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STMicroelectronics、SiPパッケージを駆使、パワーICソリューションに注力

STMicroelectronicsがパワー半導体のシグナルチェーンにおいて、SiP(システムインパッケージ)手法を用いて、モータドライブ用の半導体開発に活かしている。パワー半導体がシリコンのMOSFETからGaN HEMTやSiC MOSFETなどに変わっても、このシステムは変わらない。SiPは、小型、インテリジェント、高性能、低コストなどメリットは多い。

パワー半導体のシグナルチェーン

図1 パワー半導体のシグナルチェーン モータ駆動の例だが、マイコンとゲートドライバあるいはゲートドライバとパワートランジスタの集積などの組み合わせがある 筆者作成


パワー半導体のシグナルチェーンは、 マイクロコントローラ(マイコン:MCU)からモータを動作させるための指令を送り、モータの回転数を変えたりオンオフ動作をさせたりする(図1)。例えばEV(電気自動車)を自由自在に動かすためにはモータの回転数を自由自在に変える必要がある。そのためにはマイコンから電気信号を送り、ドライバを動作させ、そのドライバがパワー半導体を動かし、流す電流を制御する。それにより回転数を変化させる。

モータを駆動するためのシステムは基本的に図1のようなシグナルチェーンで構成されている。EVのようなシステムでは、数十Aも流す大きな駆動モータから数Aのウィンドウの開閉するためのモータまでいろいろある。特にクルマには数十種類ものモータで溢れている。様々なモータに対応するためには、このシグナルチェーンの中でMCUとドライバを1パッケージに、あるいはドライバとパワー半導体を1パッケージに、などの組み合わせがある。小さな電流のモータなら全て1パッケージという応用もある。

集積回路の歴史は、常に高集積化の歴史だった。(1、0)でしか表現しないデジタル回路は小電流で動作させていたため高集積化に進んだが、パワーシステムは大電流を扱うため高集積化が難しかった。しかし、高集積化のメリットはデジタルと同様、小型、低消費電力、高性能、低価格であることは間違いない。パワーでもプリント配線板に実装すると配線の長さによっては寄生インダクタンスにより高電圧が発生したりするため、できるだけ配線を短くするSiPなどの集積化は寄生インダクタンスが小さいため、その影響は少ない。

先日、東京で開催されたTechno-Frontier 2025において、STはさまざまなSiPを紹介した。これまでは、数Aのパワートランジスタとゲートドライバを集積したSiPが多かったが、この展示会では、数Aのパワートランジスタ4個とゲートドライバ2個を集積したSiPのICや、ゲートドライバICと6個のパワーMOSFETを集積したIC、マイコンとゲートドライバ3個を集積したSiPなど、高集積化が一段と進んだ。一つのリードフレーム上に複数個集積する手法が多い。全て10mm角程度のQFPなどのパッケージに封止されており、見た目は一般のLSI[とさほど変わらない。

マイコンとゲートドライバの例では、Arm Cortex-M4マイコンコアと電源IC、耐圧 75Vの3相ゲートドライバを集積したIC「STSPIN32G4」がある。これらを集積して9mm×9mmのVFQFNパッケージに封止されており、パワー半導体をつなぐだけの構成になっている。マイコンにセンサと信号処理などをボード上に搭載したリファレンスデザインも提供するが、センサからの情報を元にAIチップなども含めると賢いモータ制御ができるようになる。STは次世代スマートアクチュエータシステムにつながると期待する。

GaNのように高速で使いにくい半導体の場合には、ゲートドライバとパワートランジスタを1パッケージにしたSiPが有効だ。モータドライバではないが、デジタル電源向けにPWMコントローラを650VのGaN HEMTパワートランジスタを集積したSiPもある。高電圧を利用した急速充電器や電源のフライバック回路などの用途が見込める。

パワー半導体は、マイコン、ドライバと共に使われることが多いため、製品としてマイコンやドライバを持っている半導体メーカーが強くなるであろう。

(2025/08/14)
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