Semiconductor Portal

» セミコンポータルによる分析 » 産業分析

半導体専門の組織をオムロンが設置、開発スピードを半導体に合わせる

工業用のセンシングや制御機器に強いオムロンが半導体分野に力を入れる。会社として本格的に参入するため、半導体に特化した組織としてセミコンダクタ&インキュベーションセンタを2025年4月に設立した。同社は2021年、所有していた半導体工場をミネベアミツミに売却している。今なぜ半導体分野に再び進出するのだろうか。

オムロンはかつてIBMの野洲工場を原点とする半導体工場を持っていた。MEMSセンサやCMOS IC、アナログICなど少量の半導体を制御機器や検査機器向けに製造していたが、2021年6月にミネベアミツミに譲渡した。現在は半導体工場を持っていない。全社的に見ると半導体の比率はまだ小さく、半導体関連ビジネスは10%程度だという。

しかし、半導体ビジネスは成長市場である。AIやIoT、5Gなど新しい技術と共に新しいチップが求められる。それと共に新しいチップ製造装置も求められる。半導体に特化した組織を回していけば、新しい半導体工場や製造装置への要求や情報をいち早くキャッチできる。

これまでオムロンは、半導体分野では例えばX線を利用した非破壊検査装置を商用化している。パッケージ内部のクラックや電極の接合状態、アンダーフィルにボイドがないかなどを検査する装置だ。半導体は、進化や変化が極めて速い。しかもロードマップもある。オムロンが得意とする、工場で使う検査機器や制御機器などの商品部門とは、タイミングにおいてギャップがある。


オムロン 金田哲郎氏

図1 オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー セミコンダクタ&インキュベーションセンタ センタ長の金田哲郎氏


工業用途のデバイスや制御機器、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などは、半導体産業の変化から見ると、その改良のスピードは遅い。オムロンは、半導体工場で使う検査装置や制御装置はもちろん、半導体製造装置内のロボット搬送やセンシングを利用した自律システムなども手掛けているが、製造装置メーカーからの要求を待っていては手遅れになる。半導体工場や製造装置、検査装置などに求められる技術を半導体ビジネスのスピードに合わせる必要がある。「これからは先回りして商品開発部門に訴求しておく」と同社セミコンダクタ&インキュベーションセンタの金田哲郎センタ長(図1)は語る。

とはいっても、半導体工場を譲渡してしまえば人材もいなくなってしまう。しかし、オムロンには、IBMの野洲工場時代に生産技術をよく知るエンジニアだった小澤克敏氏がおり、このほどオムロンのセミコンダクタ&インキュベーションセンタのフェローとして任命された。新しい製造装置や生産技術を常にウォッチし、アドバイスを与える立場だ。IBMの野洲工場は日本で初めて200mmウェーハラインを導入した工場である。小澤氏は、半導体の生産技術と生産現場のDXに強みを持つ専門家であり、生産現場でデータ活用を推進してきた。


For manufacturing factories / OMRON

図2 半導体工場向けのオムロンの技術 出典:オムロン


オムロンが力を入れる半導体分野は二つある。一つは生産工場向けであり(図2)、もう一つは製造装置向け(図3)だ。生産工場向けでは、OHT(天井走行式無人搬送車)こそ手掛けていないが、FOUPを自動的に搬送するロボットはある。工場内の電力などのファシリティモニターやガスや液体の流量データの収集と可視化ソフトウエア、後工程でのパーティクルカウンターなどもある。特徴は、大きな計測器ではなく、計測部分を小型にしてインラインでの24時間モニタリング可能なシステムだという。


For manufacturing equipment / OMRON

図3 半導体製造装置向けのオムロンの技術 出典:オムロン


製造装置向けには、コンポーネントを提供する場合が多いという。例えば、ナノメータレベルのステージの移動を制御するコントローラや、ウェーハステージに設置する温度コントローラなどがあり、FOUPやロードポンプなどに張り付けるRFIDタグも多い。

オムロンのコアコンピテンスであるセンシングとコントロールに向けた商品は全部で27万点もあるという。これらを今後顧客の進化に合わせて強化していく。それによって「顧客に将来を見据えて期待し続けていただく」と金田氏は語る。また将来を見据えた装置メーカーとの共創も出てくる。例えば、ウェーハの張り合わせ工程やnmオーダーの高精度なアラインメントが必要な工程では、従来の汎用PLCでは要求に応えられない。専用のPLCを開発し、高精度なメカトロニクスも半導体の進化と共に進化していくようになるという。「このような技術はもはや1社では対応できない。半導体のスピードと共に装置メーカーと擦り合わせていく必要があるだろう」と金田氏は述べる。

「そのような技術ができたら次はデファクトスタンダードになるように協調していくことも重要になる」と小澤氏は言う。

インキュベーション事業は、半導体のみならず広く製造業で必要な革新技術をこれから検討していく部門で、例えばエネルギーマネジメントに新しい基礎技術を検討し、最先端についていく。半導体向けの今後の技術と、半導体も含めた広い新技術開発を含む役割を先導するセミコンダクタ&インキュベーションセンタへの期待は大きい。

(2025/09/04)
ご意見・ご感想