需要が上向き、攻めの姿勢を見せ始めた半導体・製造装置企業
スマートフォンやタブレットの需要拡大を受け、半導体チップだけではなく、半導体製造装置も好調に推移している。SEAJが発表したB/Bレシオは1.17で、6月22日の日本経済新聞は「受注上振れ」表現でディスコの好調さを伝えている。海外展開は特に半導体製造装置が活発で、後工程装置のTOWAは現地生産すると24日の日刊工業新聞が報じた。
22日の日経は、ディスコの溝呂木会長とのインタビュー記事において、ディスコが4~6月の受注高が対前期(1~3月)比12%増の270億円前後に達すると見られると報じた。期初時点では4~8%増の250~260億円を見込んでいた。台湾の半導体メーカーからの引き合いが強く、7~9月期も「かなり良い水準だと感じている」と述べている。
半導体製造装置では、半導体のモールドパッケージを生産するためのトランスファモールド装置の大手企業であるTOWAが中国でも装置を生産する。初年度10台を販売する計画で、中国向けに最小限の仕様に固めてからコストを抑制し、現行機種よりも3割程度安くするとしている。トランスファモールド装置は、ランナーを通してプレス圧120トンで樹脂を半導体チップに供給し、チップを封止する。最先端の薄く多ピン、微細配線向けパッケージ用のコンプレッションモールド機械(参考資料1)については引き続き国内で生産する。
モールド樹脂メーカーの住友ベークライトは、海外事業を再編し、江蘇省蘇州市の拠点では半導体封止用エポキシ樹脂に、同省南通市の工場ではフェノール樹脂複合材料にそれぞれ生産を特化する。半導体用搬送キャリヤテープ事業では2013年度内に成型品の製造から撤退し、カバーテープやテープ素材などの材料生産に転換し、シンガポールの子会社を6月末までに閉鎖する。
半導体マスク検査装置のレーザーテックは、回路パターンを描いた後のマスクの検査装置の販売を拡大する、と6月24日の日経産業新聞が報じた。新製品開発に加え、米国や台湾など現地法人の販売人員を増強し、現在の世界シェア35%を2016年6月期には50%強に引き上げる計画だとしている。レーザーテックは回路パターンを描く前のマスクブランクスの検査装置ではほぼ100%のシェアを持つという。
24日の日経産業は、ニコンが450mmウェーハ対応露光装置の出荷を2015年から始めることを伝えた。17年から本格量産に移るとする。これは21日に都内で開かれたアナリスト向けの技術説明会で発表されたもの。露光装置のトップメーカーであるオランダのASMLは、EUVだけではなく450mm露光装置でも半導体メーカーとタイアップして開発しているため、大きく出遅れたEUVでは勝てなくても、せめて450mm対応機で勝ちたいという意思表明であろう。
スマホやタブレット用の半導体として、近接センサそのものや、タッチセンサコントローラ半導体などのニュースも相次いでいる。近接センサは例えばiPhoneなどで、受話器を遠ざけるとスクリーンが明るくなるが、通話中の消費電力を減らすために用いられている。19日の日経によると、シャープは今後3年以内にIR(赤外線)近接センサの生産能力を現在の2.5倍に当たる年4億個強とし、3割の世界シェアを狙うという。2013年の3月期には1億6000万個生産し、今期は中国への生産委託により2億3000万個に引き上げる。近接センサの世界需要は16年3月期には世界で14億個になる見通しだとしている。
日本テキサス・インスツルメンツは、ピエゾ素子利用のタッチパネルコントローラ新製品を発表し、外付け部品をコイル1個だけに済ませられるとしている。
また、ルネサスエレクトロニクスは、先週2件プレスリリースを発表した。18日に発表されたプレスリリースは、半導体パッケージ内に分布定数回路を設け、インピーダンス整合をとることで12.5Gbps以上の高速伝送に対応できる技術に関するもの。これからのPCI Express Version 4に対応し、サーバーやHPC(high performance computing)、通信インフラなどに応用できる。20日に発表したプレスリリースでは、ハイエンドマイコンRZシリーズ(参考資料2)の最初の製品を発表した。サンプル出荷するRZ/A1HとRZ/A1Lは最大10MBの量のRAMを内蔵し、カメラ入力やグラフィックス出力、オーディオ機能などのインターフェースも内蔵している。加えて、ARMのCortex-M用のリアルタイムOSであるCMSIS(Cortex Microcontroller Software Interface Standard)「RTX」を、ARMと共同でCortex-Aに実装した。この結果、Cortex-Mマイコンで開発したアプリケーションソフト資産のCortex-Aへの移行が容易になり、リアルタイム性能が要求される車載などの分野でさまざまな性能にシームレスで対応できるようになる。
参考資料
1. 弱いLow-K材料や細い金ワイヤーを守る低応力の新しいモールド技術(2008/07/14)
2. ルネサスのMCU、MPU製品ポートフォリオ拡充から見えてくる戦略の転換(2012/10/24)