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非接触で心拍を観測するミリ波レーダーをパナソニックと京大が開発

パナソニックは京都大学大学院情報学研究科の佐藤亨教授グループと共同で、ミリ波の反射を使い非接触で心拍を計測する技術を開発、これからの見守りサービスやヘルスケアサービスにつなげられるような将来像を描いている。

図1 非接触で心拍状態を計測するミリ波レーダー装置(左) 右側の女性の心拍状態を計測している 心拍の動きの波形は液晶などでモニターできる

図1 非接触で心拍状態を計測するミリ波レーダー装置(左) 右側の女性の心拍状態を計測している 心拍の動きの波形は液晶などでモニターできる


佐藤教授が属する京都大学COI(Center of Innovation)は、ヘルスケアや病気の早期発見、病後のサポートなど、人々に安心をもたらす社会作りを目指しており、佐藤教授は今回の非接触の心拍状態を計測するバイタルセンシングを専門とする。これまで心拍を測定する場合は、横になり体にパッドを張り付けて心電図として計測していた。しかし、これでは24時間連続測定は難しく、ある時間の状態しか観測できなかった。今回の非接触計測だと、睡眠中や、椅子に座っている状態でも計測できる。

非接触計測のために、京都大学COIはパナソニックと組み、ミリ波レーダーを使ったスペクトラム拡散技術によって高感度で心拍信号を捉えることに成功した。ミリ波は波長がミリメートルと短い電磁波で、その周波数は30GHz(波長10mm)〜300GHz(波長1mm)になる。この間の波長として使える電波帯は24GHz帯の準ミリ波、60GHz帯(WiGigなどで使用)、77GHz帯(自動車の衝突防止レーダー)、79GHz帯(新たに割り当てられた車載レーダー)である。

ミリ波のように電磁波は、周波数が高くなればなるほど直進性が増すため、自動車の前を走るクルマや自転車、人などを検出できる。77GHz程度だとおよそ開口角90度程度の範囲で電波は飛んでいくという。元々パナソニックは、ミリ波をスペクトル拡散で変調するレーダー技術を持っているが、心臓のような非常に細かい変位を測ることは難しく、今回京都大学と一緒に心臓の動きを検出できる技術を開発した。京都大学は、センサ信号を取り出して意味のある動作に変換するアルゴリズムも開発する。

レーダーは電波を飛ばし、対象物に反射してくる電波を検出する装置で、その位相差で距離を計測するシステム。今回の計測システムでは、ミリ波を発射し人体に当たって跳ね返ってくる電波を検出、心臓が動いていると収縮した時と膨張した時の距離の違いを計測する。しかし、人間はじっとしていられない。呼吸はするし、手も動かす。時には貧乏ゆすりもある。呼吸している身体表面の変位は1mm〜50mm、心拍は0.1mm〜0.5mmの変位を示すという。さまざまなノイズに埋まった信号を取り出す作業がこの技術の難しさである。もちろん、昔から、時間的に繰り返す信号をフーリエ変換して、信号を強調しノイズとの差を広げる技術はある。この技術はもちろん使う。

それだけではない。さらにデジタル変調して、スペクトラム拡散(Spread Spectrum)技術も使う。周波数スペクトルを広く取り、その中を次から次へと飛び跳ねて、同調をさせない盗聴防止システムとして米軍が開発した技術だ。また、符合化し、それを広がった周波数に拡散させる方式もある。ここでは、変調符合の往復時間で被験者の位置を計測し、さらに信号の位相変化で体表面の動きを計測する。

信号波形を1次微分、2次微分によって、心拍波形の複数の特異点の遷移パターンを作り、そのパターンから心拍間隔を推定する。心拍の間隔時間の精度を、実際の心電図における心拍間隔との相関を取ってみると、ほとんど一致した。その相関係数は0.993であった。なお、今回は感度を上げるため、4×4のMIMOアンテナを使った。

この装置を実際に使えるようにするため、今後、医師とも連携することを視野に入れているという。今回の実験では座っている人だけの心拍を取ることができるが、今後は複数の人の心拍状態を観測できるようにしたり、眠っている間の心拍状態や一人暮らしの高齢者のモニターなどにも活用したりしたいという。

(2016/02/12)

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