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Infineon、衝突防止ミリ波レーダー時代到来を宣言

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クルマの周囲の検出にミリ波レーダーが使われるようになってきたが、その背景には半導体の集積度向上による低コスト技術がある。高価なGaAsに代えて安価なSi-Geに替え、次にRF回路の高集積化によってミリ波レーダーの低価格化を後押ししてきた。クルマ用半導体に強いInfineon Technologiesは、ミリ波レーダーの時代がやってきたと宣言する(図1)。

図1 Infineon Technologiesのクルマ用のセンサ部門を率いるRalf Bornefeld氏

図1 Infineon Technologiesのクルマ用のセンサ部門を率いるRalf Bornefeld氏


電磁波の波長がミリメートル単位にまで短くなると、アンテナ設計が小型になる。光の速度は3×10の10乗cm/sであるから、波長1cmの電波の周波数は30GHzである。つまり周波数が30GHz以上になると波長は1cmを切りmmオーダーとなる。周波数300GHzが波長1mmに相当する。自動車用レーダーの77GHzの周波数だと4mm前後の波長となり、非常に小型にできる。ところが、ミリ波になると電波は放射状に発せず、レーザー光のように直線的になってくる。

それを利用してクルマの前方からレーダーを発射すれば金属などに反射してそのまま戻ってくるため、前方に反射する金属物体、すなわちクルマがあればすぐに検出できる。この性質を利用したのがクルマを検出するセンサだ。また24GHzのレーダーもクルマには使われている。24GHzの波長は正確には1cmを超えているが、12.5mmという表現もできるためミリ波と呼ばれている。24GHzのミリ波は77GHzよりも直線性が弱いため、発信機の周囲の金属物すなわちクルマも検出できる。このような性質を利用して、クルマの前後周囲の検出に24GHzレーダーを使い、前方を走る車を検出するのには77GHzを使っている。

Infineonは、レーダーシステムの低コスト化を2009年から図ってきた。第1世代品は、Si-Geプロセスの導入によりレーダーシステムのコストを30%削減した。トランシーバを作る場合、従来のGaAsだとRFチップが8個必要だったが、Si-Geにより1チップのトランシーバと発振器1チップで済んだ。GaAsは100mmのウェーハしか使えなかったがSiは200mmウェーハが使えた。このため量産化が容易でコストを削減できた。このチップはAudiのA4に搭載された。


図2 77GHzレーダーシステムの低コスト化を実現したeWLB技術 出典:Infineon Technologies

図2 77GHzレーダーシステムの低コスト化を実現したeWLB技術 出典:Infineon Technologies


さらに2012年には第2世代品として、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)と呼ぶパッケージング技術を開発(図2)、これにより配線長が短くなると共に放熱も向上し、しかも高価なセラミックから安価なモールドが使えるようになった。このころにはトランジスタ自身の性能も上がり、77GHz動作が可能になった。この技術の導入でレーダーのシステムコストはさらに30%下がった。この技術によりVolkswagenのGolf 7やDaimlerの小型車SMARTにも搭載されるようになった。欧州では今やさまざまなクルマにレーダーが載るようになっている、と同社VPでAutomotive DivisionでSensor & Control部門General ManagerのRalf Bornefeld氏は言う。「第1世代から現在まで、5年間で累積1000万個のレーダーチップを出荷してきたが、次の1年で1000万個を出荷する勢い」だと言う。

Infineonは、さらに現在のSi-Geトランジスタの遮断周波数fTの2倍に相当する400GHzを持つ新型トランジスタの開発を終え、第3世代とも言うべき完全1チップのRF+ベースバンド回路を開発中だ(図3)。A-Dコンバータや各種インタフェースも集積し、出力がデジタルというLSIであり、そのままマイクロコントローラMCUに接続できる。このシステムではデジタル出力の77GHz高周波LSIとMCU、パワーマネジメントの3チップのレーダーシステムとなり、さらに低コスト化することになる。このチップは2019年に量産化されるとしている。


図3 Infineonが描くレーダーチップのロードマップ 出典:Infineon Technologies

図3 Infineonが描くレーダーチップのロードマップ 出典:Infineon Technologies


Infineonはレーダーの他に、ドライバーの顔をその奥行きも含めて認識するToF(Time of Flight)方式の3次元センサを開発している。まだクルマには搭載されていないが、Tier 1サプライヤに納めており、近い将来クルマに搭載される機能である。ToFはレーザーやLEDを発射し戻り光とのパルスの位相差を検出して距離を測る技術である。10万画素のイメージセンサによって3次元の奥行きを含めた顔を認識するため、ドライバーの眠気防止、HUD(ヘッドアップディスプレイ)の位置の補正などに使う。この機能は自動運転へのステップのレベル1から5までの内のレベル3に相当するという。現在はレベル2の段階である。

(2015/11/06)

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