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半導体でインドの存在感が一気に高まる!〜タタ、タワー大型工場建設ラッシュ

世界最大の人口を誇るインドは中国を抜いて、14億4170万人に達している。人口大国であるばかりでなく、ここにきては中国をキャッチアップする勢いで半導体工場建設ラッシュの波が巻き起こってきたのだ。

インドのタタエレクトロニクスと台湾のPSMCは、インドでの半導体工場建設をアナウンスした。国内初となる300mmウェーハ工場となるものであり、月産能力は5万枚、投資額は1兆6500億円と巨大なのである。PSMCは宮城県仙台エリアに日本工場建設を考えていたが、さまざまな事情によりこれを白紙撤回している。日本国政府は3000億円近い補助金を用意していたが、「10年間操業する約束はできない」というあり得ない対応に対し、日本政府関係者は烈火のごとく怒ったことは間違いないだろう。

それはともかく、シリコンファンドリー大手であるPSMCはインドのムンバイ近郊のドレラに工場を建設し、このエリアで2万人を超えるエンジニアの雇用が創出される見込みとなっている。インドのモディ首相は、世界における半導体業界の地図を塗り替えてみせるという強い意欲を持ち、半導体立国インドを目指している。この裏には、中国に重要部品を依存することは絶対にいやだという思いがあるのだ。

一方、イスラエルのTower SemiconductorとAdani Groupは、インド西部のマハラーシュトラの半導体プロジェクトに100億ドル(1兆5000億円)を投じて、これまた新工場を建設するのだ。さらに加えて、米国Micron Technologyはインドのグジャラートに半導体の組み立ておよびテスト工場を建設しており、近く立ち上がる予定である。インド国内市場向けのDRAMやNANDフラッシュメモリのパッケージングとテストを行う予定になっているのだ。

この他にもさまざまな計画が出てきている。GlobalFoundriesは、インドのTagoreが自動車やIoT、AIデータセンター向けに開発したGaNのIPカンパニーを買収し、さらなるインドへの投資を加速する考えだ。そしてまた、日本のルネサスエレクトロニクスもインドにおける半導体の後工程工場建設を計画しており、アメリカのAnalog DevicesもTata Groupとの戦略的提携を結んでいる。

インド政府は少なくとも半導体やAI分野に3兆円以上の支援金/補助金を用意すると言われており、これをさらに積み増す方向にもある。こうした動きの一方で中国に半導体新工場を作ろうという計画はまったくもって鳴りを潜めている。「中国からインドへ」という大きな時代の流れのうねりが訪れていることは確実であろう。

産業タイムズ社 取締役会長/特別編集委員 泉谷 渉
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