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Infineon、SD-V時代に備えMCUの仮想プロトタイプをRISC-Vにも適用

Infineon Technologiesがクルマ向けのマイコン(マイクロコントローラ)にRISC-Vを導入すると4月に言明してから(参考資料1)半年、日本でもRISC-Vに興味を示す企業が増えたようだ。これまで組み込み関係の展示会でのRISC-Vブースは閑散としていたが、このほど開催したInfineon RISC-V Seminarでは350名が登録、300名以上が参加した。「これほど多くの人たちが関心を寄せてくれた」とインフィニオンジャパンの神戸肇社長は感激した。

インフィニオンテクノロジーズジャパン神戸肇代表取締役社長

図1 インフィニオンテクノロジーズジャパン 代表取締役社長の神戸肇氏 出典:筆者撮影


RISC-Vは米カリフォルニア大学バークレイ校で学生の教育用に生まれたもので、RISC(Reduced Instruction Set Computer)という少ない命令セットにするCPU。Intelのプロセッサが今や1500程度の命令セットを持ち、本来RISCアーキテクチャのはずのArmのCPUでさえ500命令にも増えてきた。後位互換性を保つためだ。もはやRISCといえるのかという疑問の声もある。これに対してRISC-Vは基本命令が47個しか持たない。それ以上必要なら好きなだけ追加できる。つまりカスタム的なCPUを作るための基本オープンなCPUなのだ。

米国と中国が極めて速いスピードで採用が進んでいる。欧州でもRISC-V CPUをベースのSoCやマイコンを作るための周辺回路や基本ソフトウエアの共通化が始まっている。バークレイでの誕生から15年経ち、すでに世界70カ国以上、4500を超える組織がRISC Internationalに参加している。RISC-Vベースのチップは年率50%で成長しており、2030年には市場の25%を占めるという予測もある。

どんなCPUであれ、ハードをできるだけ共通にしてソフトウエアで競争することが基本だ。そのためにInfineonが持つハイエンドマイコンAurixやミッドレンジのTraveo、そしてセンサ向けのPSOCという3種のマイコンに加えRISC-Vでもスケーラブルなソフトウエアのポートフォリオを想定している。Drive Coreと名付けられたソフトウエアバンドルをハードウエアチップの開発前にMCUのシミュレーション(仮想プロトタイプ:VP)をRISC-Vコアにも適用する仕組みを設けている。これにより、チップが出来上がると同時に、そこに埋め込むソフトウエアも用意されている状態を作ることができる。

Drive

図2 Infineonが提唱する仮想プロトタイピングでマイコン用のソフトウエアを先に作る 出典:Infineon Technologies


欧州でもQuintauris(クィンタウリス)というコンソーシアムが2023年12月に設立された。このコンソーシアムに出資、参加したのはInfineon、STMicroelectronics、NXP Semiconductorsの3大欧州半導体メーカーに加え、クルマのティア1サプライヤーのRobert Bosch、通信やGPSのNordic Semiconductor、さらに米国のQualcomm Technologiesという6社。

Infineonが東京で開催したInfineon RISC-V SeminarでInfineonがRISC-Vを進める背景を紹介し、QuintaurisのManaging DirectorのPedro Lopez Estepa氏が国内で初めて講演した。このコンソーシアムがまず着手したことはRISC-Vプロセッサクラスのリファレンスアーキテクチャをまず作ること。それをできるだけ揃えたうえで競争力を高め長期的なサポートを確保する。そしてシステムチックなエコシステムとソフトウエアアプリケーションの検証に向けたしっかりしたフレームワークを作ることだ。

こういったフレームワークがなければ、各社各人バラバラのマイクロアーキテクチャで専用チップを作るなら無駄が多いだけではなく、例えばソフトウエアの保証が欠けたり、エコシステム同士の互換性がなくなったり、共通部分のないバラバラなRISC-Vになってしまう。そうなると、先細りになってしまう。だからQuintaurisは共通のフレームワークを作り、専用の独自部分をカスタマイズできるように残しておく。

QuintaurisやRISC-V Internationalなどに参加しておけば少なくとも競争はできる上に、独自技術の開発期間が短くて済むように共通部分を標準化していく。このようなエコシステムに日本からもぜひ参加してほしい、とEstepa氏は呼び掛けている。

参考資料
1. 「Infineon、今後のSD-V時代に備えてRISC-Vマイコンを推進」、セミコンポータル、(2025/04/24)

(2025/10/02)
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