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サムスンがロジック向けの32nmファウンドリ戦略をセミコンポータルに語る

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韓国のサムスン電子が32nmロジック用のファウンドリ戦略について、セミコンポータルに語った。これは米PR会社のGlobalPress Connection社が主催したe-Summitの中で、インタビューに応じてくれたもの。サムスンはメモリービジネスの他にもロジックのファウンドリビジネスを行っている。

アナ・ハンター氏 サムスン電子ファウンドリ担当バイスプレジデント

アナ・ハンター氏 サムスン電子ファウンドリ担当バイスプレジデント


90nm以降の微細化プロセスにおいては、ムーアの法則から外れてゲート酸化膜をスケーリングできなかった、と同社ファウンドリビジネス担当バイスプレジデントのアナ・ハンター氏は述懐する。ゲートのリーク電流が急増するため「ゲート酸化膜を90nm以降は薄くできなかった」(同氏)。このため90nmから65nm、45nmまでゲート酸化膜のスケーリングは止まったままだった。高性能のマイクロプロセッサ用にインテルは45nmからゲート構造を変えた。High-k絶縁膜により物理的な厚さを稼ぎ、メタルゲートにより仕事関数を持ち上げるという、「High-kメタルゲート構造」を採用した。高性能プロセッサでは動作電圧を0.9Vに下げることでダイナミックな消費電力を下げることに注力したが、低消費電力のモバイル応用でHigh-kメタルゲートを採用するのはサムスンが初めてだという。

サムスンは、32nmから28nmも含め、High-kメタルゲートを採用する。これによって、ゲートリーク電流は2ケタ下がり、あるゲート電流での動作速度は40%向上する。逆に、ある一定速度でのリーク電流は1ケタ下がる、としている。このHigh-kメタルゲートは22nmチップにも使えるとしている。22nmのトランジスタのゲートリーク電流は32nmトランジスタと比べると若干増えるが、使えるレベルにあると同氏は言う。ロジック向けファウンドリビジネスの責任者である同氏は、High-kメタルゲート技術のおかげでモバイル機器でのGHz動作が可能になると述べている。

同社は45nmでゲート酸化膜を使う場合と、32nmでHigh-kメタルゲートを使う場合とを32ビットプロセッサコアARM1176のデバイスを用いて比較している。これによると、32nmにすると速度、コア面積、消費電力の三つの点で優れていることが定量的にわかった。2つのクリティカルパスでは、速度は24%、あるいは25%と増し、コアサイズは半減した。また、32nmでは電源電圧は0.9Vと45nmの1.0Vよりも低下し、ゲート数は1300万ゲートと45nmの1100万ゲートよりも増えると仮定して比較したところ、動作時のダイナミック消費電力は33%減り、スタティックなリーク電流による消費電力は55%減少し、全体の消費電力は35%減少したとしている。この結果から、32nmの低消費電力技術はモバイル機器のGHz動作が可能になると結論付けている。

22nmチップではリソグラフィの選択が非常に難しくなる。これに対してサムスンでは研究開発チームがEUVを含めさまざまなリソグラフィツールについて研究している、と言う程度に留めている。と言うのは同氏の責任範囲外の技術だからである。

同氏が力を入れているこれからの分野の一つにTSV(through silicon via)がある。いわゆる貫通電極技術だ。これも応用がGHzのモバイル機器である。TSVは、従来のPOP(パッケージオンパッケージ)と比べて、サイズは35%小型化し、消費電力は半減し、メモリーバンド幅は8倍にも高速化するとシミュレーション評価している。バンド幅が8倍にも広げることができるのは、メモリーデータの入出力を増やし並列化できるだけではなく、レイテンシも減るためだ。もちろん、ワイヤボンドによるインダクタンス成分もぐっと減る。加えて、メモリーとプロセッサを直結すると、ESD回路が要らなくなるため、その分の消費電力を減らすことができると指摘する。

サムスンはTSV技術ではインターポーザを使わない方針だ。というのは、モバイル機器はコストに敏感で、インターポーザを導入するとそれだけでコストアップになるからだ。「サムスンは、メモリー部門を持っていることが大きな強みとなっている。アプリケーションに応じて、メモリー部門とパッドの配置についてディスカッションしながらロジックの端子を修正していくことができるからだ」とハンター氏は言う。ロジックを再配線できるからインターポーザは要らないのだ。TSVビジネスでは、ファウンドリサポートと、パッケージング技術、メモリー技術という三つの大きな技術を持っていることがサムスンの競争力のあるところだとしている。

同社のファウンドリビジネスは、現在45nm製品が量産に入っており、今年の第2四半期には32nm製品のプロトタイプを出し、カスタマ次第だが年末には32nm品の量産にもっていきたいとしている。ただし、最も数量の多い製品は現在、65nm品であるが、年末には45nm品が主流になるとみている。

サムスンは2005年からファウンドリビジネスを始めた。韓国の器興工場で90nmプロセスの製品から立ち上げ、300mmウェーハ工場で生産し、現在は月産4万枚の生産量だが、さらに増やしつつあるという。同氏のいる米国ではカスタマを見つけ、テクニカルサポートを行っている。例えば、TSVビジネスではロジックの顧客とパートナーシップを組み標準規格を作り、安いコストで製品を提供できるようにするとしている。

(2010/05/06)

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