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半導体市場はいつ横バイになるか

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世界半導体市場が軟化している。いくつかの幅はあるものの、このままの下降曲線を単純に伸ばすと対前年比で昨年並みになるのは2019年の前半くらいになる可能性がある(図1)。ただし、これは半導体販売額の前年差と前年比を外挿しただけの話。実際の販売額は、別の要因があり、そのようにはなりそうもない。

図1 世界半導体販売額の前年同月との差と比 出典:WSTSのデータをセミコンポータルで加工

図1 世界半導体販売額の前年同月との差と比 出典:WSTSのデータをセミコンポータルで加工


2017年の半導体市場は、DRAMの生産量がほとんど増えずに単価が2倍以上にも増加したために起きたメモリバブルだった。2018年もDRAMの単価はほとんど下がらずに推移してきた。このため、スマートフォンメーカーもDRAM価格の値上がりをそのまま端末に反映させた。例えばAppleのiPhoneは生産量が0.2%増とほぼ横バイだったのにもかかわらず、売り上げは17%も上昇し、Appleの時価総額は1兆ドルを超えた。

2018年は前半まではメモリバブルが続いてきていたが、後半から下がり始めた。IC Insightsが11月1日に発表した2018年第4四半期の半導体市場の伸びは6%増にとどまる(図2)。四半期ごとの対前年同期比でみると、前半まで20%増以上だったが、第3四半期は14%増に低下し、第4四半期はもっと下がるという見通しである。


図2 四半期(Q)ごとの前年成長率 出典:WSTS、IC Insights

図2 四半期(Q)ごとの前年成長率 出典:WSTS、IC Insights


一方、10月末に東京エレクトロンが発表した製造装置の投資状況では、今年の前半に比べ、後半(7〜9月期)にはロジックファウンドリやMPUなどのロジック製品への製造装置への投資は堅調に増えてきている。つまりメモリがバブルから正常期に移行し始めている一方でロジックが広範囲は活発になりそうだ。

となると来年の世界半導体全体は、メモリバブルがはじけてもIoTやAI、クルマなどの成長が期待されるため、数%成長として大きく落ち込むことはない可能性がある。IoTのエッジ側では、センサ、アナログ、マイコン、送信機、パワーマネジメント(電源)ICなどの半導体が求められる。またAIでは機械学習もディープラーニングも(MAC演算+メモリ)のセットを並列に大量に並べ、さらにバッファメモリが必要となるため、メモリ需要が新たに生まれつつある。もちろんクルマ向けの半導体は、機能安全のASILを確保したうえでの自動運転レベル1〜5に向けたそれぞれの段階ごとに半導体が必要とされる。自動運転、コネクテッドカー、電動化といった要求が続く以上、半導体需要がピタッと止まることはありえない。

(2018/11/02)

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