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AMDの新Ryzen PRO7040、AIエンジンやセキュリティプロセッサを集積

AMDは2022年に前年比44%増の236億ドルを売り上げ、急成長を遂げたが、そのカギはパソコンやデータセンター用サーバー向けCPU製品の高性能化を進めただけではなく、旧Xilinxグループのアダプティブコンピュータ用の開発キットなど全ての製品ポートフォリオをユーザーの使い勝手を考慮したことだ。このほど発売した最高性能のCPU「AMD Pro 7040」シリーズのプロセッサ(SoC)の考え方を明らかにした。

図1 AMD Commercial Client Business部門ディレクタ兼Worldwide MNC Segment LeaderのJustin Galton氏 

図1 AMD Commercial Client Business部門ディレクタ兼Worldwide MNC Segment LeaderのJustin Galton氏


来日したAMD Commercial Client Business部門ディレクタ兼Worldwide MNC Segment LeaderのJustin Galton氏によると、パソコン用ではTSMCの4nmプロセスで製造されており、従来のパソコン用プロセッサよりも約2倍の高速性能だという。IntelのCPUは自社工場で製造するが、AMDのSoCは4nmプロセスという最先端の微細化ファウンドリで作るため、高性能でありかつ低消費電力だとする。パソコン用のSoCとして従来のRyzen 6000シリーズではTSMCの6nmプロセスで作られていた。

このパソコン向けSoCには、CPUに加え、GPUのRDNA 3、AIコアのRyzen AIも集積している(図2)。パソコン用SoCでAIエンジンを搭載したのはこれが初めて。これからのAIはもっとセキュアにする必要があることから、Microsoftと6〜18カ月かけてセキュリティを強化した。


AMD RYZEN PRO 7040 SERIES PROCESSORS

図2 AMD Ryzen PRO 7040シリーズSoC 出典:AMD


CPUのアーキテクチャには最新のZen 4を用い、高性能なCPUコアを8個集積している。これまでのZen3アーキテクチャと比べ29%高速応答ができ、マルチタスキング処理は23%高速だとしている。高性能コアを集積していながら消費電力も低く、MicrosoftのTeamsを使っているときのバッテリ寿命はライバルメーカーのCPUと比べ6時間48分と、最大70%長いという。GPUでは前シリーズのRDNA 2と比べて、グラフィック性能を19%向上させている。

AIエンジン(図3)は、パソコンベースでも推論だけではなく簡単な学習もできるようなエンジンに仕上げている。AMDは生成AIのようなクラウドAIだけではなく、クライアントAIとのハイブリッドAIを進めている。様々な分野でCPUが使われるようになり、様々なシーンでAIが使われるケースが増えていくことに対応して、AIジャーニーを進め、MicrosoftなどのISP(Internet Service Provider)と一緒にAIを手掛けており、医療系や金融系の応用も経験しているとGalton氏は言う。


AMD RYZEN AI

図3 AIエンジンを集積したAMDのSoC 出典:AMD


セキュリティはMicrosoftと共にソフトウエアだけではなく、Pultonセキュリティプロセッサも集積しており、RoT(Root of Trust)やセキュリティで保護されたIDや暗号サービスも提供する。パソコンを起動したときに正常に動作できることやサイバー攻撃を受けたかどうかの確認などを行ったりしている。暗号サービスは重要なデータに暗号をかけておき、侵入されても簡単には読み出せないようにする。

AMDはデータセンターやHPC(高性能コンピューティング)向けにチップセットを利用した2.5D/3D-ICを集積する先端パッケージの「MI300」製品の発表を積極的に行ってきた。チップセット技術はデータセンター向けだけではなく、パソコン向けにも2024〜2025年には導入されるだろうと述べた。AMDは先端パッケージに積極的に活用、性能と消費電力、集積度を改良する新技術として推進している。

(2023/09/22)
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