土問題』
  (東郷 和彦 著:角川oneテーマ21 A-168) …2013年5月10日 再版発行

より、祖父が東京裁判で禁錮判決を受け、靖国神社に合祀されたという著者により以下に示される考え方を反芻している。ちょうど本欄を埋めているタイミングで、安倍首相が7年ぶりのこと、現職首相としての靖国参拝を行っている。以下では、参拝の一時停止が謳われているだけに、この問題の対応の難しさを一層リアルタイムに感じるところである。


第二部 歴史認識問題 −−−再登場した諸問題

第四章 中国の場合 −−靖国神社と村山談話

□靖国参拝の一時停止を
・2012年の日中関係は、中国の一人勝ち
 →中国が獲得した最も大きな収穫の一つは、尖閣諸島問題を「歴史問題化した」こと
・日本としてどうしてももう一回注意を払わざるをえない、避けて通れないポイント
 →「靖国問題」
・(著者の)一番言いたかったこと
 →戦争で亡くなられた方々に後の世代としてどう接するか、中国に言われたからではなく、日本自身の問題として解決すべき
 →議論を尽くし、問題点が解決するまで、総理大臣は、靖国参拝にモラトリアムを、すなわち参拝の一時停止をしたらどうか
・結果的には、2006年8月15日の小泉総理の参拝以来停止されることに
 →(著者の)知る限り、この7年間なんらの見るべき動きはなかった

□戦争責任と周恩来テーゼ
・村山談話 …「侵略と植民地支配」を行ったことを認め、それに対して「反省とお詫び」
・戦争責任の問題には2つの考え方:
 →第1:赤紙1枚で連れていかれた国民と、赤紙で国民を引っ張ったリーダーとでは、明らかに責任が違うとする考え方
 →第2:時の勢いを支持した国全体としての責任を探究する考え方
  …日本をして戦争を選ばしめていったのは、時の勢いといったもの
・私(著者)自身の考えは後者に傾いてくる。以下の私(著者)個人の事情とは切り離して考えている。
 →私(著者)の祖父は、東京裁判でA級戦犯として禁錮20年の判決、服役中に病死、1978年靖国神社に合祀
・結局のところ、中国の考え方:
 →1)靖国神社には、日中人民の共通の敵である日本軍国主義者の代表たるA級戦犯が祀られている
  2)靖国神社に参拝するのは、A級戦犯に参拝することになる
  3)だから、靖国神社の参拝は許せない
・今の時点、とにもかくにも、村山談話を大事にし、その上に何を付け加えることができるかを考えることが唯一最善の策では

□村山談話の重要性
・冷戦の終了により世界の各国がみずからの新しい方向性を見い出そうとした1990年代の前半
 →左右の鬩ぎ合いが、ようやく終結
 →1995年の村山談話
・村山談話が成立した要因の1つ
 →当時社会党の村山富市氏が首相であったという部分も
 →自民党内で談話のとりまとめの重しとなったのは、橋本龍太郎通産大臣
・村山談話は、その後の首相全員が継承
・東京裁判の「勝者の正義」以来、日本人が自ら総合的に戦争責任と歴史認識について結論を出したのは、村山談話しかないと考えざるを得ない

□ワイツゼッカー演説とヤスパース
・1985年、当時の西ドイツ大統領、ワイツゼッカー氏が国会で演説
 →戦争・罪・責任の問題について最も明確な形でドイツとしての見解を表明
・村山談話の表現は、包括的・直観的・無前提
 →このように謝罪した例は、近代国家が国際関係における主要主体になってから今日に至るまで、例をみない
・対するワイツゼッカー演説は、個別的・分析的・条件付き
 →誰が悪を犯したかという問いには、特定の個人であり、当時の国家でも民族全体でもなかった
・敗戦直後のドイツで、ドイツの戦争に対して正面から思索した最初のドイツ人 …カール・ヤスパース
 →ドイツの罪を四つの概念に区分
  1.刑法上の罪  …審判者は、裁判所
  2.政治上の罪  …審判者は、戦勝国の権力と意志
  3.道徳上の罪  …審判者は、自己の良心
  4.形而上的な罪 …審判者は、神だけ
 →一人一人のドイツ人に対し、良心と神に向き合うことにより自己の尊厳を取り戻せというメッセージ

□鈴木大拙の示す「日本的霊性」
・鈴木大拙 …明治から昭和前半にかけて活躍した仏教学者。特に禅について研究、海外に広く知らしめた。
・ヤスパースと鈴木大拙との対比
 →第1:ヤスパースがナチズムの犯した罪を議論の前提に置いているのに 対し、大拙は軍国日本を導いた国家神道に向けて仮借のない批判を加えている
  第2:ヤスパースが西欧哲学の分析的思惟によって形而上学にいきつき、神を審判者として人間の精神性を根拠づけることにより、ドイツ人の誇りを明らかにしようとした。
   鈴木大拙は、日本人が世界に誇るべき日本の思想を顕示することにより、崩れ落ちる日本人の精神的誇りを堅持しようとした。
  第3:ワイツゼッカーは、いわばヤスパースが積み残した政治的責任についての道をひらき、ともに、形而上学と道徳の内面化を志向することによる連関の道筋がうかがわれる。
   鈴木大拙は、根底における、軍国主義日本とそれを駆り立てた思想への批判という点で、村山談話との共通性が感知される。もう一つ、分析的な思惟によらずして、包括的・直観的・無前提な形で真理を把握せんとする方向性がある。
・村山談話には、「日本」とは何を指すのかという定義もないし、「侵略」の定義も、「植民地支配」の定義もしていない。にもかかわらず、「心からのお詫び」をしている
・しかしながら、村山談話は、発出後20年近くが経ったところで、新しい力を得つつあると考えることはできないか

□村田良平氏の批判
・村山談話は、世界で、中国で、韓国で、台湾で、アメリカで、どのように評価されているのか
 →侵略と植民地主義を比較してみれば、植民地主義のほうが評価
 →政治的観点から責任をとっているという(著者からの)説明に対し、もっと具体的な行動が伴うべきではないか、という点が一番の批判
・最近最も注目、元外務次官・駐米大使、村田良平氏の主張
 →1つとして、日本の戦争と歴史に対する国家としてのけじめは、戦後締結した諸条約において決着ずみであり、それ以上に戻るべき筋はない。
 など
→(著者には、)説得力のある点もあるが、現下の国際社会の全体像を踏まえた議論に至っていないという印象
・村山談話によって明らかになってきていることをもう1回考え、その立場を強めていくことにこそ、これからの日本が考えるべき方向性、考えを深めていく指針があるのではないだろうか
・(著者は、)「未来志向」ということを日本側から言い出すことは、禁句だと考える
 →「過去を忘れましょう」と言っているのに等しく聞こえる
 →歴史認識については、「未来志向の未来」とは、中国や韓国が日本に向けて送るべき言葉

ご意見・ご感想