米国政府のAI半導体対中輸出許可に対する波紋、中国の国産品推奨等
AI(人工知能)半導体への期待の熱気と過熱懸念が入り混じる市場の空気が続くなか、今週はじめに米国のトランプ大統領がNvidiaの最上位に続く性能のAI半導体、「H200」の中国への販売を許可し、地政学およびビジネス絡み合ったさまざまな波紋&動きを生じている。米国内では、中国に利するのみと反発の声が上がる一方、中国では米国品に頼らず、国産品を推奨する動きが見られている。Nvidiaがほぼ席巻しているAI半導体であり、中国では密輸でNvidia品入手の動きも伝えられて、中国国内では先端品への要求の強さがうかがえている。Nvidiaも、「H200」の生産増強の動きが今週末にあって、中国に向けたビジネス対応に余念なしの様相、今後の推移に注目である。
≪両立しないスタンス≫
AI半導体の中国への輸出について、規制を強化したり、緩和したり、揺れ動く状況がうかがえているが、こんどは、以下の通り「H200」の販売が、トランプ大統領により許可されている。
◇Trump approves sale of more advanced Nvidia computer chips used in AI to China (12月9日付け The Associated Press)
→ドナルド・トランプ大統領は月曜8日、NVIDIAがAI開発に用いられる先進的なコンピュータチップを中国の「承認された顧客」に販売することを許可すると述べた。
先進的なコンピュータチップを中国に販売することについては、AI能力の構築において中国が米国との競争力を高める可能性があるため、懸念の声が上がっている。しかし、チップメーカーのNVIDIAなどの米国企業とAIエコシステムを構築したいという意向もある。
◇Nvidia can sell the more advanced H200 AI chip to China - but will Beijing want them?―Nvidia gets the OK to sell H200 chips to China with a fee (12月9日付け CNBC)
→1)*エヌビディアは、ドナルド・トランプ大統領から、より高度なAIチップ「H200」を中国に販売する許可を得た。
*しかし、自給自足を目指す中国が、実際に購入に踏み切るかどうかは疑問だ。
*しかし、H200の優位性は、中国のテクノロジー企業にとって抵抗できないほど魅力的になる可能性がある。
2)エヌビディアは、25%の手数料を含む一定の条件付きで、H200 AIチップを中国に販売することを米国から承認された。半導体業界の自給自足を目指す中で、中国が購入を許可するかどうかという疑問が生じている。ドナルド・トランプ大統領は、商務省がインテルとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)にも適用される合意を最終調整中だと述べた。
3)エヌビディアは、先進的なAIチップ「H200」の中国への販売を米国から承認されたが、中国政府は国内の自給自足を守るため、購入を制限する可能性がある。中国のハイテク企業は急速に進歩しており、H200の販売は魅力的ではあるものの、長期的には政治的に不透明である。
◇Trump approves Nvidia H200 exports to China, with 25% fee attached - report suggests that companies will have to follow strict Beijing rules to import foreign chip, AMD and Intel to benefit from policy shift―U.S. authorises shipments of Hopper-class AI accelerators to “approved” customers. (12月9日付け Tom's Hardware)
→ドナルド・トランプ大統領は月曜8日、米国がNVIDIAのH200チップを中国の「承認された顧客」に輸出することを認めると発表した。これにより、太平洋の両岸で新たな政治的、規制的な駆け引きが始まった。
この決定により、NVIDIAの第2世代チップ「Hopper」の出荷が認められる。ただし、部品が米国に到着し、再輸出前のセキュリティ検査を受ける際に25%の手数料が徴収される。商務省は現在、この取り決めの条件を最終調整中で、トランプ大統領はAMDとIntelにも適用されると述べた。
◇Trump says Nvidia can sell H200s to China - if Washington gets a 25 percent cut―Blackwell and Rubin kit remain off limits (12月9日付け The Register (UK))
→ドナルド・トランプ米大統領は、NVIDIA社が中国向けにH200アクセラレーターの販売を再開することを認める意向を示した。
「中国の習近平国家主席に対し、米国は引き続き強力な国家安全保障を維持できる条件の下で、NVIDIA社が中国およびその他の国の承認された顧客に対してH200製品を出荷することを許可すると伝えた」と、トランプ大統領は月曜8日に自身のソーシャルネットワーク「Truth Social」に投稿した。
◇Trump greenlights Nvidia H200 AI chip sales to China if U.S. gets 25% cut, says Xi responded positively (12月9日付け CNBC)
→1)*ドナルド・トランプ大統領は、米国がテクノロジー大手、NVIDIA社に対し、H200 AIチップを中国およびその他の地域の「承認された顧客」に出荷することを許可すると述べた。
*習近平国家主席はこの提案に「前向きな反応」を示したと、トランプ大統領はTruth Socialに投稿した。
*トランプ大統領の投稿によると、この合意の一環として、チップ売上の25%が米国政府に支払われる。
2)トランプ大統領は、米国が25%の利益を得ることを条件に、NVIDIA社が中国およびその他の地域の「承認された顧客」にH200 AIチップを販売できると発表した。習近平国家主席はこれに前向きな反応を示し、この政策は米国の雇用と製造業の活性化を目的としている。
◇NVIDIAのAI半導体「H200」、トランプ氏が中国への輸出を承認 (12月9日付け 日経 電子版 12:28)
→トランプ米大統領は8日、米エヌビディアのAI半導体「H200」の中国への輸出を認めると発表した。バイデン前政権以来、米政府はH200の対中輸出は認めてこなかったが、今回の承認により対中輸出規制を緩和したことになる。
中国市場でのシェアを回復したいエヌビディア側の強い要請を受け、輸出管理政策を方向転換させた。
◇米、中国AI市場確保狙う エヌビディア半導体の輸出緩和 主力・次世代品は除外 (12月10日付け 日経)
→トランプ米大統領は8日、米エヌビディアのAI半導体「H200」の中国への輸出を認めると発表した。バイデン前政権以来、米政府はH200の対中輸出は認めてこなかったが、今回の承認により対中輸出規制を緩和する。
貿易交渉でトランプ米政権と中国は一時的な「休戦」状態にあり、半導体を巡る駆け引きを続けている。
英フィナンシャル・タイムズは9日、中国政府がH200の輸入規制を検討中と報じた。中国のハイテク大手はエヌビディア製の半導体を欲しいものの、中国政府は国内メーカーに開発を促して自給体制を整えたい意向という。
「H200」許可の動きを受けて、台湾での反応である。
◇[News] NVIDIA H200 Export to China Approved, Unlocking Gains for Taiwan OEMs, OSATs, and Server Suppliers (12月10日付け TrendForce)
→米国がNVIDIAのH200の中国への輸出を承認したことで、AIサプライチェーンの在庫消化が加速し、台湾の組立・テスト企業への受注が増加する。
より新しいBlackwellチップへの移行にも拘らず、中国は購買を再開、OEMsとOSATsは早期の利益増を見込んでいる。
さらに、関連する各方面での反応、波紋の記事が続いており、内容分類で以下に示す。
[密輸の報道]
◇Nvidia responds to report that China’s DeepSeek is using its banned Blackwell AI chips (12月10日付け CNBC)
→1)*NVIDIAは、中国のAIスタートアップ企業、DeepSeekが次期モデルの開発にBlackwellのチップを密輸したとの報道を否定した。
*NVIDIAの広報担当者は声明で、「いかなる裏付けも得られていない」と述べた。
*The Informationは、DeepSeekが中国に密輸したBlackwellのチップを使用していると報じた。
2)NVIDIAは、中国のAIスタートアップ企業、DeepSeekが次期モデルの開発にBlackwellのチップを密輸したという報道を却下し、その主張は根拠がないと述べた。米国によるこれらの先進GPUsの輸出禁止措置は、AI競争の激化に伴い、NVIDIAと中国との関係を政治的な争点にしている。
◇中国DeepSeek、NVIDIAの最新半導体を密輸利用か 米メディア報道 (12月11日付け 日経 電子版 18:25)
→米ネットメディアのジ・インフォメーションは10日、中国のAI企業DeepSeekが米エヌビディアの最新半導体「ブラックウェル」を使って次世代AIを開発していると報じた。トランプ米政権は同製品の中国輸出を禁じており、第三国を経由して密輸している可能性があるという。
ブラックウェルはエヌビディアの現行の最先端品で、計算処理能力や電力効率が高い。
[米国内の反発]
◇NVIDIAの半導体・H200、対中輸出は「敵塩」 規制緩和に米でも反発 (12月10日付け 日経 電子版 05:32)
→トランプ米政権が米エヌビディア製のAI半導体「H200」を巡り輸出規制の緩和を表明した。これまで米政府は安全保障上の懸念を理由に輸出規制をかけることで、中国企業によるAI開発を封じ込めてきた。規制緩和は「敵に塩を送る」形となり、米国内で反発が強まっている。
[中国国内の動き]
◇[News] China’s GPU IPO Wave Intensifies: MetaX Surpasses Moore Threads in Retail Investor Interest (12月11日付け TrendForce)
→中国におけるAIチップIPOブームが加速。MetaXが517万人の個人投資家を集め、ムーアスレッドを上回った。同社は42億人民元を目標に掲げ、HBM3e搭載のC600チップを積極的に宣伝し、売上高は急増しているものの、研究開発(R&D)費による大幅な損失に直面している。
◇中国、政府調達で国産AI半導体を推奨 米依存軽減へNVIDIA制限 (12月11日付け 日経 電子版 11:00)
→中国政府は国有企業が手掛けるAIのデータセンターの半導体調達で国内企業の製品を推奨する。トランプ米政権は米エヌビディアのAI半導体「H200」の輸出規制を緩和すると表明したが、中国側は米国に依存しないAIのサプライチェーン(供給網)構築をめざす。中国政府系の「中国情報セキュリティー評価センター」は、安全性や信頼性の評価対象にAI半導体を選んだ。
◇中国、国産AI半導体推奨 米依存軽減へ、エヌビディア使用制限 (12月12日付け 日経)
→中国政府は国有企業が手掛けるAIのデータセンターの半導体調達で国内企業の製品を推奨する。トランプ米政権は米エヌビディアのAI半導体「H200」の輸出規制を緩和すると表明したが、中国側は米国に依存しないAIのサプライチェーン構築をめざす。
中国政府系の「中国情報セキュリティー評価センター」は、安全性や信頼性の評価対象にAI半導体を選んだ。AIに膨大なデータを読み込ませる「学習」と利用者の質問に答える「推論」の両方を対象とした。
◇China mulls $70 billion domestic chip fabrication injection, would be largest of any government semiconductor investment - Huawei and Cambricon among candidates in push to compete with Nvidia, other U.S. firms―Report: China considers $70B injection for chip industry―Huawei and Cambricon are seen as likely candidates for investment. (12月12日付け Tom's Hardware)
→ブルームバーグの報道によると、中国はNVIDIAなどの企業に対抗するため、国内半導体産業に最大$70 billionの投資を検討している。半導体製造への政府支出としては世界最大規模となるこの投資は、半導体製造の加速と米国への依存度の低減を目的としている。この投資の恩恵を受ける可能性が高い企業には、HuaweiやCambriconなどがある。
そして、中国での需要増大に向けて、Nvidiaの「H200」の生産増強が以下の通りである。
◇Exclusive: NVIDIA considers increasing H200 chip output due to robust China demand, sources say―Sources: Nvidia weighs boosting H200 chip output (12月12日付け MSN/Reuters)
→1)事情に詳しい2人の関係筋によると、NVIDIAは中国の顧客に対し、受注が現在の生産量を上回ったことを受け、高性能AIチップ「H200」の生産能力増強を検討していると伝えた。この動きは、ドナルド・トランプ米大統領が火曜9日、同社が2番目に高速なAIチップ「H200」の中国への輸出を許可し、販売額に対して25%の手数料を徴収すると発表したことを受けてのものだ。
2)関係筋によると、NVIDIAは、ByteDanceやAlibabaなどの中国企業からの受注が現在の生産量を上回ったことを受け、H200 AIチップの生産拡大を検討している。需要の高まりは、H200が中国の顧客にとって入手可能な中で最も高性能なチップであり、H20などの代替チップをはるかに凌駕していることが要因となっている。しかし、中国当局がまだ購入を承認していないため、不確実性は依然として残っている。
◇NVIDIA、AI半導体「H200」の生産拡大とロイター報道 中国需要増で (12月13日付け 日経 電子版 01:22)
→米エヌビディアがAI半導体「H200」の生産能力増強を検討していることが12日、わかった。ロイター通信が複数の関係者の話として報じた。H200を巡ってはトランプ米大統領が8日に中国への輸出を許可したばかり。中国からの受注が生産能力を上回ったという。
AIの熱気が懸念の空気を依然抑え気味の現時点、AI半導体を巡る情勢&状況の推移に目が離せないところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□12月8日(月)
輸出先が米国からアジアへ、中国の貿易黒字である。
◇中国1〜11月貿易黒字、初の1兆ドル超え 対米輸出減少もアジア向け増 (日経 電子版 17:55)
→中国税関総署が8日発表した貿易統計によると、1〜11月の貿易黒字(ドル建て)は前年同期比21%増の1兆758億ドル(約170兆円)だった。
統計を遡れる2000年以降で初めて1兆ドルを超えた。
米国との貿易摩擦が続いて対米輸出が減るなか、アジア向け輸出が増えた。
□12月9日(火)
上記のAI半導体も然り、米国国内の声を大きく分けるAI規制が、以下にも続いている。
◇トランプ氏、AI規制は「一本化」 州独自規制に反対の大統領令署名へ (日経 電子版 05:57)
→トランプ米大統領は8日、AIを巡る規制を全米で「一本化」するための大統領令に署名すると表明した。米国内では各州が独自にAI規制を導入する動きをみせており、トランプ氏は規制が複雑になり企業の競争力をそぐと批判していた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げが決定された今週、一時最高値に達した米国株式市場である。
◇NYダウ反落215ドル安 FOMC前、持ち高調整の売りが優勢 (日経 電子版 06:17)
→8日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、終値は前週末比215ドル67セント(0.44%)安の4万7739ドル32セントだった。最高値が近づくなか、9〜10日開催のFOMCの結果公表を前に持ち高調整の売りが優勢となった。
□12月10日(水)
◇NYダウ、続落し179ドル安 FOMC結果待ちで買い手控え (日経 電子版 06:23)
→9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、終値は前日比179ドル03セント(0.37%)安の4万7560ドル29セントだった。FOMCの結果公表を10日に控えて様子見の雰囲気が強い。主力株への買いが一巡した後は売りが優勢に転じた。
米連邦準備理事会(FRB)は9〜10日に開くFOMCで0.25%の追加利下げを決める公算が大きい。インフレ高止まりへの警戒が根強く、FRB内でも今後の政策運営を巡って意見が割れているとみられている。
□12月11日(木)
米国に出向く際の障壁がさらに、と感じさせる次の内容である。
◇米国、観光客のSNS情報提出義務付けへ 訪米認証「ESTA」日本人も対象 (日経 電子版 04:45)
→米政府は10日、ビザ(査証)なしで観光に訪れる外国人に最大5年分のSNS利用情報の提出を義務付ける規制案を公表した。対象国は数十カ国に上り、日本や欧州諸国を含んでいる。トランプ政権が重視する外国人の審査や国境警備の動きが一段と強まる。多数の観光客やビジネス客の短期出張に影響が及びそうだ。
◇NYダウ3日ぶり反発、497ドル高 FRB利下げと資金供給増を好感 (日経 電子版 06:37)
→10日の米株式市場でダウ工業株30種平均が3日ぶりに反発し、前日比497ドル(1%)高の4万8057ドルで取引を終えた。FRB
がFOMCで0.25%の追加利下げを決めたことを受け、大型株を中心に買いが入った。短期国債を購入して金融市場に流動性を供給する方針を示したことも好感された。
□12月12日(金)
◇NYダウ続伸、一時600ドル高で最高値 オラクルは一時17%安 (日経 電子版 02:15)
→11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸して始まった。午前9時35分現在は前日比200ドル01セント高の4万8257ドル76セントで推移し、11月12日に付けた最高値(4万8254ドル)を上回っている。上げ幅は一時600ドル超に達した。米利下げが景気を支えるとの見方から、景気敏感株や消費関連株に買いが入っている。
□12月13日(土)
◇AI規制で割れるトランプ支持層、テック系幹部の暗躍にMAGAは反発 (日経 電子版 05:43)
→トランプ米大統領が推進するAIの規制緩和が政権に亀裂を生む可能性がでてきた。テック業界出身の幹部が規制緩和を後押しする一方、「MAGA(米国を再び偉大に)」と呼ばれるトランプ氏支持層は雇用への影響からAIに警戒感を示し、分裂を招きつつある。
◇NYダウ、反落し245ドル安 ブロードコムは11%安 (日経 電子版 06:14)
→12日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反落し、終値は前日比245ドル96セント(0.50%)安の4万8458ドル05セントだった。人工知能(AI)投資を巡る不透明感が投資家心理の重荷となっている。ハイテク株を中心に売りが出て、ダウ平均の下げ幅は一時360ドルを超えた。ダウ平均の構成銘柄ではないが、半導体のブロードコムが11.4%安となった。11日夕に発表した2025年8〜10月期決算で売上高と特別項目を除く1株利益が市場予想を上回った。AI半導体が好調な一方で、経営陣が売上高総利益率が悪化する見通しを示し、売りが膨らんだ。
≪市場実態PickUp≫
【インテル関連】
インドのTata Electronicsとの提携、AI半導体スタートアップの買収、など以下の通りである。
◇Tata, Intel deepen India semiconductor push with pact on chip supply chain and AI PCs (12月8日付け CNBC)
→1)*タタ・エレクトロニクスは、インドにおける国産半導体製造の推進に向け、インテルと提携した。
*インテルのリップ・ブー・タンCEOは、この提携を「世界で最も急成長しているコンピューティング市場の一つで急速に事業を拡大する」機会と称賛した。
*タタ・エレクトロニクスは、インド初となる専業半導体ファウンドリーを建設中である。
2)タタ・エレクトロニクスは、インドの半導体サプライチェーンを強化し、現地生産を拡大し、急成長しているインドのAIおよびエレクトロニクス市場の獲得を目指し、インテルと提携して、今後のインド工場での製造、パッケージング、およびAIに重点を置いたPCソリューションの検討を進めている。
◇Intel to explore making chips with mega-corp Tata in India’s first fab―Intel, Tata partner to explore chip manufacturing in India―Chipzilla doesn’t need 28nm product, so maybe this is about landing another outsourced packaging partner (12月9日付け The Register (UK))
→インテルとタタは、インドにおける半導体製造とパッケージングの検討を目的とした提携を締結した。タタが新たに建設するファブと、外部委託の半導体組立・試験施設に重点が置かれている。この合意には明確な内容は含まれていないが、インドの半導体エコシステムへの支援に重点が置かれており、現地市場向けにAI PCソリューションをカスタマイズすることを目指している。
◇Intel Takes Major Step in Plan to Acquire Chip Startup SambaNova (12月9日付け Wired)
→1)この半導体企業両社は、契約内容を直接知る関係筋によると、すでに契約条件書に署名している。
2)インテルは、2021年以降評価額が下落しているAIチップの新興企業、SambaNova Systemsを買収するための拘束力のない契約条件書に署名した。この取引は、現在も規制当局と財務当局の審査を待っているが、インテルCEO、リップブー・タン氏のAIファースト戦略に沿ったものだ。
◇Tata, Intel Forge Strategic Alliance to Advance India’s Semiconductor Ambitions (12月10日付け EE Times India)
→インドが世界的なエレクトロニクスおよび半導体ハブとして台頭することを加速させる動きの一環として、タタ・グループとインテル社は、消費者および企業向けハードウェア、半導体製造、先進的パッケージング、およびAI主導のコンピューティングソリューションにわたる幅広い協力を模索するための覚書(MoU)を締結した。
◇Intel reportedly tests chip tools linked to sanctioned Chinese firms for 14A―Reports: Intel tests equipment from ACM Research for 14A process (12月12日付け DigiTimes)
→中国の半導体ツールメーカーが売上げの急増を報告しているにもかかわらず、インテルは米国の貿易規制の対象となる子会社を持つ米国サプライヤーであるACMリサーチの高度な製造装置を評価している。
◇インテル、AI半導体新興のサンバノバ買収へ協議 約2500億円 (12月13日付け 日経 電子版 10:31)
→米ブルームバーグ通信は12日、米インテルがAI半導体を手がける米新興のサンバノバ・システムズの買収に向けて最終協議していると報じた。買収額は約$1.6 billion(約2500億円)になる可能性がある。インテルはAI半導体の開発で出遅れており、買収で弱みを補う狙いがあるとみられる。
報道によると、買収協議は2026年1月にも合意する可能性がある。
【TSMC関連】
CoWoSはじめ先端実装を台湾のOSATsなどに委託する動き、依然好調な11月販売高、そして熊本第2工場を4-nmに格上げ、と今後の推移&余波に目が離せない以下の内容である。
◇TSMC could be inching closer to making 'all American' chips - report says it is accelerating an advanced packaging facility in Arizona―Report: TSMC accelerating Ariz. packaging for US-made chips―An advanced packaging facility instead of Fab 21 phase 6? (12月6日付け Tom's Hardware)
→TSMCは、アリゾナ州に先進的なパッケージング施設の建設を加速させており、2020年代末までに「オールアメリカン」チップを実現する可能性があると報じられている。当初はFab 21拡張の一環として計画されていたこの施設は、2027年末までに装置の稼働を開始する可能性がある。
◇TSMC’s Advanced Packaging Production Lines Are So ‘Bottled Up’ That the Firm Is Now Looking to Outsource Orders to Meet Demand―TSMC turns to outsourcing to meet packaging demand―TSMC's 'CoWoS' Production Lines Have No Room For Further Orders, As the Firm Now Relies on Outsourcing (12月8日付け Wccftech)
→TSMCの先端パッケージング能力は現在「満杯」の状態にあり、これはAI業界にとって大きな懸念事項となっていますが、この台湾の巨大企業は戦略を練っているよう。
先端パッケージングは、複数のチップレットを組み合わせてAIチップの性能を向上させるという点で、メーカーにとって「聖杯」であり、NVIDIA、AMD、Google、Apple、MediaTekなど多くの企業からTSMCのCoWoSのようなソリューションへの関心が高まっている理由である。しかし、サプライチェーンの情報筋によると、TSMCはもはや自社だけでパッケージング需要を満たすことができず、注文を外部委託することを決定した。
ASE TechnologyやSPILといった台湾企業が、TSMCからの「波及効果」のある注文への対応を担っている。
◇TSMC's Advanced Packaging Facilities Reportedly at Max. Capacity, Insiders Whisper About Outsourcing (12月10日付け TechPowerUp)
→先週末、TSMCがNVIDIA、Google、Amazon、MediaTekからのCoWoS需要が供給能力を上回っていることを受け、外部委託による先進的なパッケージングの拡大を計画していると情報筋が報じた。TSMCはサードパーティのパッケージング企業と提携し、アリゾナP6ファブをAIハードウェアのニーズに対応するために再利用する可能性がある。
◇AI demand drives TSMC to third-highest monthly revenue―TSMC's November revenue surged on AI chip demand (12月10日付け DigiTimes)
→TSMCは、スマートフォンやその他の民生用電子機器の弱含みの受注を相殺するAIチップの堅調な需要の恩恵を受け、2025年11月に連結売上高が3,436億1,400万台湾ドル($11.23 billion)に達したと報告した。
◇TSMC、売上高最高 11月24%増 AI向け先端品好調 (12月11日付け 日経)
→半導体世界大手のTSMCが10日発表した2025年11月の売上高(速報値)は、同月として過去最高の3436億台湾ドル(約1兆7000億円)だった。前年同月比で24.5%増えた。生成AIの処理を担うサーバー向けに先端半導体の販売が好調だった。
◇TMSC ponders upgrading 2nd Japan fab to 4nm - could pave the way for more advanced chips for Japanese customers―Reports: TSMC considers 4nm chips at Japan fab―But delays the completion of its construction? (12月11日付け Tom's Hardware)
→TSMCは、熊本県にある第2工場を4ナノメートル技術を用いた半導体製造に改修することを検討しているとの報道が出ている。この動きにより建設は遅れる可能性があるものの、日本の顧客向けに、より高度な半導体製造装置を供給できるようになる。当初、同工場は6ナノメートルおよび7ナノメートル技術を採用する予定だったが、TSMCはサプライヤーに対し、来年中は日本で新たな製造装置は必要ないと発表したため、建設が一時停止される可能性が示唆されている。
◇TSMC、熊本でAI半導体生産を検討 先端品「4ナノ」に計画変更 (12月11日付け 日経 電子版 18:00)
→半導体世界大手のTSMCが熊本県内で10月に着工した新工場の計画を変更し、先端半導体の生産を検討していることが分かった。AI向けで主流となっている回路線幅4ナノメートルの製造設備導入に向けた需要調査を始めた。実現すればAI半導体の国内安定供給につながる。
米エヌビディアなどが手がけるAI半導体は各国・企業の間で奪い合いの状況だ。
◇TSMC熊本第2工場、消えゆく建機 着工1カ月半で先端品に衣替えへ―新生シリコンアイランド (12月11日付け 日経 電子版 18:00)
→TSMCが熊本第2工場(熊本県菊陽町)で回路線幅4ナノメートルの先端半導体を生産する見通しとなった。従来計画の6ナノより高度な技術で、10月に始まった建設工事は変更が生じるとみられる。現場では、林立していた大量の建機が12月上旬までにほとんど姿を消す「異変」が起きていた。
【韓国半導体関連】
Samsungの先端ファウンドリーの取り組み、韓国政府のファブレスおよびファウンドリーの計画線表、SK Hynixの米国市場上場の検討、など以下の通りである。
◇Samsung’s 4nm Process Has Witnessed Yield Improvements In The 60-70% Range, Enabling It To Reportedly Win A $100 Million Order To Develop An Omni Processing Unit For A U.S. Firm ―Samsung 4nm process gains traction with 60% to 70% yield (12月7日付け Wccftech)
→サムスン電子の4ナノメートルプロセスは、60〜70%の歩留まり改善に達し、Tsavorite Scalable Intelligence社からomni processing unitの$100 millionの受注を獲得したと報じられている。この歩留まり向上はサムスンのファウンドリー事業にとって転換点となり、この受注は2027年までにファウンドリー事業を黒字化するというサムスンの目標達成に貢献すると期待されている。
◇[News] Samsung Reportedly Speeds Up U.S. Hiring as Tesla Prepares for AI5 Production (12月9日付け TrendForce)
→サムスンは、テスラのAI5チップの複雑なファウンドリー問題の解決と歩留まりの安定化を目指し、ベテランエンジニアを雇用し、米国での生産体制を加速させている。この動きは、プログラムが最終段階に入ったことを示唆しており、TSMCの価格上昇と生産能力逼迫の中で、サムスンは需要を取り込む態勢を整えている。
◇South Korea to consider setting up $3.1 bln foundry to grow local chip sector―South Korea mulls $3.1B foundry to boost chip sector (12月10日付け Reuters)
→*李大統領、半導体会議を主宰
*産業通商相、世界的な半導体競争に警鐘
*国家半導体政策を監督する特別委員会
韓国は、AIチップの需要拡大に伴い、国内半導体企業の育成競争で優位に立つため、国と民間の投資で4兆5000億ウォン($3.06 billion)規模のファウンドリー建設を検討している。
◇AI Memory Chipmaker SK Hynix Weighs US Listing to Lift Valuation―SK Hynix eyes NYSE listing to close valuation gap (12月10日付け Bloomberg)
→SKハイニックスはニューヨーク株式上場の可能性を検討しており、この動きはこの韓国の半導体メモリメーカーとマイクロン・テクノロジーなど世界の同業他社との評価格差を埋めるのに役立つとみられている。
◇Nvidia supplier SK Hynix eyes U.S. listing as it expands on the AI boom (12月10日付け CNBC)
→1)*SKハイニックスは、「自己株式を活用した米国株式市場への上場を含む、企業価値向上のための様々な施策を検討している」と述べた。
*米国上場は、急成長を続ける同社にとって、米国に上場しているメモリメーカーの競合企業、マイクロン・テクノロジーやサムスン電子との企業価値格差を縮める上で役立つ可能性がある。
*SKハイニックスはまた、供給能力の拡大を目指し、国内外で多額の資本を投入している。
2)SKハイニックスは、AIチップの需要急増を背景に企業価値が急上昇していることから、米国上場を検討していると述べた。自己株式を活用したADR(米国預託証券)発行は、企業価値の向上と米国競合他社との企業価値格差の縮小、そして事業拡大計画の実現につながる可能性がある。
◇Korea plans $520 billion semiconductor industry expansion (12月11日付け The Dong-A Ilbo)
→韓国は、2047年までにファブレス半導体産業を10倍に拡大するための700兆ウォンの投資計画を発表し、新たなファブ、AIチップの研究開発、および規制緩和を支援している。李大統領は、大手チップメーカーに対し、南部の半導体ベルトを通じて地域の成長を促進するよう促している。
◇SEMICON Korea 2026 to Showcase Core Semiconductor Technologies for the AI Era (12月11日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→半導体産業が変革的な成長期を迎える中、世界の半導体サプライチェーンの重要な拠点である韓国は、ますます世界的な注目を集めている。AI時代をリードする最先端の半導体技術と次世代半導体製造パラダイムを紹介するプレミアプラットフォームであるSEMICON Korea 2026は、2026年2月11日から13日までソウルで開催される。
◇韓国、半導体の受託工場検討 官民で4800億円投資 (12月12日付け 日経)
→韓国政府は官民で半導体のファウンドリー(受託生産)工場を建設する計画を明らかにした。投資額は4兆5000億ウォン(約4800億円)。AI分野の競争力を高めるため、多様な半導体の国産化を推進する。
政府がこのほど半導体に関する政策を公表した。回路線幅が40ナノメートル級で12インチウエハーの半導体を製造する工場を新設する。半導体の技術レベルとしては成熟品に相当し、車両や電力の制御などに使うシステム半導体を生産する。
【Nvidia関連】
冒頭で取り上げているNvidiaであるが、その他の同社関連として、以下に注目している。
◇The Virtuous Cycle of AI (12月9日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→AIはあらゆるところに浸透し、急速に進化している。最も興味深いのは、AIがチップの設計と製造において「好循環」、つまりフィードバックループを通じて自らを強化し、継続的な成功へと導く好循環の中でどのように活用されているかを見ることである。
NVIDIAのバイスプレジデント、Jim Chambers氏は、Phoenixで開催されたSEMICON Westの直前にApplied Materialsが主催したテクノロジー・ブレックファスト・イベントで、AIがチップ設計をどのように変えているのかを解説した。「現在、チップ設計におけるLLM(大規模言語モデル)のユースケースの多様性が爆発的に増加している。RTL生成は依然として主要なユースケースの一つであるが、テキストメッセージ生成、あらゆる種類のチャットボットや副操縦士、並びにハードウェアセキュリティなど、新たなユースケースも登場している。」
◇NVIDIA’s Latest Software Service Tracks GPU Location To Tackle Trafficking & Smuggling Networks, Confirms There’s No “Kill Switch”―Nvidia debuts software to track AI GPUs, tackle smuggling (12月11日付け Wccftech)
→NVIDIAは、データセンター運営者がAI用GPUsのリアルタイム位置追跡を支援し、特に米国の輸出規制対象地域への違法取引を防止するソフトウェアサービスを導入した。このサービスは、当初Blackwell GPUsを対象としており、テレメトリを用いて健全性、整合性および在庫を監視し、データはNVIDIA GPU Cloudポータルでホストされる。
◇Nvidia’s new software could help trace where its AI chips end up (12月11日付け CNBC)
→1)*NVIDIAの新しいオプトインサービスは、特定のGPUsがどの国で動作しているかを特定するのに役立つ位置情報データを提供する。
*これは、ワシントンD.C.のチップ規制の執行に役立つ可能性がある。
*しかし、NVIDIAは、このソフトウェアには「キルスイッチ」は含まれていないと述べている。
2)NVIDIAは、AI GPUsの位置確認機能を提供するソフトウェアを開発しており、顧客が使用状況を監視し、米国の輸出規制への準拠を確保できるようにする。この読み取り専用システムは、「キルスイッチ」なしでテレメトリを追跡し、中国での規制対象チップの使用を防ぐことを目指している。
【Rapidus】
関連記事を取り出して以下の通りであるが、3メガバンクの融資の意向が伝わって、民間出資の道筋が開けてきた今週である。
◇What TSMC and Shakespeare can teach Rapidus (12月7日付け Taipei Times)
→1)国が支えるRapidusは飛躍を目指す中で、TSMCやさらに遡る歴史から学ぶべき教訓がある。
2)日本のRapidusは、2nmチップの量産化を加速させ、国が支援するイノベーションに大きく賭け、日本の半導体産業の再生を目指している。この取り組みは、AI需要の急増と地政学的圧力をターゲットとしているが、人材不足とTSMCのサプライチェーンにおける優位性という課題に直面している。
◇3メガ、ラピダスに融資へ 最大2兆円、27年度以降 (12月11日付け 共同通信)
→三菱UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクが、先端半導体の国産化を目指すラピダスに対し、最大で計2兆円規模を融資する意向を伝えたことが11日、分かった。2027年度以降に段階的に実行する。3行による融資は初となる。
3行は11日までに融資の条件などを記載した意向表明書を共同で提出した。融資の大半について、経済産業省所管の情報処理推進機構(IPA)が債務保証する方向で調整している。
◇ラピダスに最大2兆円融資 3メガ銀が27年度以降 (12月12日付け 日経)
→最先端半導体の量産を目指すラピダスに対し、三菱UFJ銀行など3メガバンクが融資する意向を伝えたことがわかった。2027年度以降に段階的に最大で計2兆円規模を融資する。27年度からの量産に向け、必要となる投資資金の確保や資金繰りの安定を図る。
3メガバンクは連名で融資の意向を伝える書類をラピダスに提出した。
◇ラピダスに20社超が新規出資 京セラ・千葉銀行など、半導体復権へ連携 (12月12日付け 日経 電子版 11:49)
→最先端半導体の国産化を目指すラピダスに、新たに20社超が出資する。ホンダやキヤノン、京セラなどのほか千葉銀行などが株主に加わる。ソニーグループなど既存株主も追加出資する見通しだ。株主は約30社となり、ラピダスは2025年度の目標としていた1300億円規模の民間からの出資にめどをつける。日本の半導体産業の復権へ体制が整ってきた。
年内にもラピダスが各社と正式に合意し、26年3月までに出資を受ける。
◇先端半導体の試作拠点、29年度に北海道で稼働 経産省が1000億円投資 (12月12日付け 日経 電子版 12:08)
→経済産業省は12日、最先端半導体の試作拠点を2029年度に稼働すると発表した。所管する産業技術総合研究所(産総研)が主体となり、ラピダスの工場が立地する北海道千歳市内で整備する。装置メーカーや部素材企業、大学などが利用できる施設とし、研究開発や競争力強化を後押しする。経産省は1000億円の予算規模を見込む。
◇ラピダス、政府頼み脱却に一歩 株主30社「奉加帳方式」に危うさも (12月12日付け 日経 電子版 18:00)
→最先端半導体の量産を目指すラピダスの株主が現在の8社から、2025年度末までに約30社に拡大する見通しとなった。調達額は当初の目標を超える1300億円に膨らみ、交渉次第ではさらに増える。資金調達の多様化につながる半面、複数社に資金拠出を求める「奉加帳方式」には、経営の意思決定のスピードが鈍るリスクもある。
ラピダスは当初、民間から25年度中に計1000億円を集める目標を掲げた。


