Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

新半導体工場の周囲に建設される製造装置やサービス工場、相次ぐ

半導体工場の周りに製造装置や流通拠点などの新工場が続々建設投資に沸いている。TSMCの熊本工場、ラピダスの千歳工場の周囲工場だけではなく、台湾の南部、台南市のTSMC工場近くにも東京エレクトロンの新工場ができた。台南工業団地の生産額が北部の新竹サイエンスパークでの生産額を初めて超えたという。Intelは2024年第3四半期の業績悪化によりPat Gelsinger CEOが退任した。

図1 熊本県菊陽町に立地する富士フィルムの生産拠点 出典:富士フィルム

図1 熊本県菊陽町に立地する富士フィルムの生産拠点 出典:富士フィルム


富士フィルムは、子会社の富士フィルムマテリアルマニュファクチュアリングの第8製造本部(熊本県菊陽町)で多層配線などの平たん化プロセスに使うCMP(化学的機械研磨)スラリーの生産設備を増強すると発表した。菊陽町はTSMCの熊本工場のある町。約20億円を投じ熊本拠点に、銅配線用を含めたCMPスラリーの生産設備を約3割増強する。今回の設備投資により同拠点のCMPスラリーの生産能力を約3割拡大する。富士フィルムはCMPスラリーに加え、その後に粒子、微量金属および有機残留物を洗浄するポストCMPクリーナーも提供しているため、これらの材料を組合わせたプロセスを提案できる強みを持つとしている。

また、熊本県宇城市にある永井運送は、クリーンルーム併設型の物流倉庫を宇城市内に建設する、と12月6日の日本経済新聞地方版が伝えた。投資額は約40億円で、主に半導体製造装置や資材などを取り扱う計画だ。新設する倉庫は2階建てで、延べ床面積は約1万1000平方メートル。このうち1階部分の約5500平方メートルをクリーンルームとする予定で、半導体製造装置の保管や梱包などをする計画だ。2025年10月の稼働を見込む。

東京都内に本社を持つ、配管の継ぎ手を生産するテクノフレックスは、北海道苫小牧市の東部地域に新工場を24年6月に着工することを発表していたが、このほど竣工、12月中にも稼働させる、と6日の日刊工業新聞が報じた。テクノフレックスグループでは半導体⼯場に設置される真空配管(半導体などの製造⼯程で特殊なガスを給排気するための配管)や半導体製造装置に使⽤される真空機器(真空配管に⽤いる管と周辺部材)の製造・販売業(テクノフレックス)、真空配管の設置⼯事業及び真空配管のプレハブ加⼯業(TFエンジニアリング)といった3つの半導体関連事業などを手掛けている。

TOPPANは、経営破綻したJOLEDの能美事業所を1年前に買収したが、このほど「新工場の開所式を開いた」、と5日の日経地方版が報じた。大型ガラス基板を扱っていたディスプレイ工場は、ガラス基板を用いる先端パッケージ工場と共通部分が多いため、小さな変更で先端パッケージ工場として使うことができる。FC- BGAやチップレットなどの先端パッケージを扱うのに都合がよい。次世代半導体パッケージの生産ラインは27年度中の稼働を目指しており、28年ごろに300人程度の採用を確保する、と日経は報じている。

東京エレクトロンは、台湾の台南市に半導体製造装置の顧客向けサービス拠点を竣工した、と4日の日経が報じた。台南には3nm/5nmプロセスを扱うTSMCのFab 18がある。竣工した「台南オペレーションセンター」では、半導体のテストや装置のメンテナンス機能を備え、技術者など1000人超が働く見込みだという。

Intelの Pat Gelsinger氏が12月1日付けで退任した。2024年第3四半期(7〜9月期)に過去最大となる166.39億ドルという巨額の赤字を計上した責任を取った形になる。Gelsinger氏が2021年に就任するまで、Andy Grove以後、エンジニアとしての実績がない文系のCEOが続いてきており、技術競争力が低下する一方だった。かつてIntelのCTOだったGelsinger氏がIntelに戻り、製造プロセスの立て直しを図ってきたが、力尽きた格好だ。特にファウンドリを推進してきたものの、顧客として自社の設計部門しか取り込めなかったために、ファウンドリ部門の大赤字がIntel全体の赤字となった。

ファウンドリビジネスで最も重要なことは、製造ラインを構築するだけではなく、顧客の信頼を勝ち取るために設計知識の豊富なビジネスパーソンが欠かせない。しかし、残念ながらIntelでは製造ラインの技術力アップに努力を費やし、営業パーソンの確保や設計専門のデザインハウスのネットワークを構築するなどで目立った動きが全くなかった。これまで日本のIDMがファウンドリビジネスと称した素人商売と変わらなかった。

(2024/12/09)
ご意見・ご感想