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躍進する日本の発明、フラッシュメモリー

「フラッシュメモリーはメモリー密度が高くしかも軽くその上に低価格、低消費電力かつ高信頼である」(舛岡富士雄著「躍進するフラッシュメモリ」より)。このようなメモリーとしての優れた特徴から市場は大きくなったが、長期的にはさらに大きく普及すると、発明者の舛岡富士雄博士は述べている。

博士によれば、半導体は第一波としてトランジスタがあり第二波は DRAM で第三波がフラッシュメモリーなのである。

「実は携帯電話を牽引したのはフラッシュメモリーである」と、博士が述べている通り、フラッシュメモリーは幸運にも携帯電話という市場を見出して拡大してきた。電話番号を記憶させるデバイスとして最適なのだ。フラッシュメモリーは記憶情報が消えない不揮発特性を有しているので電源をオフにしても電話番号が保存されていて安心だ。フラッシュメモリーの大容量化に伴い千や万の番号記憶は実用的に可能である。いまだに低い世界の携帯電話普及率を考えればフラッシュメモリーの市場は将来も明るい、と博士は予言する。

一方、現在地球を覆う金融危機が半導体市場をも襲って来ている。報道ではNANDフラッシュメモリーで16ギガビット品の大口向け10月価格が2〜3ドルであり非常に厳しい局面だ。ただ、10数年前のDRAMにおける経験を生かせばこの局面で均衡縮小を図ることは正しくないと思う。技術的に勝る日本勢は、以下に示す新しいパイを市場に持込む好機だ。

フラッシュメモリーの新しい市場はPCにおけるハードディスク装置(HDD)との置き換えである。機械的に動作するHDDは大変に脆弱でクラッシュが起こり今まで大勢のユーザーを泣かせた。だがこのようなIT作業の泣き所は昔話になる日は近い。

最近になって低価格化が進み小容量のものであればHDDとの競争で価格的な競争力も劣らなくなってきたことから、実際ハードディスクの置き換えが視野に入ってきた。ノートPCは、小型化および軽量化、省電力化、衝撃に対する強さが要求される点を考えればハードディスクよりもこれらの要素で優れており、さらに機械的な動きがないので静音で、高信頼化が実現する。さらにアクセスは電子的であって高速である。

11月27日の日本経済新聞は、東芝の動きを報じた。これによると、東芝はフラッシュメモリーを使うパソコン用の新型記憶装置「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」の大量生産を始める。現在は月間4万個の生産規模を2010年度下期に60万個に引き上げる、としている。

フラッシュメモリーが世に出たのは1984年のIEDM(国際電子デバイス会議)であり動作原理と共にそのネーミングも同時に発表された。続く1985年には国際固体回路会議(ISSCC)で256Kビットのフラッシュメモリーが紹介された。その時の反応は低かった、と「躍進するフラッシュメモリ」の著者、舛岡は語っている。

高度な内容の発表で反応が少ない場合、一つは価値を理解できない集団が無視するケースがある。当時世界一流の研究者が誰も扱わないテーマを日本人が発表しても同胞は無視してしまう。日本でフラッシュメモリーの発表が注目されなかったのはこのようなケースだった。同胞が自分の頭脳で真剣に考えればそんな結論が出るはずはなかったのだが。

その世界一流の研究者の一部は、実は多いに注目した。この発明の偉大さに圧倒されたと言える。でも舛岡には届けなかった。彼等は間髪を置かずに追試をした。追試の結果発表の正しさはすぐにわかった。インテル社は直ちに戦略的開発プロジェクトを極秘で立ち上げた。

反応が少ない場合、その二のケースはインテル社だった。極秘プロジェクト故に一切のコメントは抑圧された。舛岡氏によれば、「85年のビジネスウィーク誌の取材で Pashley 博士は冷淡であったしフラッシュメモリーを低く評価した。このコメントは本心ではなかった。極秘プロジェクトが禁じたことを述べる訳にはいかなかった」という。

多数のエンジニアをつぎ込んだ開発プロジェクトは成功しオリジナルの東芝を大きく引き離した89年、満を持してインテル社がフラッシュメモリーの成果を公表した。インテル社が真に偉大だと思うのは、公表に際してフラッシュという舛岡博士の与えたネーミングと発明の業績を讃えた点にある。

実を採ったインテルのリードは他を圧倒している。最近のプレスリリースでは、34 nm プロセスを開発しその基盤の上に32Gビットのフラッシュ花を咲かせた。即ち、マイクロンテクノロジー社と作った合弁企業IMフラッシュテクノロジー社(IMFT)で量産するこのフラッシュメモリーは48リードの標準TSOP(thin small-outline package)に格納している。同社のR. Wilhelm副社長は「IMFTのNANDフラッシュ生産におけるリーダーシップは他社を圧倒しわれわれの期待を上まわった」と述べた。製品は個人用ビデオカメラや携帯音楽プレーヤーに使われる。

では、今後インテル等に負けない戦略はあるのか?上記のように東芝はフラッシュメモリーを使うパソコン用の新型記憶装置ソリッド・ステート・ドライブの大量生産を他に先駆けて始める。HDDの代替品として主にノート型に大量に供給する計画だ。大容量化やコスト低減を進め、10年度には売上高1000億円強を目指す、としている。しかしながら、ソリッド・ステート・ドライブにおいて今の所は発表がない競合のインテルや三星は必ずやこの同じマーケットに参入するに違いない。だから、東芝はこの市場でトップを譲ってはならない。この市場で果敢に前進し相当のシェアを確保すれば、今の危機は乗切ることが可能だと思う。金融危機はいつか去るのでそのタイミングで果敢に打って出るべきだろう。


エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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