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シリコンバレーがヤバイ

シリコンバレーの今の繁栄がこのまま続くのは幻想だ、と考える人々が少なからずいると考える。最初にシリコンバレーの実力を再認識するために先ずシリコンバレーに本社を置く一流企業をいくつか見てみよう。

Intelは、世界一の超LSIの設計開発製造販売会社である。
Hewlett-PackardはPCとプリンターのトップメーカー。
Cisco Systemsはルーターに於ける世界一の設計開発販売会社である。
Appleはユニークなマックを開発したメーカーであり、携帯音楽プレーヤーでソニーを抜いた。
Oracleは企業向けデータベースソフトのトップ企業である。
Sun Microsystemsはワークステーションとサーバーを世界で最初に開発して製造をしている。
SolectronはEMS(electronics manufacturing services)の先駆企業で、最近まで世界最大であった。
Googleは独自の検索ソフトを開発し、それを応用した技術を使い、広告の独特なビジネスモデルを生み出し驀進し総企業価値で日立製作所を抜いた。
Applied Materialsは半導体製造機械で世界トップ、売上額で過去20年間東京エレクトロンに負けたことはない。
Yahooはインターネットポータルでは日米で最大企業だ。
Symantecは対ウイルスソフトに於いてトップグループに入っている。
SanDiskはUSBメモリーの専業として東芝と組みリーダーの地位にある。
Adobe SystemsはPDFを発明したPDFソフトの圧倒的リーダーだ。
KLA-Tencorは筆者も世話になったが、超LSI製造に必須なデジタル画像検査装置のトップメーカーだ。
Cadence Designは超LSI設計ソフトの首位にいる。

まだまだあるが、想いつくままに15社が直ちに挙がった。この他に、シリコンバレーの企業はまだたくさんある。サンノゼマーキュリーニューズ紙では最も活発な150社をリストアップしている。シリコンバレーにはビジョナリーと呼ばれる天才が少なくとも20人ほどいる。彼らは優れて先見性があり鋭いアングルで新たなビジネスが成功するか否かを見極める能力を保有している。それだけでない。自身も新たなビジネスモデルを設計できる。ビジョナリーには将来を見透す力がある。

KLAを創業したケネス・レビーは、典型的なビジョナリーで外部取締役としてバレー内外の10数社の面倒を見て来た。シリコンバレーはベンチャー企業を産むのに世界でも最適な地域であるとされている。統計上では、12のビジネスプランがあればその内の一社が起業に成功すると言われる。この値は率で8%を越える。レビー氏をよく知る筆者に言わせると、彼に並ぶビジョナリーとしての人材は、最近の我が国には存在しない。

しかし、シリコンバレーの今の繁栄がこのまま成長が続くのは厳しい。平安時代におおいに栄えた平家は滅んだが、その訳と事実を歴史で学んだ「盛者必衰のことわり」が心に浮かぶ。ニューヨークタイムズ紙の報道によると、世界的な景気の停滞にこれまでおよそ無縁だったシリコンバレーにも危機が押し寄せているという。住宅の価格が急落している訳ではないし、大量解雇もない。とはいえ若くて優れた人材は払底してきた。その結果、ベンチャー企業にとって高齢化と陳腐化が進むと、どんぐりの背くらべ状態から抜け出すチャンスが枯渇しつつある。

2008年に入ってから最初の3カ月間で、ベンチャーキャピタルの支援を受けて株式公開した企業はわずか5社だった。2007年第4四半期には31社が株式公開しており、5社という数はドットコムバブル崩壊後とほぼ同じレベルとなるらしい。大手企業によるベンチャー企業の買収件数も減っている模様だ。第1四半期の買収件数はわずか56社であり、第4四半期の83社から相当に減少した。

過去にもシリコンバレーの危機はなかったわけではない。だが今回の危機は、過去と違う要素がある。それはグローバル化だ。インドや中国イスラエル、それにシンガポールがハイテク戦線に果敢に挑戦するようになった。事実、EMS 大手のSolectron社は2007年の暮れにシンガポールのEMS 企業Flextronics International Ltd. に買収されてしまった。

インテルはバレーにある最後のウェーハファブD2をたたむことを決めてしまった。1990年に、当時の最先端ファブで私に見せるのを惜しんでいた、あのD2だ。グローバル競争を考えるとバレーにファブを置くのは決して得策ではない時代になったといえよう。

シリコンバレーの外側で環境変化が猛烈な勢いで進む。アジア系技術者が母国に帰るため、「アジア系の技術者の確保が難しくなってきた」、と言われる。即ち、IT分野で中国や台湾の会社が力をつけてきた結果、そうした地域の出身者の母国回帰がある。最近までは、バレーのエグゼキュティブが配る名刺は表が英語で裏側は日本語だったが、今は裏には中国語が刷ってある例が増えた。日本のウェイトは小さくなった。第二、第三のシリコンバレーを生もうと、能力と野心にあふれる人材を大量生産する中国やインドが猛追中だ。バレーのフリーウェイの渋滞はますますひどくなり住宅費も依然世界一高額だ。このままではシリコンバレーの将来はヤバイのである。


エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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