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TSMCの決算、WSTSの最新数字から見えた、半導体の回復から成長への旅路

世界の半導体市場がようやく回復期から成長期に入りだした。TSMCが発表した2024年の第3四半期(3Q)における売上額は前年同期比36%増、前期比でも12.9%増の235億ドルと過去最高額を記録した。先日WSTSが発表した8月の単月売上額でも2021年〜2022年にかけての半導体不足時の売上額を超える単月の過去最高額561.6億ドルを記録した。

3Q24 Revenue by Technology / TSMC

図1 TSMCのプロセス別売上額 出典:TSMC


TSMCは3カ月前の決算発表時には、24年3Q売上額を224億〜232億ドルと予想していたが、実際にはそれを上回る結果となった。営業利益率は47.5%とこれまた好調で、利益を度外視することは全くあり得ない。好調な理由は3nm、5nmプロセスノードの製造品が全体の売り上げの52%を占め、さらに7nmまで含めると69%にも達する(図1)。ラピダスの小池淳義社長が「2nmプロセスノードを開発する理由は儲かるから」、と表現したのはここからきている。微細なプロセスほどウェーハ価格は高くなる

用途別では、データセンターやスーパーコンピュータを意味するHPC(高性能コンピューティング)用が売り上げの51%を占め、その次がスマートフォン向けの34%になる。特にスマホはAppleのiPhone 16が発売されたことから、そのための生産売り上げが寄与している(参考資料1)。

他のファウンドリと比べ、TSMCは最先端プロセスノードで売り上げが大きいため、実需を表していないとも言われる。実際UMCやSMICは14/16nm以上が多く、まだ回復途上の結果になっている。

ただし、ファウンドリだけで半導体市場を議論することは正確ではない。そこで、半導体全体を表すWSTSのデータを見てみると(図2)、8月単独の数字561.6億ドルは過去最高の単月の売上額である。これまでの単月最高額は、半導体不足のピークであった2022年3月の545.5億ドルであった。実は今年6月には545.3億ドルを記録しており、ピークをやや下回っていたが回復期はもう見えていた。


3Q24 Revenue by Technology / TSMC

図2 WSTSの単月の推移 出典:WSTSの数字を元にセミコンポータルがグラフ化


また、季節要因を考慮して過去の8月と比較しても、ここ2〜3年の盛り上がりから2021年の8月は495.2億ドル、22年471.6億ドル、23年438.7億ドルという結果であった。もちろん21年以前ではメモリバブルだった2018年8月の405.8億ドルであったから、この8月から回復したと見てよいだろう。むしろ回復していない企業こそ、新しい顧客開拓や市場開拓にしっかりと取り組むべきであろう。

参考資料
1. 「iPhone 16やApple Watchの新需要で大きくプラスした8月の台湾企業」、セミコンポータル、(2024/09/17)

(2024/10/18)
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