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東京エレクトロン、素早い対応で台湾メディアのナラティブを封じる

東京エレクトロンは、台湾子会社の元従業員1名がTSMCから機密情報を不正に取得した事案に関与していたことを確認したと発表した。先週は、ソニーとキオクシアから2025年4〜6月期の決算発表があった。すでに発表のあったルネサスを含め大手日本企業3社の間ではソニーが最も良い業績であった。また、OpenAIがGPT-5を発表したが、不正確な回答を減らし、正解率を高めた。

TSMC Fab 18

図1 3nmの主力工場であるTSMCのFab 18 2nmの量産工場はこれとは別のFab20に 出典:TSMC


台湾の検察当局は8月5日にTSMCが持つ自国の革新的技術を不正に取得したとして、同社の社員3人を逮捕したと発表していた(参考資料1)。8月6日の日本経済新聞によると、この機密情報は、TSMCが持つ2nmプロセスに関する半導体開発と製造に関する情報だという。さらに、TSMCと取引のある日本の半導体製造装置大手、東京エレクトロン(TEL)の台湾にある事務所が関係先として家宅捜索を受けたとも報じられている。この時点では、TEL側も事実関係の調査に忙殺され、コメントは述べていなかった。

この発表を巡り、台湾メディアの報道は加熱し、あたかも日本チームがこの技術盗難事案に関係しているかのような報道が見受けられた。というのは、2nm技術はラピダスがIBMから支援を受けて開発していること、さらにTELの元社長、会長であった東哲郎氏がラピダスの会長を兼ねていること、などから台湾メディアは、TEL台湾、ラピダスといった日本チームが関与していたのではないかという疑いからストーリーを捏造したようだ。

これらに対しTELの対応は早かった。7日に、「当社の子会社であるTokyo Electron Taiwan Ltd.の元従業員1名が、台湾司法当局が2025年8月5日付で発表した事案に関与していたことを確認いたしました」と発表した(参考資料2)。さらに、「当社は、法令遵守および倫理基準の徹底を経営の最重要事項と位置付けており、これに反するいかなる行為も断じて容認しておりません。関与した台湾子会社の元従業員についてはすでに懲戒解雇の措置を講じており、台湾司法当局による捜査に全面的に協力しております」と述べている。しかも、「当社による調査では、現時点において関連する機密情報の外部への流出は確認されておりません」と説明している。機密情報の不正入手に関係したTEL台湾の従業員からTEL、さらに外部へ流れたという事実はないということは、ラピダスは全く関係していないという意味だ。

台湾メディアに限らず、事実を歪め捏造して作るストーリー(ナラティブ:narrativeという)が流れることが日本社会にも蔓延しているが、このことは決して社会にとって良いことではない。何が事実なのか、しっかりと見極める、そのために複数のソースからの情報を集め、真実かどうかを判断する必要が一人一人に求められるような時代になった。


ソニーとキオクシアの決算発表では、ソニーセミコンダクタソリューションズの売上額は、前年同期比15.5%増の4082億円となり、営業利益は543億円、営業利益率13.3%になった。キオクシアの売上額は、同20%減の3428億円、営業利益452億円であった。営業利益率は13.2%と、ソニーとほぼ同じになった。ちなみにルネサスの売上額は同9.5%減の3246億円だが、営業利益は919億円となり、営業利益率が28.3%と3社の中で最も高い。


GPT-5は、高品質なコード作成だけではなく、バグ修正やコード編集、複雑なコードベースに関する質問への回答まで、日々のコーディング業務を高精度でこなすという開発者向けの生成AIだという。社内テストでウェブ開発ではOpenAI o3を70%上回ったとしている。これまでの生成AIと比べて、インテリジェント(正確さ)と処理の高速化が最大の特長だと述べている。

参考資料
1. 杉本りうこ、「【台湾報道】TSMCから「最先端2ナノ」核心技術が装置メーカーに流出→元従業員3人を逮捕、東京エレクトロンも捜査対象に浮上」、東洋経済オンライン、(2025/08/06)
2. 「当社に関する報道について」、東京エレクトロン ニュースルーム、(2025/08/07)

(2025/08/12)

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