23年2Qの世界ファウンドリトップ10社ランキング、中国勢急伸
2023年第2四半期における世界半導体ファウンドリの売上額は、前四半期比(QoQ)1.1%減の262億4900万ドルとなった。上位10社の内、最も低い伸びを示した企業はTSMCで6.4%減であった。大きな伸びを示した中国Nexchipは65.4%増の2.69億ドルであった。トップ10社の内マイナスはTSMCと中国のPSMCだけだった。
図1 2023年ファウンドリトップ10社ランキング 出典:TrendForce
TrendForceは、この結果をテレビ用半導体の在庫の解消と、携帯電話の修理市場の立ち上がりによるタッチ機能付きのディスプレイドライバIC(TDDI)の需要に火が付いたためと分析している。半導体市場全体に大きな影響を及ぼすものではないとしている。現実に半導体産業をけん引するスマートフォンやPC、ノートパソコンなどの民生向け製品は沈んだままなので、高価なプロセスを使うTSMCとしては回復が遅れている。一方、自動車や産業向けなどの製品は在庫調整が進んでいる。
成長率が最も高かったNexchipは、ディスプレイドライバIC向けの緊急の需要の声に応じたことで最も大きな成長率を得た。23年後半にはCIS(CMOSイメージセンサ)顧客からの新規注文を得たことで、第3四半期も期待が大きいようだ。
1位のTSMCは、第2四半期の売上額が156.6億ドルだった。7/6nmプロセスの売上額は比較的順調だったが、5/4nmが悪かった。しかし第3四半期には最も微細なプロセスノードにはAppleのiPhone向けのA14プロセッサの量産が待ち構えており、期待は大きい。成熟プロセスの売り上げは停滞しているが、A14プロセッサによる3nmプロセスの導入で売り上げに計上されることも第3四半期への高い期待を示している。
2位のSamsungは17.3%増の32.3億ドルを計上したが、第3四半期はアンドロイドスマートフォンやPC、ラップトップなどの需要が上向かないため8インチラインの稼働率は下がり続けるだろうとTrendForceは見ている。ただし、Samsungの半導体部門は純粋にファンドリだけの売り上げを公開しておらず、この売上額には、CISやディスプレイドライバIC、自社向けのAPUなども含まれている。
3位のGlobalFoundriesは、ネットワーク分野では契約を勝ち取ったが、スマホや自動車からの売り上げが停滞しており、前四半期比で0.2%増の18.5億ドルにとどまった。しかし第3四半期には期待している。米国の航空防衛産業や医療ヘルスケアなどから契約を勝ち取り、自動車関係の分野からも長期契約を勝ち取ったからだ。
4位のUMCは2.8%増の18.3億ドルを売り上げたが、テレビやWi-Fi用のSoCの直近の需要によるもので、そう長続きはしない。民生用の半導体に強いUMCは第3四半期の見通しがそれほど明るくない。売上額、稼働率とも下がるだろうとTrendForceは予想している。
5位の中国SMICは6.7%増の15.6億ドルを売り上げた。8インチウェーハの売り上げは低下したが、12インチウェーハプロセスの売り上げは9%増であった。SMICは中国製造の象徴とされており、米中問題により中国シフトの需要で稼ぐように仕向けている。民生用のディスプレイドライバICやNORフラッシュ、MCUなど国内向けに好調さが続くようだ。
第3四半期向けの大きな流れは、やはりHPC(高性能コンピューティング)とAIであろう。第3四半期は前四半期比で第2四半期よりもさらに成長すると見られており、着々と回復するようだ。
参考資料
1. 「ファウンドリのトップ10社ランキングから見るTSMCの独走、シェア60%に」、セミコンポータル (2023/06/21)