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米国に新19の半導体ファブ、製造シェア12%から27%に拡大へ〜対中強化策

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「足元の車載向け半導体不足が目立ってきた。何しろ、データセンターや5Gスマホなどへの供給が優先されるのだ。世界中すべての自動車メーカーの完全回復は2年先になってしまうだろう。タマ(半導体チップ)がなければどうにもならない!!」

不安顔をしてこう語るのは、半導体業界の著名アナリスト、南川明氏である。南川氏によれば、車載向けのファンドリーは40〜65nmプロセスの300mmが中心であり、台湾TSMCなどにいくら供給を急がせても、このプロセスの量産ラインを作るには、半年もかかってしまうというのだ。

それはともかく、半導体メーカーもみな設備投資は加速している。TSMC、Samsungは2021年にそれぞれ3兆円投入という巨大投資をアナウンスしはじめた。もちろん、Intel、SK、Micron、キオクシア、ソニーなども投資引き上げに動くのは必須のことであろう。

ただ、象徴的なことは、中国に向かっていた大型投資がここにきて、アメリカに集中していく方向が出ていることだ。TSMCはアリゾナ新工場建設を決定しており、Samsungもまたアメリカに新たな量産拠点を作るべく用地選定を急いでいる(編集室注1)。いずれも、1兆円から1兆5,000億円を投入されるという巨大工場なのだ。そしてまたTSMCは日本にも後工程の大型工場を建設するという報道もある(編集室注2)。今のところは九州エリアの立地が有力となっているという。

これ、すなわち米中貿易戦争のなせる出来事なのである。中国の半導体に対する強化策は国家による巨大補助金であり、今回の第2弾の作戦でも3兆円は投入すると言われている。これに対して、米国政府は中国を大きく上回る5兆5,000億円を投入する構えであり、現在、議会を通す法案を準備中である。

「バイデン政権になっても、米中対立の図式は変わらない。半導体および装置、材料などの関連産業を含めて、米国政府は今後アメリカ本土への企業誘致を徹底強化していくだろう。今後10年間で19の主要な半導体製造ファブと7万人の雇用を創出することは、絶対の必要事項と考えているようだ」(南川氏)。

いうまでもなく、半導体製造は経済競争力、国家安全保障、およびサプライチェーンの回復という観点から、非常に重要なことなのだ。AI、5G、量子コンピューテイング、エッジデバイスなどの進展が、先進国にとっては軍事的、経済的リーダーシップに結びついていくからだ。

南川氏によれば、米国本土における半導体チップの生産衰退が「強きアメリカ」の後退を招く要因のひとつになっているという。「ひたすらアジアにおける生産に頼る」というこれまでの軌道を逆転させることが待ったなしといえるのだ。米国に新たな19の半導体ファブが立ち上がれば、米国の世界における製造シェアは現在の12%から27%に増加することになる。これは大きな変化を世界の半導体構造にもたらすことになるだろう。

それにしても、2020年の世界の半導体設備投資は9兆円強に膨らみ、過去最高水準となった。2021年については、前年比15〜20%増が予想されている。半導体製造装置メーカー、半導体材料/部品メーカーの供給がはたして追いついていくのか、はなはだ疑問に思う今日この頃である。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注)
1. Samsungは32nmプロセスの時にテキサス州オースチンにファウンドリ工場を建てた。今回は今先端の工場を計画しているが、オースチンはハイテク企業が集積している街なので、オースチンが有力と見られている。
2. TSMCには日本に後工程の工場を作る意思はない。後工程の研究開発センターを作ることは検討しているが、1月28日のセミコンポータルFreeWebinarでお話したように、これもまだ決定したわけではない。誘致の中心となっている経済産業省の勇み足であろう。

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