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Samsungのファウンドリ戦略第1弾、米国に第2工場新設

Samsung Electronicsが米国テキサス州オースチン郊外のテイラー市に170億ドルをかけて、ファウンドリビジネス用の新工場を建設することを発表したが、同社はオースチンに最初のファウンドリ工場をすでに設置している。同社がこの発表前に明らかにした今後のファウンドリ戦略は日本の半導体工場にとって参考になりそうだ。

図1 Samsungがこれまで提供してきた各社のプロセッサ 出典:Samsung Electronics

図1 Samsungがこれまで提供してきた各社のプロセッサ 出典:Samsung Electronics


今回のテイラー市の新工場は、オースチン工場から25km北東に行ったところにあり、それほど離れていないため、半導体製造に必要なインフラやリソースを共有できるとしている。新工場は、500万平方メートルの敷地に最新の設備を導入する工場となる。2022年の上半期に着工し、2024年の稼働できるように設備を導入する予定である。

Samsungがファウンドリに力を入れているが、すでにこれまでにも実績があり、5nmプロセスノードのQualcomm社のSnapdragon 888や、7nmノードのIBMのPower 10プロセッサ、14nmノードの百度(Baidu)のKunlun AIアクセラレータなどがある(図1)。IBMはこの先の2nmプロセスノードでのSoCもSamsungと協力して試作している。

Samsungのファウンドリ戦略の基本となるのがSAFE(Samsung Advanced Foundry Ecosystem)という考え方だ(図2)。要は、エコシステムをしっかり構築しなければファウンドリビジネスは成り立たないことだ。同社ファウンドリ設計開発部門トップでVPのRyan Lee氏は、「フォウンドリ企業だけでは何もできない。SAFEによってエコシステムを構築することは不可欠」と語っている。従来の日本のIDMがやっていた、ファウンドリと称する事業とは全く違う。生産ラインだけがあってもビジネスにはならないのである。


図2 SAFEプログラムにはIPやOSAT、設計パートナー(DSP)、EDAベンダー、クラウド利用設計などのエコシステムが欠かせない 出典:Samsung Electronics

図2 SAFEプログラムにはIPやOSAT、設計パートナー(DSP)、EDAベンダー、クラウド利用設計などのエコシステムが欠かせない 出典:Samsung Electronics


ファウンドリビジネスでは、IPやEDAベンダーと協力し、ICが欲しい顧客に設計作業を支援する。Samsungは3600種類以上のIPと、80もの認定EDAツールを持っている。さまざまなIPとセルライブラリ、メモリコンパイラなどを利用でき、100GbpsのSerDesインターフェイスや2.5D/3Dなどのチップを集積できる。

協力するOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)には10社とパートナーを組んでおり、2.5D/3D集積に向く、さまざまなパッケージをサポートしている。最近の例では(参考資料1)、SoCの周りに最大6個のHBMメモリを配置するなどの成果をAmkorと共に得ている。最先端のSoCでも4個のHBMである。

DSP(Design Solution Partner)エコシステムではグローバルなLSI設計企業と組み、設計のアイデアをチップに実装する。オンサイトでの設計に加え、クラウドを利用した設計(Cloud Design Platform)にも答えている。

Lee氏はこのSAFEプログラムのサポートがあってこそ、「性能プラットフォーム2.0」を実現できるとして、そのための3本の柱は、イノベーションと、インテリジェンス、インテグレーションを上げた。イノベーションは、すでに試作経験のある3nmノードのGAA(Gate All Around)構造のMOSトランジスタや設計技術を指し、インテリジェンスはAIやさらに改良した分析技術、インテグレーションはコスト効率の高い2.5Dや3D集積の意味である。

参考資料
1. 「SamsungファウンドリとAmkorが2.5Dパッケージ技術を共同開発」、セミコンポータル (2021/11/12)

(2021/11/26)
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