144cm2の大面積で効率14.5%のペロブスカイト・ソーラーセル
オランダの太陽電池コンソーシアムSollianceは、144cm2の面積で変換効率が14.5%と高いペロブスカイト構造のソーラーモジュールを開発した(図1)。ペロブスカイト構造の太陽電池は、有機材料で構成する塗布型ソーラーセルであり、最近注目が急速に集まっている。2011年に小面積だが10%を超えるものが発表されて以来、その勢いがあまりにも急だからである。
図1 曲げられる有機ペロブスカイト構造太陽電池 出典:Solliance
この発表は、オランダの北ブラバント州とオランダ王国大使館が東京で開催した「Brabant Innovation Day」で明らかになったもの。Sollianceマネージング・ディレクタのRonn Andriessen氏(図2)によると、これだけの広い面積で14.5%の効率を達成したのは初めてだとしている。これまでのペロブスカイト太陽電池は最高で22.7%とシリコンの単結晶セル並みの効率を達成しているが、その時の面積は小さく、実用的ではない。今回は有効面積が144cm2と広く、より実用的である。
図2 Sollianceマネージング・ディレクタのRonn Andriessen氏
ペロブスカイト構造の有機膜は、基本的に塗布で形成する結晶である。処理温度は最大120°Cであるから、基板にはガラスだけではなくプラスチックフィルムを使うことも可能である。このためフレキシブルな形に加工できる。傘やテントに張り付けることもできる。Andriessen氏は、量産にはロール・ツー・ロール方式が使える上に、安価な装置だけで構成できるため、製造コストは市販のシリコン結晶よりも安くできる、と胸を張る。
しかも、この太陽電池はプラスチック基板に塗布で形成できるため、薄く形成でき軽い。このため、曲面形状の壁や屋根などにも向く。例えばクルマの屋根に一面に敷き詰めることさえ可能だ。従来のシリコン単結晶あるいは多結晶の太陽電池なら架台に固定し設置しなければならないが、塗布型有機太陽電池なら、どのような形状の上にでも設置できる。いわば、建物の形状に沿って取り付けることができる。このため次世代の太陽電池と言われている。
一般にペロブスカイト構造の太陽電池は、まずサブストレート基板(PETやプラスチック、ガラスなど)の上にバッファ層(TiO2層など)、さらにペロブスカイト構造を持つ有機膜のPb(CH3NH3)I3、さらに正孔輸送膜を形成し透明電極を付けて完成する。
ペロブスカイト構造は一般に強誘電体に多く見られ、例えば誘電率の高いチタン酸鉛(PbTiO3)やチタン酸バリウム(BaTiO3)のように、立方晶系の単位格子の各頂点に金属(PbやBa)原子、体心にもう一つの金属原子Tiを配置し、立方晶系の面心中央にOを配置した結晶構造の一種である。これらの強誘電体結晶と同様に、チタン酸鉛のTiに相当する原子(というか有機分子だが)がCH3NH3であり、酸素Oに相当する部分がIという訳だ。
この複雑な結晶構造だが、粉末のPbI2試薬と、粉末のCH3NH3I試薬を混合し、溶媒に溶かして常温で塗布し、そのあと40〜100°Cで熱処理するだけで得られる。Andriessen氏によると、厳密には単結晶ではなく多結晶に近いという。ただし、グレインバウンダリの向きに沿って電流が流れ、グレインバウンダリを横切って電流が流れることはないため、抵抗がさほど大きくなく高い効率が得られるのだとしている。
透明電極を基板側に設け、表面側に金属電極を蒸着で形成している。レーザースクライブで短冊状にセルを構成し、24個のセルを直列接続している。このことによってフィルファクタは95.2%と四角いI-V特性になっている。このまま接続することで電圧や電流容量を高めることができるとしている。また、効率は落ちるが半透明のディスプレイの電源にも使えるというデモも見せた。