Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 市場分析

2025年の世界半導体市場は初の7000億ドル台に上昇するとWSTSが予想

世界の半導体市場は2025年に前年比11.2%増の7008.7億ドルに成長するという見通しをWSTS(世界半導体市場統計)が発表した(表1)。来年はさらに8.5%成長の7607億ドルになると予想する。2024年の半導体市場は19.7%も成長した。唯一の懸念材料はトランプ相互関税であり、この影響がないものとして予測しているようだ。

WSTS 2025年春季半導体市場予測の結果 / WSTS

表1 WSTSが発表した半導体製品の実績と見通し 出典:WSTS


1年前の2024年6月におけるWSTSの予想では、2024年に16%成長、2025年を12.5%成長と予測していた。実際には、この予想以上の成長率だった。AIデータセンター市場だけが大きく成長する一方で、従来のけん引役だったスマートフォンとパソコンの伸びが今一つで、昨年秋からはAIパソコンがけん引役となるはずだったが、残念ながらパッとしなかった。AIで何ができるのかを示せなかったためだ。

今年の見込みを11.2%増としたのは、AIデータセンターは伸び続けているが、スマホとパソコンはいまだに成長の兆しが見えないためだ。とはいえ、多くの市場調査会社は、今年の後半からは立ち上がるだろうという見込み(たぶん期待)を打ち出している。実際に半導体の市場在庫がそろそろ捌けてきた、という声が聞こえていることは確かだ。


2025 世界製品別市場予測 / WSTS

図1 WSTSによるIC製品別市場 出典:WSTS


2025年におけるWSTSの製品別の予想で、最も高い伸びを示すのがロジックだ(図1)。これにはGPUをはじめとするAIチップが含まれており、データセンター需要が伸びることを示している。次がメモリの11.7%成長だ。メモリも今はDRAMを複数枚スタックしているHBM(High Bandwidth Memory)がAIチップとセットで使われており、その伸びは著しい。これまでDRAMトップのSamsungがHBMでトップを行くSK HynixのDRAM市場のトップの座を奪われたという事実もある(参考資料1)。

AIデータセンター市場はつい2年くらい前までは産業用市場の一つにすぎなかったが、今はスマホやパソコンなどに近い規模に成長しており、無視できない市場となっている。

メモリの次がセンサ&アクチュエータ、アナログICで、それぞれ4.5%増、2.6%増としている。センサとアナログは着実に成長し続けるIoT市場向けがメインだろうが、実はデータセンターにおけるパワーマネジメント(電源IC)が従来のものとの見直しが行われており、従来の48Vから600V〜700Vの高電圧の直流送電を利用してキャンパスと言われるほど広いデータセンター向けの電源システムの見直しが始まっている。少しでも効率を高めたいためだ。

それ以外の製品はマイナス成長となっており、消費者向けと産業向けの本格的な回復がまだ遅れているといえよう。EV(電気自動車)市場もまだ回復が遅れているが、EVはダメだということではない。中国のEVメーカーが作りすぎたために、価格を下げ外国へ輸出していることで世界中のEVメーカーが苦しんでいる。しかしよく見ると、中国に工場を作り中国ビジネスに注力してきた欧州の企業の業績が悪い。北欧系や中国にあまり深入りしていないOEMはそれほど業績は悪くなく、EV開発に力を入れている。

WSTSの予想にはトランプ相互関税の影響を含んでいないが、これが発動され実際の関税がかかると経済全体に影響が出てくる。成長率はおそらく7〜8%に落ちるという声がある一方、Future HorizonのMalcoln Penn CEOはこれまでは2025年は15%±4%成長を予想していたが、トランプ関税が発令されると、-8%±3%とマイナス成長になると予想している。

参考資料
1. 「Samsung、ついにDRAMトップの座をSK hynixに明け渡す」、セミコンポータル、(2025/0605)
2. 「世界の半導体市場は2025年に初の100兆円の大台に、WSTS予測」、セミコンポータル、(2025/0605)

(2025/06/06)
ご意見・ご感想