AI半導体、Nvidia1強に分け入る巨大IT各社、とりわけTPUsの脅威
米国は感謝祭(11月27日)の週であるが、今週前半にかけてもAI(人工知能)関連の熱気が引き続いており、特にAI半導体の取り組みの動きが見られている。Nvidiaが圧倒的に引っ張っている現状に対して、巨大ITのGAFAMはじめ、それぞれにカスタム化を図って、割って入ろうとする様相である。中でも注目は、Metaが2027年に自社のデータセンターでGoogleのテンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)の採用を検討している、との報道である。
Nvidiaにとっては看過できない動きであり、TPUsは1世代後れていると反論している。少し目を離すと一変のAI関連の動きであり、関連プレイヤーのAI半導体の今に以下注目する一方、当面随時更新を要する情勢である。
≪AI半導体のカスタム化≫
巨大IT各社のカスタムAI半導体について、次のYouTubeで現状があらわされている。
『Deep dive: Big tech accelerates development of custom AI chips―CNBC compares and contrasts today's AI chips (CNBC/YouTube)』
⇒https://www.youtube.com/watch?v=RBmOgQi4Fr0
現下の取り組みについての見方関連である。
◇Nvidia sales are ‘off the charts,’ but Google, Amazon and others now make their own custom AI chips (11月21日付け CNBC)
→1)*NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン氏によると、同社のBlackwellシステムの売上は「桁外れ」とのことであるが、アナリストたちはASICsと呼ばれるカスタムAIチップの急成長を予測している。
*これらの小型で安価、かつ用途が限定されたAIチップは、Google、Amazon、Meta、MicrosoftおよびOpenAIによって社内設計されている。
*GoogleのTPU(Tensor Processing Unit)はAI向けASICsのリーダーであり、技術的にはNVIDIAのGPUsと同等、あるいはそれ以上だと考える人もいると、「Chip War」の著者であるChris Miller氏はCNBCに語った。
2)NVIDIAは、GPUsがAIワークロードの主流を占める中、利益の急増で予想を上回ったが、AIチップ市場は多様化している。大手テクノロジー企業によるカスタムASICs、FPGAs、そしてon-deviceチップが勢いを増し、GPUへの依存に挑戦すると同時に、急速なイノベーションを促進している。
◇メタなど米テック、簿外資金で巨額AI投資 投資家にリスク転嫁 (11月26日付け 日経 電子版 06:15)
→米国のテクノロジー企業が巨額のAIデータセンター投資を賄うため、共同出資会社や証券化商品など自社の貸借対照表に載らないオフバランス(簿外)の仕組みで資金調達を加速している。自分の財務は傷めずに、リスクを投資家に移せる。ただ、AI巨額投資がうまくいかなければ追加的な資金調達が難しくなる可能性もある。
各社別に、それぞれの関連する取り組み&内容を取り出している。
自動運転に向けたTeslaから始まって、以下続いていく。
[Tesla]
◇Musk Says Tesla Nears AI5 Chip Tape Out, Starting Work on AI6―Tesla pursues annual AI chip releases (11月23日付け Yahoo/Bloomberg)
→テスラのCEO、イーロン・マスク氏は、AI5チップの設計を最終段階に進めており、AI6チップの開発を開始したと述べた。完成次第、テスラの車両とデータセンターに搭載される予定だ。マスク氏は、AI4チップが現在稼働しており、AI5チップはテープアウトが間近に迫っていることから、12ヶ月ごとに新しいAIチップ設計を導入するというテスラのコミットメントを改めて強調した。
◇Elon Musk says Tesla's hiring for its big AI chip push - and he's 'deeply involved' in the design meetings (11月23日付け Business Insider)
→*イーロン・マスク氏は、テスラがAIチップの開発を強化する中、エンジニアの応募を呼びかけている。
*テスラのAIハードウェアチームで募集している職種には、設計エンジニア職も含まれる。
*マスク氏は、テスラのチップ設計に「深く関わっている」と述べ、週2回エンジニアとミーティングを行っている。
◇Elon Musk reveals Tesla's in-house AI chip roagmap (11月24日付け The Economic Times (India))
→同社によれば、A14チップは現在車両に搭載されており、A15はテープアウトが近づいており、A16は12ヶ月ごとに新しいチップをリリースすることを目標としており、初期設計段階にあるという。
◇[News] Musk: Tesla’s In-House AI5 Chip to Tape Out, AI6 Development Underway (11月25日付け TrendForce)
→テスラは自社製AI5チップのテープアウトを間もなく開始する。AI4の5倍に相当する2000〜2500TOPSの性能を実現し、高度な監視なしの自律走行を実現する。マスク氏は、チップの年間リリース、AI5/AI6のデュアルファウンドリ生産、そして車両、データセンター、オプティマスロボットへの幅広い展開を目指している。
GoogleのTPUsをメタが採用か、との報道を受けて、Nvidiaの反論が見られる以下の内容である。
[Google]
◇Google must double AI serving capacity every 6 months to meet demand, AI infrastructure boss tells employees (11月21日付け CNBC)
→1)*先日行われた全社ミーティングで、GoogleのAIインフラストラクチャ責任者であるAmin Vahdat氏は、需要に応えるためにコンピューティング能力の増強を急ぐ必要があると述べた。
*ヴァダット氏は、Googleはより効率的なモデルとカスタムシリコンによってAIインフラストラクチャ能力を強化していると述べた。
*ヴァダット氏はプレゼンテーションの中で、「今後は6ヶ月ごとに2倍に成長させる必要がある...次の1000倍は4〜5年で」と書かれたスライドを添付した。
*GoogleのCEO、サンダー・ピチャイ氏はこのミーティングで講演し、AIバブル崩壊の可能性と設備投資について従業員からの質問に答えた。
2)Googleは、急増する需要に対応するため、AIインフラストラクチャ能力を6ヶ月ごとに2倍に拡大し、4〜5年で1000倍の成長を目指している。幹部たちは、過剰な支出をすることなく競合他社を凌駕するために、効率性、カスタムシリコン、そしてDeepMindの研究を強調した。
Broadcomとの連携が次にあらわされている。
◇Broadcom is joining Alphabet in the AI rally. Why investors are jumping in (11月24日付け CNBC)
→1)*月曜日の取引により、ブロードコムの株価は4月9日以来の高値更新に向けて上昇する見込みである。
*ブロードコムの株価上昇は、投資家がGoogleの親会社であるアルファベットの株価を押し上げ続けている中での出来事である。
*両社は、高性能な特定用途向けチップ(ASICs)を通じて関連している。
2)アルファベットのカスタムASICs需要の高まりを背景に、投資家がAI関連銘柄に再び資金を投入したことで、ブロードコムの株価は11.1%急伸した。アナリストは、ブロードコムとGoogleとのTPU分野での緊密な提携、そしてAIチップのワークロードと売上高の勢いが加速していることを理由に、目標株価を引き上げたとしている。
◇Nvidia says its GPUs are a ‘generation ahead’ of Google’s AI chips (11月25日付け CNBC)
→1)*エヌビディアの株価は、主要顧客であるメタがGoogleと契約を結び、同社のTPUをデータセンターに利用する可能性があるとの報道を受け、3%下落した。
*エヌビディアは火曜25日の声明で、「業界を1世代先取りしている」と反論した。
*アナリストによると、エヌビディアはグラフィックプロセッサを駆使し、AIチップ市場の90%以上を占めているが、ここ数週間、Googleの自社製チップが現実的な代替手段として注目を集めている。
2)エヌビディアはAI分野における優位性を守り、自社のBlackwellチップはGoogleのTPUsなどの競合製品よりも1世代先を進んでいると主張した。メタがデータセンター向けに代替AIハードウェアを模索しているにもかかわらず、Nvidiaは優れた性能、汎用性、および市場リーチを強調した。
3)NvidiaはAIインフラにおける優位性を再確認し、Blackwellチップが柔軟性とパワーにおいてGoogleのTPUsを凌駕していると主張した。MetaがGoogleのチップを調査する中、Nvidiaは自社のプラットフォームがあらゆるAIモデルをサポートし、需要の拡大を促し、市場優位性を維持していると強調した。
4)Nvidiaは、ウォール街がGoogleのTPUとの競合を懸念しているにもかかわらず、自社のAIチップは依然として一世代先を行くと主張し、その柔軟性、パワー、そして市場優位性を強調した。同社は、幅広いモデルのサポートと、業界全体におけるBlackwell GPUsの需要の高まりを強調した。
◇Google In Talks To Offer Its AI Chips To Meta; Nvidia, AMD Fall―Google considers selling AI chips to Meta, others (11月25日付け Investor's Business Daily)
→The Informationによると、GoogleはMeta Platformsをはじめとする企業と、彼らのデータセンターでTensor AIチップの使用を許可する交渉を行っているという。従来、GoogleはTPUを社内で使用し、顧客にレンタルしてきたが、この新たなアプローチはチップの直接販売への移行を示唆している。TPUの共同設計者であるBroadcomも支持していると報じられているこの動きは、MetaがAIニーズに主にNvidiaのGPUに依存してきたため、NvidiaやAdvanced Micro Devices(AMD)との競争を生む可能性がある。
◇Nvidia stock falls 4% on report Meta will use Google AI chips―Nvidia stock dips on Google-Meta AI chip reports (11月25日付け CNBC)
→1)*The Informationは、Metaが2027年に自社のデータセンターでGoogleのTPUの採用を検討していると報じた。
*Nvidiaの株価は4%下落した。
*AIインフラを構築する企業は、より多様なチップ供給源を模索している。
2)GoogleがTensor AIチップをMetaに売却する可能性があるとの報道を受け、MetaのGPUサプライヤーであるNvidiaの株価は火曜日のプレマーケット取引で4%下落した。Metaの親会社であるAlphabetの株価は、月曜24日の6%上昇に続き、4.2%上昇した。Google TPUsを共同設計したBroadcomの株価は、月曜日の11%上昇に続き、火曜日のプレマーケット取引で2%上昇した。
◇Google TPUs garner attention as AI chip alternative, but are only a minor threat to Nvidia's dominance - Alphabet's biggest challenge is widespread adoption―Nvidia downplays threat from Google TPUs amid Meta interest―Meta’s reported deal with Google shows a growing interest in alternative AI hardware, but Nvidia says its platform remains unmatched. (11月26日付け Tom's Hardware)
→MetaがAIインフラをTPUsに大きく移行することを検討しているという報道を受け、NVIDIAはGoogleのTPUsがもたらす脅威を軽視している。GoogleのTPUsは大規模言語モデル(LLMs)に最適化されているが、NVIDIAのGPUsはより汎用性が高く、業界のワークフローに深く組み込まれているとNVIDIAは述べている。
◇アルファベット製AI半導体、メタが購入か 一強揺らぐNVIDIA3%安 (11月26日付け 日経 電子版 06:26)
→米メディアによると、アルファベット傘下の米グーグルが独自開発したAI半導体をメタが購入する。25日の米株式市場ではエヌビディア一強体制が揺らぐとの思惑が浮上。アルファベット株は上昇し時価総額4兆ドル(約620兆円)が近づく一方、エヌビディアは3%安となった。
◇NVIDIA、AI半導体独走に変化の兆し Google設計「TPU」が台頭 (11月26日付け 日経 電子版 17:00)
→AI半導体の市場で米エヌビディアの独走状態に変化の兆しが出てきた。米グーグルの高性能なAI半導体「TPU」について、米メタが採用を検討していることがわかった。エヌビディアのAI半導体への競合が台頭することで、高性能品の市場での同社1強状態が変わる可能性がある。
ChatGPTのOpenAIも、ハードウェアデバイス化の線表である。
[OpenAI]
◇Execs say OpenAI has first hardware prototypes, plan to reveal device in 2 years or less (11月24日付け CNBC)
→1)*OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏は金曜21日、人工知能(AI)スタートアップ企業、OpenAIが、ついにハードウェアデバイスの最初のプロトタイプを完成させたと発表した。
*OpenAIは5月、Appleの元デザイン責任者、Jony Ive氏が率いるスタートアップ企業、ioを$6.4 billionで買収した。それ以来、OpenAIとioは開発中のAIデバイスについて比較的沈黙を守ってきた。
*アイブ氏は金曜日、OpenAIが2年以内にハードウェアデバイスを発表すると予想していると述べた。
2)OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏は、ジョニー・アイブ氏のチームと共同開発した最初のハードウェアプロトタイプを完成させたことを明らかにした。これは、より落ち着いたAI主導のデバイス体験に向けた進歩を示している。業界のライバル企業が注視する中、アイブ氏は2年以内に正式発表されると予想している。
[Amazon]
◇Amazon to spend up to $50 billion on AI infrastructure for U.S. government (11月24日付け CNBC)
→1)*Amazonは、米国政府機関を支援するため、AIインフラに最大$50 billionを投資すると発表した。
*このプロジェクトでは、新設データセンターに1.3ギガワットの容量が追加され、Amazonは2026年に着工する予定だ。
*この投資の一環として、政府機関はAmazon Web Services(AWS)のAIツール、AnthropicのClaudeシリーズモデル、NVIDIAチップ、並びにAmazonのカスタムAIチップ「Trainium」を利用できるようになる。
2)Amazonは、米国政府機関の顧客向けにAIおよび高性能コンピューティング(HPC)インフラを拡張するために最大$50 billionを投資し、2026年までに1.3ギガワットの新しいデータセンター容量を追加し、政府機関にAWS AIツール、Anthropicモデル、NVIDIAおよびTrainiumチップへのアクセスを提供する。
[ソフトバンクグループ]
◇ソフトバンクG、米半導体設計アンペアの買収完了 1兆円投資 (11月26日付け 日経 電子版 11:20)
→ソフトバンクグループ(SBG)は26日、3月に表明した米半導体設計アンペア・コンピューティングの買収を完了したと発表した。$6.5 billion(約1兆円)を投じて半導体関連企業を傘下に加える。AIのインフラとなるデータセンター向けの半導体を自前で手掛けて、提携先の米オープンAIとの投資拡大に備える。
各社それぞれの段階にあり、AI半導体化の道のり、道筋も枝分かれの可能性があるが、今後とも目が離せないところである。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□11月25日(火)
我が国の「国家戦略技術」におけるAIおよび半導体の位置づけを確認している。
◇「国家戦略技術」を創設 AI・核融合など6分野 政府、税・予算を重点支援 (日経)
→最重点技術と位置づける国家戦略技術は
(1)AI・先端ロボット
(2)量子
(3)半導体・通信
(4)バイオ・ヘルスケア
(5)核融合
(6)宇宙――
の6分野とする方向だ。内閣府と国家安全保障局(NSS)が中心に選定し、経済産業省や文部科学省などが支援メニューの策定に関与する。
感謝祭を前にした取引、以下に示すように、利下げ観測から4日連続で上げているが、米連邦準備理事会(FRB)内での意見対立で果たして利下げなるか、今週の米国株式市場である。金曜28日の取引も、5日連続の上げとなっている。
◇NYダウ、続伸し202ドル高 利下げ観測でハイテク買い (日経 電子版 05:19)
→24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、終値は前週末比202ドル86セント(0.43%)高の4万6448ドル27セントだった。FRBの追加利下げ観測が高まり、ハイテク株などに買いが広がった。ダウ平均の上げ幅は300ドルを超える場面があった。
□11月26日(水)
◇NYダウ、3日続伸し664ドル高 米指標が利下げ観測支える (日経 電子版 06:57)
→25日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅に3日続伸し、終値は前日比664ドル18セント(1.42%)高の4万7112ドル45セントだった。同日発表の米指標がFRBの利下げ観測を支える内容だったことから、買いが広がった。ダウ平均の上昇幅は一時700ドルを超えた。
□11月27日(木)
◇NYダウ4日続伸、314ドル高 米利下げ観測が支え (日経 電子版 06:56)
→26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸し、終値は前日比314ドル67セント(0.66%)高の4万7427ドル12セントだった。低調な米経済指標を受けて、FRBの追加利下げ観測が改めて意識されて投資家心理が改善した。上げ幅は一時400ドルあまりとなる場面があった。
□11月28日(金)
◇波乱含みのFOMC、意見対立埋まらず 市場は利下げ期待先行 (日経 電子版 04:00)
→FRBは29日から12月9〜10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に参加者が対外発信を控えるブラックアウト期間に入る。実質的には27日の感謝祭から発信がなくなる。市場は利下げを9割近く織り込むが、FOMC内には意見対立が残ったままだ。
□11月29日(土)
◇NYダウは続伸し289ドル高 利下げ観測が支え、主力株に買い (日経 電子版 05:19)
→28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は5日続伸し、終値は前営業日の26日に比べ289ドル30セント(0.60%)高の4万7716ドル42セントだった。
目新しい取引の材料が少ないなか、根強い米利下げ観測を支えに主力株への買いが続いた。
≪市場実態PickUp≫
【機密漏洩の可能性】
インテルにこの7月に入社したTSMC出身者について、機密漏洩の可能性が取り沙汰されている1件であるが、TSMCが訴訟を起こしている。以下、関連する内容である。
◇Intel CEO dismisses reports about stolen TSMC secrets (11月22日付け Taipei Times)
→インテルCEOのリップブ・タン氏は、新任のLo Wen-jen氏がTSMCから企業秘密を持ち出したとの疑惑を否定し、知的財産権の尊重を強調した。TSMCは捜査を進めており、地元検察はインテルとTSMCとの技術競争が続く中、潜在的な法令違反の可能性を調査している。
◇TSMC stock falls as it sues former exec alleging he took trade secrets to Intel (11月25日付け CNBC)
→1)*TSMCは火曜25日、元上級副社長を相手取り、インテルに機密情報を漏洩したとして訴訟を起こした。
*TSMCは声明で、Wei-Jen Lo氏はTSMCに21年間在籍した後、7月に退社しインテルに入社したと述べた。
*TSMCは、ロー氏が「企業秘密および機密情報」を漏洩した可能性が「高い」と述べている。
2)TSMCは、退社後にインテルに機密の企業秘密を漏洩したとして、元上級副社長のロー・ウェイジェン氏を提訴した。この争いは競業避止義務法および企業秘密法に抵触しており、捜査が開始され、TSMCとインテルの株価は急落した。
3)TSMCは、7月に退社した元上級副社長のウェイジェン・ロー氏を、インテルに企業秘密を漏洩したとして提訴した。TSMCは、ロー氏の契約内容と台湾の企業秘密法に基づき、ロー氏が機密情報を漏洩した可能性が高いと主張し、正式な調査を開始した。
4)TSMCは、元上級副社長のウェイジェン・ロー氏を、退社後にインテルに機密の営業秘密を漏洩したとして提訴した。訴訟では、ロー氏の契約、競業避止義務、そして営業秘密法が争点となっており、台湾当局による調査と両社の株価下落につながった。
◇TSMC sues Lo following trade secret probe (11月26日付け Taipei Times)
→1)疑惑:TSMCによると、7月にTSMCを退職したLo Wei-jen元執行副社長は、競合他社のインテルに移籍する計画を明らかにしていなかった。
2)TSMCは、元上級副社長のロー・ウェイジェン氏を提訴した。同氏は企業秘密を盗み、インテルに漏洩したとして、守秘義務契約および競業避止義務契約に違反したとしている。訴訟は、ロー氏がコーポレート戦略部門に異動したにもかかわらず、研究開発データにアクセスしていた際の行動を問題視している。
3)TSMCは、前EVPのLo Wei-jen氏を提訴した。同氏は企業秘密を盗み、インテルに漏洩したとして、守秘義務、競業避止義務、および雇用契約に違反したと主張している。TSMCは、羅氏が7月に退職したにもかかわらず、機密性の高い研究開発活動にアクセスしていたことを理由に損害賠償を求めている。
4)TSMCは、元執行副社長の羅偉仁氏を提訴した。同氏がインテルに企業秘密を漏洩した可能性が高く、雇用契約、守秘義務契約、および競業避止義務契約に違反したと主張している。この訴訟は、TSMCの2nm、A16、およびA14技術に関する疑惑を受けて提起されたものである。
【TSMC関連】
上記の1件以外に、TSMC関連の以下の内容である。TSMCの2-nm品は性能向上が比較的控え目な分、価格も控え目になるかも、とこれも注目である。
◇TSMC chairman, ex-chair receive top semiconductor industry award (11月22日付け Taipei Times)
→TSMC会長のC.C. Wei氏と前会長のMark Liu氏は、先見の明のあるリーダーシップと画期的な製造イノベーションにより、2025年度Robert N. Noyce賞を受賞した。これは、世界の半導体業界を変革した数十年にわたる貢献を称えるものである。
◇A Power Reshuffle Follows GF, TSMC GaN Tie-Up (11月24日付け EE Times)
→1)*TSMCはGFにGaN技術のライセンス供与を行い、撤退を表明した。これは、米国におけるパワー半導体の転換を加速させる。
*TSMCが2年以内にGaN製造を段階的に廃止するという宣言は依然として波紋を呼び続けている。そして、この技術論争の最新のエピソードは、GlobalFoundries(GF)がTSMCの650Vおよび80V GaNパワー半導体製造技術のライセンス供与を受けたことだ。
2)GlobalFoundriesは、TSMCの市場撤退に伴い、同社の650Vおよび80V GaN技術のライセンスを取得することで、米国におけるGaN製造を強化する。この契約により、Navitasを主要パートナーとして確保し、GFのGaN-on-Siロードマップ、エコシステム、そして高出力アプリケーション能力を強化する。
◇TSMC’s 2nm N2 Process Rumored To Have Limited Power, Performance & Area Improvements, Resulting In Lower Cost Increases Per Wafer, Giving Apple & Others Some Relief―Will TSMC's 2nm N2 hold up to its promise? (11月24日付け Wccftech)
→TSMCの次世代2ナノメートルN2プロセスは、3nm N3Eプロセスと比較して15%の性能向上と最大30%の消費電力削減が報告されており、顧客にとって劇的な世代間飛躍は期待できないかもしれない。当初の見積もりではウェハ価格は約3万ドルとされていたが、情報筋によると実際のコストはそれより低額になる可能性があり、2026年にこの新ノードの導入を計画しているチップメーカーにとって、この新ノードの経済的負担は軽減されるだろう。
◇[News] TSMC’s 2026 CapEx Reportedly Near US$50B, Driven by 2nm Expansion and Global Buildout (11月24日付け TrendForce)
→TSMCの2025年フォーラムでは、AI需要の高まりにより2026年の予測が$50Bに押し上げられる中、設備投資の急増を示唆している。サプライチェーンは、A16および2nmプロセスの立ち上げ、消耗品の急速な成長、OSATの力強い勢い、そしてグローバル展開の加速を見据えており、拡張計画の明確化とスピードが大幅に加速している。
【Nvidia関連】
片時も目が離せないNvidia関連の動き、すでに上記している部分もあるが、以下では特に、AIサーバに低消費電力DDR(LPDDR)メモリを採用する動きが今後の半導体市場を押し上げる可能性である。
◇Nvidia’s $1 Billion Bet on Nokia to Rewire Global Telecom (11月20日付け EE Times)
→NVIDIAによるNokiaへの$1 billionの投資は、AI-RANを通じてモバイルネットワークを変革し、携帯電話基地局をインテリジェントな収益創出資産へと転換することを目指している。両社はGPUsとAIを統合することで、効率性の向上、新たな収益源の創出、そして6Gに向けた飛躍を目指している。
◇Nvidia shifts to LPDDR for AI servers, Samsung poised to benefit most―Nvidia adopts low-power DDR for AI servers (11月24日付け DigiTimes)
→Nvidiaは、電力効率の向上を目指し、サーバーにLPDDRメモリを採用すると報じられており、これはメモリアーキテクチャに大きな転換をもたらすものである。業界アナリストは、この動きにより、LPDDRがAI時代の中核半導体となる可能性を示唆している。
◇Nvidia’s H200 chips could be ‘sugar-coated bullets’ for China (11月25日付け Asia Times)
→1)中国の専門家は、NVIDIAのエコシステムへの依存は国内のイノベーションを阻害し、長期的な技術の自立性を弱める可能性があると警告している。
2)ワシントンは、NVIDIAのH200 GPUの中国への輸出を許可するかどうかを検討しており、中国では戦略的な罠への警戒感が高まっている。この見直しは、市場全体の上昇にもかかわらず、密輸事件の増加と投資家による売り圧力によって中国の主要半導体銘柄が打撃を受ける中で行われた。
【Nexperia問題関連】
オランダ政府が打開策の可能性を示唆しているが、依然尾を引いて、自動車市場へのインパクトが見られている。随時の定点観測である。
◇Nexperia’s Chinese owner vows to use ‘all legal means’ to take back control of chipmaker (11月21日付け South China Morning Post)
→1)オランダの裁判所におけるこの訴訟は、完全な解決までに最長3年半を要する「マラソン」となる可能性があると、法律専門家は述べている。
2)Wingtech Technologyは、オランダ企業会議所が同社のCEOを解任したことを受け、オランダの半導体メーカー、ネクスペリア社の経営権を取り戻すためにあらゆる法的手段を用いると表明し、中国人株主への継続的な規制を批判するとともに、長期にわたる法廷闘争は3年以上続く可能性があると警告した。
◇How the Nexperia chip crisis upended auto supply chains - again―Automakers face supply chain test with Nexperia chip crisis (11月24日付け Reuters)
→1)*中国のサプライチェーンにおける優位性は、ありふれた部品にも及び、世界の生産に影響を及ぼしている。
*専門家によると、自動車メーカーは過去のサプライチェーンの混乱から学ぶことができなかったという。
*オランダ政府、ネクスペリア社の経営権を撤回、打開策の可能性を示唆
2)オランダの半導体メーカー、ネクスペリア社をめぐる危機は、自動車サプライチェーン、特にローテク半導体の脆弱性を露呈させた。オランダ政府は最近、半導体メーカー、ネクスペリア社の経営権を剥奪した。その理由は、同社の中国親会社であるWingtech社への技術移転を懸念したためだ。この動きは中国政府による迅速な報復を招き、自動車産業にとって極めて重要なネクスペリア社製完成品半導体の輸出を停止させた。オランダは後に介入を撤回したが、この事件は、グローバルに統合されたサプライチェーンへの対応における各国政府の対応の限界を示すケーススタディとなった。
◇Renault CEO backs new EU rules on sourcing local parts, but seeks broader definition―Renault CEO backs EU local content rules but urges flexibility (11月24日付け Reuters)
→ルノーCEOのFrancois Provost氏は、欧州のサプライヤーを中国の競争から守るため、EU全域にわたる現地調達ルールへの支持を明言したが、ルノーの支持はより広範で柔軟な定義に基づいていると強調した。プロヴォスト氏は、モデルごとに厳格な要件を設けるのではなく、メーカー全体の売上高全体にわたって現地調達率を平均化することを提唱している。
◇ホンダの下期世界販売、半導体不足で日本車2位→4位に 3強崩れる (11月25日付け 日経 電子版 05:00)
→ホンダは半導体不足を受けた北米生産の減産により、2025年度下半期の世界販売が前年同期比14%減の166万台に落ち込む見通しだ。日本車メーカーの順位では前年同期の2位から4位に下がり、スズキが2位に浮上する。長く続いてきたトヨタ自動車・日産自動車との大手3強が崩れる。
供給網リスクの影響の大きさが浮き彫りとなった。
【Rapidus関連】
現下の2-nmに続いて、その先の1.4-nm対応の工場建設⇒生産に取り組む線表があらわされている。日進月歩の半導体の進展であり、先々を明確にして、着実に足元をしっかり固める、ひたすらの取り組みである。
◇Rapidus to start construction on 1.4nm fab in 2027 - research and development on node to begin next year―Rapidus to build 1.4nm chip fab in Hokkaido starting 2027―The Japanese chipmaker is looking to take on established fabs. (11月25日付け Tom's Hardware)
→TSMCに対抗する日本の地場企業、ラピダスは、2027年度に次世代1.4ナノメートル工場の建設を開始し、2029年には北海道で生産を開始する予定であると発表した。日経アジアによると、この動きは、今年初めに既に1.4ナノメートル技術を発表している台湾の半導体大手、TSMCとの差を縮める上で、日本の半導体メーカーにとって大きな助けとなるだろう。同社はまた、来年から同ノードの本格的な研究開発(R&D)を開始すると発表した。
◇ラピダス、世界最先端1.4ナノ半導体新工場 29年稼働でTSMCを追う (11月25日付け 日経 電子版 19:38)
→最先端半導体の国産化を目指すラピダスは2027年度に北海道千歳市で2棟目の工場に着工する。世界最先端となる回路線幅1.4ナノメートルの半導体の生産を29年にも始める。先行するTSMCを追う。
総投資額は数兆円で、政府による数千億円の出資を研究開発に活用する。日本の半導体産業の復権へ懸けとなる。
◇ラピダスが挑む半導体1.4ナノの壁、歩留まり向上なら顧客開拓に追い風 (11月26日付け 日経 電子版 02:00)
→最先端半導体の量産を目指すラピダスが2027年度に第2工場を着工し、次世代の回路線幅1.4ナノメートル半導体を生産する。半導体の微細化が難しくなるなかで先端技術の開発をアピールできれば、顧客開拓の追い風となる。2ナノの量産技術の開発をはじめ、乗り越えるべきハードルは高い。1.4ナノは水面下で研究開発を進めていた。欧米の半導体研究機関とも連携している。


