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新社長登場で活気づくPMICメーカー2社

パワーマネジメントIC(PMIC)に力を入れてきたアナログ・ミクストシグナル半導体のIntersil社と、元々パワーマネジメント専門メーカーの日本のファブレス半導体であるトレックスセミコンダクター社。偶然にもほぼ同時に日本の新社長が生まれた。共にパワーマネジメントをさらに強化する。

図1 インターシル代表取締役社長の大久保喜司氏

図1 インターシル代表取締役社長の大久保喜司氏


図2 トレックス代表取締役社長の芝宮孝司氏

図2 トレックス代表取締役社長の芝宮孝司氏


このほどインターシルの代表取締役社長に就任したのは、元シリコンラボラトリーズ社の社長を務めた大久保喜司氏(図1)。同氏は、日本の代表であると同時に東南アジアとインド市場もカバーする。トレックス社はこれまで社長を務めてきた藤坂知之氏が代表取締役会長に退き、代表取締役社長には芝宮孝司氏(図2)が就任した。

Intersilは米国本社でも社長が3年前に代わり、Necip Sayiner氏が就任した。同氏もSilicon Laboratoriesの社長を務めており、その日本法人社長だった大久保氏を口説いたことは想像に難くない。

パワーマネジメントIC、すなわち電源ICはどのような電子機器にも欠かせない。半導体ICなどの電子回路は電源なしでは動作しないからだ。自然界にあるエネルギーだけで動作するエネルギーハーベスティング回路でさえ、電源ICは欠かせない。このため極めて幅広い応用分野に使われる。


図3 Intersilは入力電圧、出力電流をさらに広げていく 出典:Intersil

図3 Intersilは入力電圧、出力電流をさらに広げていく 出典:Intersil


Intersilはこれまでモバイル電源でリードしてきており、3.3V/30Aから、60V/2A程度までの範囲をカバーしてきた(図3)。今後はその領域をさらに広げていくと同社Industrial Power Products部門Marketing and Applications担当DirectorのLokesh Duraiappah氏(図4)は述べる。トレックスは携帯機器向けに消費電力の低い電源ICを得意としてきたが、今後は携帯機器だけではなく、産業機器や車載、医療機器などの分野へと少しずつ広げていく。


図4 Intersil社のLokesh Duraiappah氏

図4 Intersil社のLokesh Duraiappah氏


両社とも新社長の紹介と同時に新製品も発表した。Intersilが入力耐圧60V、最大出力シンク電流4Aの同期整流バックコンバータISL8117を発売した。このチップでは、外付けのMOSFETをドライブするような電源を想定しており、その場合には出力電圧12Vで電流20Aの電源回路などを構成できる。一方、トレックスは小電力で外付けのコイルを1パッケージに集積する3種類の外形を持つ製品を発表した。それぞれを簡単に紹介する。

IntersilのISL8117は、工業機器で一般的な48V電源から、POL(Point of Load)など低電圧大電流用途に使う出力1Vと低い電圧へ直接変換できるという特長を持つ。通常は中間的な電圧にいったん落とし、そして1Vへ落としていた。このため回路部品は多くなり、電源回路が複雑になっていた。これに対して、1V出力のPOLとして使えるため電源回路が簡単にできる。

これまでDC-DCコンバータ電源で直接大きく落とせなかったのは、PWM(パルス幅変調)のパルス幅を小さくしてデューティ比を小さくすると、短いパルスにノイズが乗りやすかったからだ。一方で、PWMのオフ時でのインダクタ電流は安定しているため、これをサンプリングすることで安定なパルス幅のオン時間を作り出すことができたとDuraiappah氏は語る。このICのレイアウト設計において、PWMの信号系回路と入出力のパワー系回路を切り離しておき、パワー回路の影響を受けないようにしたという。ICの入出力にパワーMOSFETを2個配置するリファレンスボードも提供する。入力24V、出力5V、スイッチング周波数300kHzの場合、最大94%以上の効率を得ている。最大周波数は2MHzだが、AMラジオ向けには2MHzでスイッチング動作させると、高調波はさらに上の周波数成分であるため、ノイズフリーの電源となるとしている。

同社は今後デジタル電源にも力を入れていくとしており、特にデータセンターやストレージなどインフラ向けの応用を狙う。2008年にデジタル電源のZilker社を買収しており、その製品ポートフォリオを持つ。

一方、トレックスも小型、モバイル、省電力を特長とする電源用ICを開発してきたが、小型の電源をさらに小さくするため、外付け回路に配置するコイルをICパッケージに内蔵した。同社はこの新製品を「micro DC-DCコンバータ」と呼び、製品名をXCLシリーズと呼ぶ。この新製品には、パワーMOSFETと制御IC、ショットキバリアダイオードをモノリシックに集積し、コイルをパッケージ内に搭載する。

3種類のパッケージ構造を持ち、それぞれポケットコイルタイプ、並列タイプ、スタックタイプと呼んでいる(図5)。それぞれ、低EMIノイズ、大電流、低コスト、を特長とする。ポケットタイプは、ICの上からコイルがコの字に覆いかぶさる格好をしているため、EMIノイズが小さく、基板にコイルとIC両方が接触しているため、ICとコイルからの発熱による熱抵抗も低い。並列タイプは、コイルとICを横に並べて配置するタイプで、面積はその分大きくなるが、熱抵抗が小さいため電流を大きく取れる。スタックタイプは面積を最も小さくできる。電極は全て下部から採れるため、配線の引き回しを考慮してこれ以上高くならない。


図5 3種類のパッケージを揃えたトレックス

図5 3種類のパッケージを揃えたトレックス


トレックスは、これからもモバイルや省エネ電源を推進していく。カーナビ用の省エネ電源、血圧計などのヘルスケア用のモバイル電源、スマートメーター用など産業向け電源にも力を入れていく。パワー半導体市場はリーマンショック後の立ち上がりが遅く、2012年、2013年もマイナス成長だった(参考資料1)。同社も2012年3月期は純損益で赤字だったが、2013年3月期には黒字転換を果たし、パワー半導体市場全体よりは1年早く回復させた。2015年3月期の売り上げは100億円弱、営業利益率14%程度に伸ばした。2018年3月期までの中期経営計画では130億円の売り上げ、営業利益率18%を目指している。

参考資料
1. パワートランジスタ市場は2015年に過去最高の140億ドルになりそう (2015/06/25)

(2015/07/08)

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