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メガチップスが18億円を戦略的投資、製品ポートフォリオ拡大に動く

先週は、旧暦のお盆を迎え、夏休みに入った企業が多く、ニュースが少なかった。記者泣かせの週である。そのような中、国内半導体ファブレスのメガチップス、IDMのエルピーダメモリ、製造装置のアルバック、半導体チップを基板の中に組み込む部品内蔵基板モジュールメーカーの村田製作所やTDKなど、に関するニュースを紹介する。

画像処理用半導体を手掛けるメガチップスはLSI開発に3年間で18億円を投資する、という記事が8月20日の日刊工業新聞に掲載された。これによると、川崎マイクロエレクトロニクスとの経営統合を見据えて基幹システム投資を含め、半導体製品のポートフォリオを広げるために投資する。もともとメガチップスは任天堂のゲーム機向けの画像処理半導体が主力だったが、ゲーム専用機はもはや市場拡大を見込めない。今後、エコ・エネルギーや産業機器、OA機器などの分野に広げていく。川崎マイクロエレクトロニクスの12年3月期における売上額は209億円、営業利益は17億2000万円だった。

メガチップスは、2011年における世界のファブレス半導体ランキングの23位に位置し(参考資料1)、ファブレス半導体トップランク25社中、唯一の日本のファブレスメーカーである。これまでのゲーム専用機に対して、スマートフォンのグラフィック機能が強化されてきたため、ゲーム専用機の魅力が薄れてきている。専用機の市場が縮まることは自然の流れだ。だから戦略投資を行う。川崎マイクロは海外比率が7割と高く、メガチップスが持っていない製品分野に進出できるため、買収メリットは大きい。メガチップスの13年3月期における業績見通しは、川崎マイクロの業績を含め、売上額640億円(前期比81%増)、営業利益40億円を見込んでいる。なお、12年3月期での両社の単純合計だと売上額は572億円だから、相乗効果を狙ったものといえる。

エルピーダは計画通り、8月21日にマイクロン・テクノロジーの傘下で経営再建を図る更生計画案を東京地裁に提出すると、15日の日本経済新聞が報じた。14日にエルピーダの社債権者グループは、東京地裁に独自の更生計画案を提出したと、15日の日刊工業は伝えた。エルピーダに300億円の借入枠を付与し、マイクロン以外の支援企業を新たに探すという。エルピーダの負債総額は4200億円であり、マイクロンによる買収額2000億円は負債の返済の一部に充てられるが、その社債権者グループは、エルピーダの企業価値はもっと高いとみている。

この社債権者グループが今頃提案するのはタイミングとして遅すぎるだろう。エルピーダの再建はもはや待ったなしだからである。エルピーダはできるだけ早く再建計画案の許諾・承認を得て、再建を始めたいところだろう。なお、業界筋には、SKハイニックスが支援グループとして当初名のりを上げたのは、デューデリジェンスで広島工場の中を見ることが目的だ、とのうがった見方もある。ハイニックスは社債権者の中の1社である。

真空装置のアルバックは、薄膜パネル製造装置の低迷を受けて、事業構造の転換を図り、半導体製造装置へ復帰する。メガバンク3行が出資するジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)に優先株を発行し150億円を調達すると、14日の日経産業新聞が報じた。このうち、95億5000万円を研究開発費に充て、53億円を870人超のリストラ費用(希望退職者向け費用)に振り分ける。LED製造装置や大口径ウェーハ向け装置の開発を進めるとしている。

16日の日経産業は、村田とTDK、太陽誘電が携帯電話に向け部品内蔵基板モジュールの量産化にメドを付けたことを報じている。通信モジュールのフロントエンド回路に部品内蔵基板を採用し、回路面積を従来の半分以下にするという。半導体チップも基板の内部に搭載する。携帯やスマホは高機能化が進むため電池容量を大きくしたい。電池の収容面積を大きくするため、回路基板を小さくしようという訳だ。TDKはパワーマネジメント回路に部品内蔵基板を採用する。この基板は18系統の電源を供給したりバッテリの充電を制御したりする。太陽誘電は放熱性の高い銅板をコアに用いる部品内蔵基板モジュールを量産化した。

これまで、部品内蔵基板モジュールに埋め込む部品にはコンデンサや抵抗などのパッシブ部品が多かったが、最近はシリコン半導体部品も増えている。熱膨張係数の違いから当初は信頼性試験で基板が反ったり、内蔵部品がはがれたりする故障モードがあったが、大手プリント基板メーカーによると、最近ではそのような故障モードは減少したようだ。

参考資料
1. ファブレス半導体のトップ25社ランキング、クアルコムは2位以下を引き離す (2012/04/12)

(2012/08/20)
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