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組み込みシステムになびくAMD/IPextreme/Mentor〜EuroAsia2013から(2)

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脱パソコンから組み込みシステムへの流れが加速している。組み込みシステムとは、コンピュータと同じような機能ブロック、すなわちCPUとメモリ、周辺、I/Oなどからなるハードウエアシステムのことを指す。CPUメーカーのAMDは組み込みCPUに力を入れ、IT流通サービスのIPextremeはColdFireを組み込み系に使い、EDAのMentorはハイパーバイザの導入でSoCの仮想化を支援する。

図1 AMDが組み込み系で強化する製品ポートフォリオ 出典:AMD

図1 AMDが組み込み系で強化する製品ポートフォリオ 出典:AMD


これまでパソコン用x86アーキテクチャをベースにしたCPUに力を入れてきたAMDが組み込みシステム用途に向けたプロセッサのポートフォリオを充実させてきている。2014年からサンプル出荷を始める4製品を発表した。

高性能を特長とするAMDの組み込み用RシリーズのAPU/CPUの後継として、x86アーキテクチャのAPUおよびCPUである「Bald Eagle」には、新しいCPUマルチコア「Steamroller」を集積、APUにはGCN(グラフィクスコアネクスト)ベースのGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)を集積している。APUのメモリにはECC(誤り訂正符号)を集積した。28nmという微細なプロセスゆえの低電圧化・大電流に対応するため電源回路も内蔵している。もう一つ高性能製品は、64ビットのARM Cortex-A57を集積したSoC「Hierofalcon」である。これは、最大8個のARMコアを搭載できる。AMDとして初のARMアーキテクチャとなる。インタフェースが充実しており、10Gbps EthernetとPCIe Gen3に接続できる。ARMが開発したセキュリティシステムのTrustZoneをサポートしている。サンプル出荷は、Bald Eagleが2014年第1四半期、Hierofalconが第2四半期を予定している。

消費電力17~35Wの「Bald Eagle」15~30Wの「Hierofalcon」に対して、低消費電力の「Steppe Eagle」も提供する。これは、5~25Wの消費電力で、AMDのGシリーズの後継である。Jaguarコアを拡張し、W当たりの性能を上げたという。サンプル出荷は14年第2四半期。

GPU単体として、Radeonの後継チップ「Adelaar」も発表した。これは、2Gバイトのメモリを内蔵、マルチチップモジュールMCMの形で供給するほか、PCIeインタフェースを搭載したモジュールとしても提供する。サンプル出荷は2014年1月を予定。すべて28nmプロセスを使用。

IPの流通業者であるIPextreme社は、FreescaleやNXP、Infineon、TI、Intelなどが持つIPコアをチップ内から抽出し、ライセンス可能なIPに構成し直すというサービスを行っている。同社はこのほど、FreescaleのプロセッサColdFireファミリを使うための開発プラットフォームV1を発表した。このプラットフォームには、ColdFireプロセッサコアと、よく使われる周辺の回路を搭載している(図2)。


図2 ColdFireプロセッサコアを使ったSoCを設計できる

図2 ColdFireプロセッサコアを使ったSoCを設計できる


このプラットフォームでは、シングルワイヤーのデバッグインタフェースや、DSP演算用に拡張したMAC機能、暗号アクセラレータなど、CPU回りに集積する回路をオプションで選択できる。外部のRAM、ROMとのメモリコントローラや4チャンネルDMAコントローラ、タイマー、SPI、I2CなどマイコンやSoCを構成するのに必要な回路も選択できる。HDLパラメータを調整すると、設計のさまざまなトレードオフを見つけることができるため、最終的に設計したいチップに必要な回路を絞り込むことができ、小さな面積で消費電力の少ないチップをカスタマイズできる。

IPextremeはさらにこのほど、Mentor Graphics社とも提携した。これによりIPextremeの持つ豊富なライセンス可能なIPと、それを管理するためのソフトウエアプラットフォームXenaをMentorの販路で売ることになる。

組込システムでは、CPUコアが一つではないシステムが増えている。しかも、マルチコアプロセッサでも異なるOSで走らせたりすることもある。このような仮想化技術では、各プロセッサを管理するためのハイパーバイザが大きな役割を果たす。Mentor Graphicsは、車載のインフォテインメント系や、テレマティックス系、ADAS(先端運転支援システム)などの組み込みシステム用途を狙い、セキュアなハイパーバイザを開発した。


図3 セキュアな仮想化システムを実現するハイパーバイザ 出典:Mentor Graphcs

図3 セキュアな仮想化システムを実現するハイパーバイザ 出典:Mentor Graphcs


これは、自動車エレクトロニクスにもLinuxやAndroidなどさまざまなOSやプロセッサを載せる組み込みシステムが出てくることに対応したもの。CPUコアにはARMを利用、そのハードウエアとしてのセキュリティを確保するARM TrustZoneをサポートした。これは、メモリや暗号化回路ブロックなどを完全に切り離す環境を作り出すことのできるシステムだという。これにより、車載システムに仮想化技術を適用し、OSやCPUを独立にしかもセキュアに動かすことができるようになる。

参考資料
1. 製品化相次ぐハードウエアのプログラマブルIC〜EuroAsia2013から(1) (2013/10/29)
2. PoE・急速充電・デジタル化・POLと多様化するPMIC〜EuroAsia 2013から(3) (2013/12/18)

(2013/11/06)

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