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グーグルはファブレス半導体部門を持つのか

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国内では半導体事業の縮小や、工場の閉鎖といったニュースが相次ぐ中、インターネットサービス業者であるグーグルが、半導体の自社設計を検討しているというニュースが飛び込んできた。日本経済新聞が12月14日に報じたが、米国では、Bloombergをはじめ、Wall Street Journal、U.S.News、CNET等、様々なメディアが論評した。

このトピックの第1報は、Bloombergが伝えたものだが、次のように述べている。「『グーグルはARM社の技術を使って、自社のサーバー用プロセッサを開発することを考えている』、とある業界筋が述べている。インテルにとっては脅威となりそうだ。加えて、『独自設計により、グーグルはハードウエアとソフトウエアとの間のやり取りを管理できるはずだ』、とも業界筋は語っている」。

これに対して、グーグルの広報部門は、「グーグルは世界で一番良いインフラをデザインする業務に熱心だ。これには、(あらゆるレベルの)ハードウエア設計とソフトウエア設計を含む」とだけ、述べている。グーグルが半導体チップを設計するかしないかについては言明を避けている。

ARMは64ビットのARM v8Aプロセッサアーキテクチャを発表しており、同社の脱携帯の動きは活発化している。ARMは創業以来、一貫して32ビットRISCアーキテクチャの低消費電力プロセッサを開発・製品化してきた。ここ数年は、脱携帯を掲げ、携帯電話や、スマートフォン・タブレットなどのモバイル端末用から、工業用マイコン用のコアCortex-Mシリーズや、ハイエンド用ARM v8A シリーズ(Cortex-A15ないしCortex-A53/A57)のハイエンドコアへと手を広げている。

グーグルがサーバー向けにARMコアを使うのであれば、ARM v8Aシリーズのコアになるだろう。インテルと競合するIPコアはこのコアしかないからである。一方で、サーバー向けのプロセッサに強いインテルは、Xeonプロセッサなどの実績がある。AMDもサーバー向けOpteronの実績に加え、64ビットのARM Cortex-A57を最大8コアまで集積できるSoC「Hierofalcon」を2014年第2四半期にサンプル出荷する(参考資料1)。10Gbps EthernetとPCIe Gen3インタフェースを備えており、AMDとして初のARMアーキテクチャとなる。

アップルやグーグルなどのインターネットサービスに力を入れる企業は、実は自社製の半導体を作りたいと考えているはずだ。アップルはすでに自社製のA5/6/7シリーズをスマホやタブレット用に製品化してきた。さらに今年になって、Passif SemiconductorというBluetooth LE (low energy) チップの企業を買収した。ところが、グーグルはチップ設計技術を持っていない。これまでGoogleは台湾のファブレスHimaxの株6.3%取得、LCOS(liquid crystal on silicon)技術でグーグルグラスを設計製造するため、と目されている。しかし、本格的な半導体設計には関与していなかった。

半導体設計技術を持っているのと持っていないのでは、これからの新成長分野での独自機能を実現する手段を持っているかいないかに相当するほど、大きく異なってくる。グーグルは、ビッグデータの解析と、クラウドコンピューティングの中核を担う自律的(オートノミック)コンピュータを実現し、サービスにつなげていくうえで半導体チップの設計が欠かせないと考えているに違いない。グーグルが欲しいチップは、単なるハイエンドのプロセッサだけではなく、オートノミックコンピューティング(参考資料2)を実現するためのチップであろう。クラウドコンピューティング業者は、単なるASP(アプリケーションサービスプロバイダ)ではない。クラウドでユーザーからのサービスリクエストを受け取ると、該当するサービスを自律的に探し、それをユーザーに自動的に提供できる仕組みをオートノミックコンピュータで実現するのである。IT技術の大きな変化に注目する必要がある。

参考資料
1. 組み込みシステムになびくAMD/IPextreme/Mentor〜EuroAsia 2013から (2) (2013/11/06)
2. 岩野和生「ITの役割とIT企業のグローバル戦略」、電子情報通信学会主催:LSIとシステムのワークショップ(講演)、2013年5月13-15日
プログラム概要

(2013/12/16)

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