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GaNパワー半導体の逆バイアス試験方法がJEDEC標準となった

化合物パワー半導体のGaNデバイスの逆バイアス信頼性評価法(図1)がJEDECで標準化された(参考資料1)。JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)はメモリのピン配置などの標準化をみんなで決めるための世界的な標準化団体。ここで決まった仕様は半導体製品の標準となり、製品の普及だけではなくコストを下げる役割もある。

JEDEC publication

図1 2024年1月30日に決まったGaNパワーデバイスの信頼性試験


JEDEC標準は1社が独自に決めた標準(デファクトスタンダード)ではなく、みんなで決める標準規格である。標準規格というと、ややもすると差別化できないといった声があるが、あくまでも入出力だけを標準規格として決めることが多い。製品内部のテクノロジーは、もちろん秘密であり、差別化要因の一つである。それだけではない。標準的な部品を組み合わせて、新しいシステムを作る場合でも知的財産となる差別化要素になる。ブロック玩具の「レゴ」がまさにこれに当たる。凸部分のサイズと高さを揃えて標準化しておけば、その組み合わせは無限にあり、独自性のあるモノを作ることができる。

半導体では主に入出力部分の標準化が多く、その内部は知的財産として守られている。入出力部分を標準化しておけば、つなげられるデバイスの組み合わせは無限に多くなり、市場は広がっていく。また設計開発する側は、入出力に神経を使う必要がなくなりコスト低減になる。

今回のGaN逆バイアス試験方法ではGaN結晶や付随する絶縁膜や金属膜などの長期的な劣化を誰しもが可視化できるというメリットがある。このため劣化しない製品作りに精を出すことができるようになる。標準化していなければ、試験して合格したとしても顧客からデバイスに対する信頼が得られない。みんなで話し合って決めた規格だからこそ、メーカーもユーザーも安心してデバイスを評価し、共通認識を持つことができる。

今回JEDECが発表した標準規格は、JEP198と呼ばれる、GaN電力変換デバイスの逆バイアス信頼性評価手順のガイドラインを記した文書として発行された。JEP198は、TDB(Time Dependent Breakdown:バイアスを掛けた状態で経時変化による破壊の有無を確認する試験)による信頼性劣化を評価するためのガイドラインである。プレーナ型エンハンスメントモードやデプリーションモードのGaNトランジスタや、GaNIC、カスコード接続されたGaNパワートランジスタなどを評価する。

この文書は、GaNパワートランジスタのオフ状態でTDB信頼性を評価するための印加条件やテストパラメータなどについて書かれている。印加ストレス条件とテストパラメータは、高温逆バイアス試験と用途別専用試験の両方に信頼性を評価するように記述されており、加速試験条件の実用的な試験時間で評価できる。

この標準規格は、JEDECのJC-70.1GaNパワーサブ委員会で作成したもので、標準化で合意するのに数年かかったとしている。この標準化文書はウェブサイト(参考資料2)から誰でもダウンロードできる。

参考資料
1. "JEDEC Wide Bandgap Power Semiconductor Committee Publishes a Milestone Document for Reverse Bias Reliability Evaluation Procedures for Gallium Nitride Power Conversion Devices", JEDEC (2024/01/30)
2. "Guideline for Reverse Bias Reliability Evaluation Procedures for Gallium Nitride Power Conversion Devices", JEDEC (November 2023)

(2024/02/08)
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